Scott Jarrett / Without Rhyme Or Reason (1980年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Scott Jarrettの1980年のアルバム『Without Rhyme Or Reason』の紹介です。

Scott Jarrett / Without Rhyme Or Reason (1980年) フロント・カヴァー

Scott Jarrettは、著名なジャズ・ピアニストであるKeith Jarrettの弟。男ばかりの5人兄弟で、上の3人が音楽の道に進んでいる。長男のKeithと次男のChrisはピアニスト。そして三男のScottはシンガー・ソングライターだ。

この『Without Rhyme Or Reason』は、Scott Jarrettのファースト・アルバム。Dave GrusinとLarry Rosenが1976年に立ち上げたフュージョン系の音楽プロダクションであるGRPレコードから発売され、GrusinとRosenがプロデュースを手がけている。ちなみに、GRPは "Grusin/Rosen Productions" の略。

バック・ミュージシャンは、Marcus Miller/Eddie Gomez(b), Chris Parker/Buddy Williams(ds), Ralph MacDonald(per)など、精鋭のジャズ・プレイヤーたち。ジャケットから想像できるように、Scott Jarrettはアコースティック・ギターを担当しており、かなりの腕前だ。また、兄のKeithも2曲(3, 9)のセッションに参加し、アコースティック・ピアノを弾いている。

収録曲はみなScott Jarrettのオリジナルで、タイトル曲の「Without Rhyme Or Reason」だけは友人のFrank Coppolaとの共作。Scottの歌声はJames Taylorのようなナチュラルなスタイルで、バック・ヴォーカルも自ら手がけている。

ここから、おすすめの5曲を紹介。

まずは、1曲目の「Miles Of Sea」。静かな美しい曲で、澄んだメロディに心を洗われる。"美しい歌を君に贈ったら まだ一緒に歌ってくれる? / 僕がどこにいたかを話したら 僕の見てきたものを見てくれる? / 僕は自分の中の海を ずっと旅してきたんだ / 君に 僕の一部になって欲しい" と歌う内容はどこか情熱的で、Scott Jarrettの繊細な歌声にも芯の強さのようなものがある。

2曲目の「I Was A Fool」では、Marcus Millerのスラップ・ベースとBuddy Williamsのドラムスが生み出す弾力のあるリズムが気持ちいい。陽気なハーモニカはToots Thielemansだ。ドラムスに関しては、1曲目のようなバラード系をChris Parkerが、ノリのいい曲をBuddy Williamsが担当し、それぞれの良さを発揮している。

3曲目の「Never My Fault」では、兄のKeithがアコースティック・ピアノで伴奏する。繊細ながら自由奔放ないつもタッチで、終始何かをつぶやくように弟の歌声に優しく寄り添う。"憶えてる? 僕らが小さかった頃、君はいつも僕のことを臆病って言ってたね" という詞は二人のことを歌っているのだろうか? 静かに流れ出すストリングスも柔らかく、すべてが感動的に優しい曲だ。ラストの「Pictures」でも兄の美しいピアノの伴奏を聴くことができる。

タイトル曲の「Without Rhyme Or Reason」は演奏面のハイライト。Dave Grusinの弾く幻想的なシンセの音で曲が始まると、すぐにサンバのようなリズムに乗ったアンサンブルへと移行する。Scott Jarrettもアコースティック・ギターの腕前を存分に披露し、聴きごたえがある。

「The Image Of You」は極上のメロウ。レアな本作が金澤寿和氏の著書『AOR Light Mellow』に取り上げられたのは、この1曲があったからかも。アコースティック・ギターのソロも素晴らしく、地味ながらとても滋養のあるナンバーだ。この曲は「I Was A Fool」とのカップリングで本作からのセカンド・シングルになっている。ファースト・シングルは「Miles Of Sea」。

この後の活動に関する情報はほとんど分からないが、2000年以降に何枚かのアルバムを残している。分かっている範囲では、2005年に『The Gift of Thirst』を、2009年に『Apercu』を発表。また、2004年にはAlan Ross, Scott Jarrett, Garrett Randolphによる "SPACE" というグループ名義で『SPACE』というアルバムを残しており、本作の「Doctor / Nurse」と「Miles Of Sea」がカヴァーされている。

●収録曲
  1. Miles Of Sea - 4:00
  2. I Was A Fool - 3:41
  3. Never My Fault - 4:12
  4. Without Rhyme Or Reason - 3:45
  5. On Looking Back - 2:37
  6. Doctor / Nurse - 4:04
  7. Lady - 3:14
  8. The Image Of You - 5:00
  9. Pictures - 4:36

◆プロデュース: Dave Grusin(k, per, ar), Larry Rosen

◆参加ミュージシャン: Scott Jarrett(vo, ag), Keith Jarrett(p), Marcus Miller/Eddie Gomez(b), Chris Parker/Buddy Williams(ds), Ralph MacDonald(per), Toots Thielemans(harmonica)

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