Robert Kraft / Retro Active (1983年) – アルバム・レビュー

2020年5月26日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Robert Kraftの1983年のアルバム『Retro Active / ラヴァーズ・メロディ』の紹介です。

Robert Kraft / Retro Active (1983年) フロント・カヴァー

Robert Kraftはアメリカの作曲家であり音楽プロデューサー。名門のハーバード大学を卒業後、CMの作曲などの仕事をしながらバンド活動を始め、1979年にレコード・デビューをしている。作曲活動と並行して、80年代の終わりまでに5枚のアルバムを残し、音楽プロデューサーとしては映画俳優のBruce Willisのアルバムなどを制作。ビジネスの才覚もあって、92年には自らのレーベルを設立し、94年から2012年までFox MusicのCEOを務めたあと、2013年からはKraftbox Entertainmentという音楽プロダクションを経営している。

今日紹介する『Retro Active』はRobert Kraftの3作目。前2作をプロデュースしたのがFar CryのPhil Galdstonというのも興味深いが、本作ではLarry Carltonがプロデュースを担当している。CarltonがプロデュースしたAORの作品としては、Vapour Trailsの79年のアルバム『Vapour Trails』以来となる。

録音はハリウッドにCarltonが所有する「Room 335」スタジオで行われ、ギターもCarltonが自ら演奏。Robert KraftはSteely Danフリークらしく、Steely Danのアルバムではお馴染みのElliot Scheinerがエンジニアを担当している。参加ミュージシャンは豪華で、特にPages & Tom Kellyの気持ちのいいコーラスを聴ける曲が多い。

それでは、このアルバムからおすすめの4曲を紹介。

1曲目の「Single, Solo」は、Robert KraftとPhil Galdstonによる共作。Jeff Porcaro(ds)とAbraham Laboriel(b)のコンビネーションが生み出す軽やかで弾力のあるリズムが印象的で、その上をPagesのふんわりしたハーモニーが美しく映える。少しクセのあるCarltonのギターも気持ちいい。この曲は、前作の『Ready To Bounce』に収録されていた曲の再録だ。前作は所属していたレコード会社の閉鎖によってリリースを見送られ、84年に日本国内限定で発売されている。

The Manhattan TransferのJanis Siegelと共作した「You're Blue Too」は、哀愁味のあるメロディが魅力。Janis Siegelとのデュエットも実現し、このアルバムからのファースト・シングルになっている。Janisとは、次作の『Quake City』においても「Rubber Neckin'」という曲をデュエット。また、83年のThe Manhattan Transferのアルバム『Bodies And Souls』では、ジャズ・ピアニストのThelonious Monk(82年に他界)を追悼する「The Night That Monk Returned to Heaven」という曲をRobert Kraftが書いている。

続く「I Wonder What You're Like / 君はどんな女(ひと)」はCarol Hall - Carlton - Kraftによる共作。Pagesの透き通ったコーラスが "I Wonder, I Wonder …" というフレーズを優しく繰りだす美しいバラードだ。Jerry HeyのFlugelhornの響きもエレガント。この曲は、Marleneの84年のアルバム『Looking For Love』やMaureen McGovernの88年のアルバム『State Of The Heart』でカヴァーされている。

「Out With My Ex / むかしの恋人」「What Price Glory? / 危険なくちづけ」「On The West Side」からは、Robert Kraftの "Steely Dan愛" が感じられる。このうち、「On The West Side」も前作の収録曲の再録。ホーンの使い方やCarltonのギターの音色がクールで、Jeff Porcaroのビートもセクシー。ジャジーで粋なナンバーになっている。

AORのアルバムでは割とよくあることだが、本作のフロント・カヴァーも日本盤では差し替えられていて、冒頭のオシャレな画像は日本盤のデザイン。オリジナルのデザイン(下の画像)と比べると格段にセンスがよくなっていて、差し替えが成功している。

Robert Kraft / Retro Active (1983年) オリジナル・フロント・カヴァー
●収録曲
  1. Single, Solo - 3:32
  2. Just Another Notch On The Bedpost / リトル・ゲーム - 3:15
  3. Out With My Ex / むかしの恋人 - 4:10
  4. You're Blue Too - 3:26
  5. I Wonder What You're Like / 君はどんな女(ひと) - 3:35
  6. Heartless - 3:27
  7. What Price Glory? / 危険なくちづけ - 3:12
  8. Teach Me How To Kiss You - 3:23
  9. Can We Be In Love Again? / イン・ラヴ・アゲイン - 3:42
  10. On The West Side - 4:09
  11. Let's Hold Each Other Once More / もう一度抱きしめて - 3:25

◆プロデュース: Larry Carlton(g, b, k, per)

◆参加ミュージシャン: Robert Kraft(vo, k), Janis Siegel(vo), Michael Omartian/Terry Trotter/Don Freeman(k), Abraham Laboriel(b), Jeff Porcaro/Rick Marotta/Ed Greene/Alex Acuna(ds), Paulinho Da Costa(per), Jerry Hey(tp), Richard Page/Steve George/Tom Kelly(bv), etc

ところで、Robert Kraftは2013年にCD BOXセットの『Complete Kraft Box 1979-1989』を発売している。外箱の素材にクラフト紙を使っているように見えるのは、名前の "Kraft" にちなんでかな?。全世界で300セット限定とのことなので、全作品をまとめて揃えたい方はお早めに。

●BOXセットの内容
  1. 『Mood Swing』(79年) ※Robert Kraft & The Ivory Coast名義
  2. 『Ready To Bounce / カーネギー・ウギー』(84年) ※81年にレコーディングされお蔵入りになっていたが、84年に日本限定で発売
  3. 『Retro Active / ラヴァーズ・メロディ』(83年)
  4. 『Quake City』(89年)
  5. 『Live At Town Hall』(80年)

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