Jakob Magnusson / Jack Magnet (1981年) – アルバム・レビュー

2021年8月3日2023年8月20日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Jakob Magnussonの1981年のアルバム『Jack Magnet』の紹介です。

Jakob Magnusson（ヤコブ・マグヌッソン）はアイスランド出身のキーボード奏者（生まれはデンマークのコペンハーゲンらしい）。1975年に結成されたストゥーツメンというアイスランドのバンドでの活動歴が長いが、セッション・ミュージシャンとしても広く活動しており、Yesの初代ギタリストであるPeter Banksなどと交流があるようだ。

1976年にアイスランドのレーベルから最初のソロ・アルバムを発表しており、そこにはPhil CollinsやSoft MachineのRoy Babbingtonなどが参加。その後に渡米し、79年のアルバム『Special Treatment』で全米デビューを飾っている。こちらは全曲インストのフュージョン・アルバムで、LAの著名なミュージシャンたちが参加した。

今日紹介する『Jack Magnet』はサード・アルバム。インパクトあり過ぎのジャケットをデザインしたのは、Pink Floydのカヴァー・アートなどを手がけたことで有名なHipgnosis。ここに描かれた "磁石男" がJakob Magnussonならぬ "Jack Magnet" というわけだ。

プログレやジャズ・ロック系の先鋭的なインスト・アルバムを想像させるデザインだが、内容はAOR寄りの滑らかなサウンド。ヴォーカル曲が9曲、インスト曲が3曲という構成になっている。

アメリカから前作以上に豪華なミュージシャンを招いてレコーディングされているが、諸事情あってアメリカでは発売されず、アイスランドのレーベルから発売されている。日本では2002年に初CD化され、今年に入って約20年ぶりに紙ジャケット仕様でリイシューされた。

では、このアルバムからおすすめの3曲をピック・アップ。

まずは、PagesのSteve Georgeと共作した「Meet Me After Midnight」。クールなダンス・チューンで、Jeff Porcaroの刻む引き締まったビートが心地いい（Suchmosの「Stay Tune」に雰囲気が似てるかも…）。さっぱりと歌うJakob Magnussonのヴォーカルに対して、Bill Champlinのバック・ヴォーカルが華やかな印象を残す。

2曲目は、キラキラしたバラードの「From Now On」。共作者にはPagesの二人とJay Graydonの名前があり、とても豪華だ。エレガントなホーン・アレンジを手がけたのはJerry HeyとTom Scott。間奏では、Carlos RiosのギターやJakobのキーボードも加わって全体をふんわりとメロウにまとめている。

ポップにアレンジされたレゲエ調のナンバー「I Can't Get Enough」もグッド。歌詞に出てくる "Zawinul" はJoe Zawinulだろう。Jakob MagnussonにとってJoe Zawinulは "オールタイム・フェイヴァリット" とのこと。歌詞にもう一人出てくる "Porter" は、オルガン奏者のWilliam Porterだろうか?

今年リイシューされたパッケージには、1982年（アメリカでは86年）発表の4作目『Time Zone』がカップリングされている。4作目は再びフルインストのフュージョン・アルバム。こちらも、Michael Landau(g), Jeff Berlin(b), Vinnie Colaiuta(ds)等、アメリカのミュージシャン達との共演になっている。

Hipgnosisが後年にデザインしたカヴァー・アートには、本作の "磁石男" とよく似たデザインがある。Pink Floydの1988年のライヴ・アルバム『Delicate Sound Of Thunder』に描かれた "電球男" がそれ。インパクトは互角だが、磁石男の方がユーモラスだ。

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◆プロデュース： Jakob Magnusson(vo, k), Patrick Henderson(k)

◆参加ミュージシャン： Craig Marsden(vo, g), Carlos Rios/Grant Geissman(g), Neil Stubenhaus/Abraham Laboriel/Stanley Clarke(b), Jeff Porcaro/Vinnie Colaiuta/Alex Acuna(ds), Victor Feldman(per, vibes), Steve Forman(per), Freddie Hubbard(tp), Jerry Hey(horn), Tom Scott/Larry Williams(sax), Bill Champlin(bv), etc