Michael Sembello / Bossa Nova Hotel (1983年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Michael Sembelloの1983年のアルバム『Bossa Nova Hotel』の紹介です。

Michael Sembello / Bossa Nova Hotel (1983年) フロント・カヴァー

Michael Sembelloはセッション・プレイヤーやソングライターとして70年代の半ばから活動する多才なミュージシャン。Stevie Wonderの74年のアルバム『Fulfillingness' First Finale』や76年の『Songs in the Key of Life』などの名作にギタリストやソングライターとして貢献したことで注目され、その後もSergio Mendes, George Duke, Chaka Khanなど、様々なジャンルのアーティストの活動をサポートしている。

ソロ・アルバムは5枚ほどを発表しており、この『Bossa Nova Hotel』はデビュー作。この年にひと足早く公開されたヒット映画の『Flashdance』で使われ、全米チャートの1位を記録した「Maniac」が収録されている。

アルバムのプロデュースを担当したのは、Billy JoelやPaul Simonなどのプロデュースで知られるPhil Ramone。全曲をMichael Sembelloが書いているが、その多くは共作で、ソングライターのDavid Batteauや弟のDanny Sembelloなどが共作者になっている。

Michael Sembelloは器用なマルチ・プレイヤーで、本作ではギターを中心にベース、マリンバ、シンセ、リン・ドラム、フェンダー・ローズを演奏。歌の力量もかなりのもので、巧みな歌い回しとエモーションのある歌声が魅力。弟のDannyも兄と同じくマルチ・プレイヤー兼ソングライターとして活動していて、本作では主にキーボードを担当している。

大ヒットした「Maniac」がそうだが、憂いのあるメロディとセンス抜群のポップなアレンジがこの人の作る曲の魅力。アルバムのタイトルには "Bossa Nova" とあるが、ブラジル音楽寄りではない。ラテンの風情もありながら、オリエンタルな情緒も織り込んだ独特のムードのある音楽になっている。

それでは、あと3曲を紹介。

1曲目の「Automatic Man」は全米チャートの34位をマークしたポップなナンバー。"automatic man" とはアンドロイドのことのようで、ほどよく無機質な "Ah-be-auto-we-bo-we" の掛け声のインパクトが強め。間奏ではMichael Sembelloが達者なギター・ソロを弾いている。

2曲目の「First Time」はミディアム・テンポのAORナンバー。Michael Sembelloは同じ年に発表されたMarilyn Scottのアルバム『Without Warning!』をプロデュースしていて、この曲をカヴァーしている。Michael Sembelloがこの頃に深く関わったアルバムには、他にDavid Sanbornの『As We Speek』(82年)、Donna Summerの『Donna Summer』(82年)、Sergio Mendesの『Sergio Mendes』(83年)などがある。

「It's Over」「Talk」「Lay Back」などの情緒あるバラード系もいい。このうち、「Talk」では奥様のCruz Baca Sembelloとデュエット。この曲は「Lay Back」とのカップリングで3枚目のシングルとなり、Adult Contemporaryチャートでは25位をマークした。

Michael Sembelloは『Flashdance』以外にも映画のサントラ向けに曲を書いていて、主なところでは、『Gremlins』(84年), 『Cocoon』(85年), 『Independence Day』(96年)などがある。本作に「Godzilla」や「Superman」という曲があるのは、そうした指向の表れかな。

●収録曲
  1. Automatic Man - 4:13
  2. First Time - 3:04
  3. Cowboy - 3:35
  4. It's Over - 4:56
  5. Maniac - 4:18
  6. Godzilla - 3:50
  7. Talk - 3:26
  8. Cadillac - 4:11
  9. Lay Back - 4:02
  10. Superman - 4:36

◆プロデュース： Phil Ramone

◆参加ミュージシャン： Michael Sembello(vo, g, k, b, string ar), Cruz Baca Sembello(vo), Danny Sembello(k, bv), George Duke/Don Freeman/Dennis Matkosky(k), Nathan Watts(b), Carlos Vega/Vinnie Colaiuta(ds), Paulinho Da Costa(per), Jerry Hey(tp), Lieza Miller(bv), etc

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アルバム・レビューAOR名盤(1983年),夏

Posted by ヒデさん (管理人)