John Miles / Play On (1983年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今回は、John Milesの1983年のアルバム『Play On』を紹介。

John Miles / Play On (1983年) フロント・カヴァー

John Milesは英国のロック・シンガー。Alan Parsons Projectの複数のアルバムにゲスト・ヴォーカリストとして参加したほか、1987年からはTina Turnerのツアー・メンバーを20年以上務めたことで知られている。

Led Zeppelinを解散したJimmy Pageの唯一のソロ・アルバム『Outrider』(1988年)では、John Milesが2曲でリード・ヴォーカルに起用されており、ロッカー然としたシャウト・スタイルの歌声を聴くことができる。

John Milesは自身でも10枚ほどのアルバムを残していて、今回紹介する『Play On』は6作目にあたる。80年代の時流を捉えたポップな作風で、金澤寿和氏のAORディスク・ガイド『AOR Light Mellow』(1999年)でも紹介されている。

なかなかCD化されなかった作品だが、今年(2024年)7月に3枚組のCDセット『The Albums 1983-93』の1枚として遂に世界初CD化となった。CDセットの残り2枚は、John Miles Band名義の次作『Transition』(85年)と、続く『Upfront』(93年)で、各CDには2, 3曲のボーナス・トラックが収録されている。

『Play On』のプロデュースを担当したのは、Elton JohnやChris Reaとの仕事で知られるGus Dudgeon。ちなみに、John Milesの1作目と4作目はAlan Parsonsによるプロデュース。2作目と3作目はAOR好きには馴染み深いRupert Holmesによるプロデュースだ。

では、『Play On』から3曲をピック・アップしよう。

まずは、爽やかな「Song For You」。控え目に鳴っているクリスプなハンド・クラップが心地よく、サビになると憂いを帯びるメロディが何とも素敵だ。この曲を始め、収録曲は全てJohn MilesとベーシストのBob Marshallによる共作。Bob MarshallはJohnのほとんどのアルバムでベースを弾いているが、この『Play On』ではセッション・ミュージシャンが起用されている。

2曲目は、しっとりしたバラード曲の「Home」。キーの高いところでのJohn Milesの歌声や歌い方はどこかBobby Caldwellに似ているが、甘くならないところがJohnの持ち味だ。サックス奏者はKing Crimsonのメンバーとして知られるMel Colins。このアルバムでは1曲目の「Take Me to My Heaven」でもサックスを演奏している

3曲目は、AORテイストの「Close Eyes, Count To Ten」。小気味よく刻まれるリズムはMichael McDonaldの「What A Fool Believes」調だが、John Milesのウェットなギター・ソロが聴こえてくるとブリティッシュな味わいになる。

このアルバムのファースト・シングルには「The Right To Sing」が選ばれた。Alan Parsons Projectのアルバムに収録されていそうな重厚な曲調とオーケストラ・アレンジが特徴だ。また、アルバム9曲目の「Carrie」はThe Holliesの1988年のシングル「He Ain't Heavy, He's My Brother」のB面にカヴァーされ、John Milesもバック・ヴォーカルで参加している。

CDセットの残り2枚について簡単に触れよう。1985年発表の『Transition』はJohn Miles Band名義の作品。プロデュースにはYesのメンバーであるTrevor Rabinが加わり、よりハードでメリハリの効いたサウンドになっている。もう1枚の『Upfront』は8年後の1993年に発表されたアルバム。クールでブルージーな曲が多く、John Milesの渋い歌声を味わうことができる。

John Milesは2021年の終わりに72歳で他界した。Jimmy Pageの『Outrider』の1曲「Wasting My Time」は私のお気に入りで、そのミュージック・ビデオにはRobert Plantさながらにシャウトする39歳の頃のJohn Milesが収められている。この曲はJimmy PageとJohn Milesの共作で、米ロック・チャートの4位を記録した。ドラムスを叩いているのはJason Bonham。このメンバーで、もう少しアルバムを残して欲しかったな、と思う。

●収録曲
  1. Take Me to My Heaven - 3:22
  2. Song For You - 4:13
  3. It Wasn't Love At All - 4:34
  4. Ready To Spread Your Wings - 4:47
  5. I'll Never Do It Again - 4:49
  6. Heart Of Stone - 4:27
  7. Home - 5:14
  8. Close Eyes Count To Ten - 4:23
  9. Carrie - 3:45
  10. The Right To Sing - 3:42

◆プロデュース:Gus Dudgeon

◆参加ミュージシャン:John Miles(vo, g, k), Martin Jenner/Gerry Donahue(g), Pete Wingfield/Duncan Makay(k), Paul Westwood(b), Graham Jarvis(ds), Frank Ricotti(per), Mel Collins/Dick Morrisey/Chris Hunter(sax), Paul Buckmaster(orch ar), etc

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