Marc Jordan / Blue Desert (1979年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Marc Jordanの1979年のアルバム『Blue Desert』の紹介です。

Marc Jordan / Blue Desert (1979年) フロント・カヴァー

Marc Jordanは、ニューヨーク生まれのカナダ人シンガー・ソングライター。セッション・ミュージシャンやソングライターとして活動しながらソロ・アルバムも数は多くないがコンスタントに制作しており、特に最初の2枚はAORの名作として高い人気と評価を得ている。

本作はそのセカンド・アルバム。当時勢いのあったJay Graydonがプロデュースを手がけ、ポップスとフュージョンの要素を巧みにブレンドした、スマートで洗練したAORに仕上げている。Graydonは同じ年に、Steve Kipnerの『Knock the Walls Down』やThe Manhattan Transferの『Extensions』、Alan Sorrentiの『L.A. & N.Y.』もプロデュース。いずれもAOR好きには人気の作品だ。ちなみに、Marc Jordanの78年のデビュー作『Mannequin』は、Steely Danのプロデューサーとして有名なGary Katzのプロデュースである。

さて本作は、全曲がMarc Jordanによる作詞・作曲。どの曲もしなやかでポップなメロディ・ラインを持っており、とても聴きやすい。憂いのある曲やウェットな質感の曲は皆無で、さっぱりした聴き心地が特徴。Marc Jordanの少々ぶっきらぼうな歌い方も不思議と曲調に合っており、爽快な味わいを生んでいる。

Jay Graydonはギターの名手であり、本作でもアイデア豊富でテクニカルなギター・ソロを随所で披露。その爽快かつ贅沢な聴き心地は、Graydonのギター・フレーズ愛好家を熱く惹きつけている。特に「I'm a Camera」でのソロは、Graydonの3大ギター・ソロの一つらしい。他の2つは、Steve Kipnerの「The Ending」とAlan Sorrentiの「Beside You」。

Jay Graydonが広く知られるようになったのは、Steely Danの『Aja / 彩(エイジャ)』に収録された「Peg」でのトリッキーなギター・ソロによってだと言われるが、私は本作の「I'm a Camera」や「Release Yourself」の伸びやかなソロも気に入っている。

メロディや詞、歌の良さを味わうほかに、演奏やアレンジ、参加ミュージシャンの顔ぶれ、アートワークなどに自分にとって光るものを見つけることは、アルバムを聴く醍醐味。本作も、そういう贅沢な楽しみ方をさせてくれる懐の広いアルバムだ。

●収録曲
  1. Generalities - 4:23
  2. I'm A Camera / 私はカメラ - 3:46
  3. Twilight / たそがれ - 3:41
  4. From Nowhere To This Town / 彼方へ - 3:33
  5. Beautiful People - 4:27
  6. Lost In The Hurrah - 5:21
  7. Release Yourself / 自由へのさすらい - 4:14
  8. Tattooed Lady / 刺青の女 - 3:44
  9. Exile - 4:30

◆プロデュース: Jay Graydon(g, k)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Ray Parker Jr./Dean Parks(g), Michael Omartian/Greg Mathieson/Steve Porcaro(k), Abraham Laboriel(b), Jeff Porcaro/Ralph Humphrey/Jim Keltner(ds), Ernie Watts(sax), Bill Champlin/Bobby Kimball/Tom Kelly/Marcy Levy(bv), etc

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