Al Jarreau / Jarreau (1983年) – アルバム・レビュー

2020年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Al Jarreauの1983年のアルバム『Jarreau』の紹介です。

Al Jarreau / Jarreau (1983年) フロント・カヴァー

Al Jarreauは卓越したヴォーカル・テクニックを持つアメリカのジャズ・シンガー。ソフトで軽やかな歌声と高度なパーカッシヴ・ヴォーカルを自在に繰り出すスタイルで人気を集め、ジャズとポップの両方のジャンルをまたいで活躍した。

1975年にアルバム・デビューしており、この『Jarreau』は6枚目のスタジオ・アルバム。80年代に入ってからの4作品、『This Time』(80年), 『Breakin' Away』(81年), 本作(83年), 『High Crime』(84年)をプロデュースしたのはJay Graydonで、いずれも素晴らしいクオリティのAORアルバムになっている。

全曲が書き下ろしで、作者の顔ぶれがとても豪華。Al Jarreau, Jay Graydon, David Fosterの共作が2曲(1, 4)、Jarreau, Graydon, Tom Canning(アシスタント・プロデューサー)の共作が3曲(5, 6, 9)、Pagesの二人とJohn Langで1曲(3)などとなっている。ポップで華やいだメロディの曲が多く、サウンドも隅々まで磨かれていて、とても上品な聴き心地。

「Mornin'」はBillboard Hot 100チャートの21位をマークするヒットとなり、Al Jarreauを代表する1曲になった。イントロの軽やかなリズムとメロディを聴くと、Michael JacksonとPaul McCartneyのヒット曲「Girl Is Mine」(82年, 米2位)を思い出す。どちらもJeff Porcaroがドラムスを演奏しており、柔らかくてシャープなグルーヴはJeffならでは。曲のフェード・アウトにかけては、得意のパーカッシヴ・ヴォーカルも聴くことができる。

Pagesの二人が書いた「I Will Be Here For You」は繊細なメロウ・バラード。副題の "Nitakungodea Milele" はスワヒリ語で、「永遠にあなたを愛します」という意味らしい。美しいバック・ヴォーカルはPagesではなく、Al Jarreau本人。また、柔らかいタッチのドラムスはJeff Porcaroではなく、Steve Gaddの演奏である。

「Black And Blues」や「Trouble In Paradise」では、Jay Graydonも得意の華やかなギター・ソロを披露。Jerry Hey等によるホーンもアルバムの随所でシャープに鳴り響いて、曲を華やかに盛り上げている。

Al Jarreauは2017年2月に76歳で他界した。2017年のツアーも予定されていたようだが、亡くなる数日前のHPには、残りのコンサートの中止と、これまでの50年に及ぶツアーへの謝辞が綴られている。最後まで歌うことを続けた偉大なヴォーカリストだ。

●収録曲
  1. Mornin' - 4:13
  2. Boogie Down - 4:12
  3. I Will Be Here For You (Nitakungodea Milele) / 君故に - 4:16
  4. Save Me - 6:30
  5. Step By Step - 4:25
  6. Black And Blues - 4:48
  7. Trouble In Paradise - 3:46
  8. Not Like This - 2:36
  9. Love Is Waiting / 愛を待ちわびて - 3:45

◆プロデュース: Jay Graydon(ar, g, k), Tom Canning(ar, k)

◆参加ミュージシャン: David Foster/Michael Omartian/Greg Mathieson(ar, k), Steve George/Robbie Buchanan(k), Abraham Laboriel(b), Jeff Porcaro/Steve Gadd(ds), Victor Feldman(per), Bill Champlin/Richard Page(bv), etc

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