James Taylor / Walking Man (1974年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、James Taylorの1974年のアルバム『Walking Man』の紹介です。

James Taylor / Walking Man (1974年) フロント・カヴァー

James Taylorはアメリカを代表するシンガー・ソングライターの一人。The Beatlesの設立したアップル・レコードからのデビューというのが意外だが、1968年のデビューから現在に至るまで、マイ・ペースな感じで音楽活動を続けている。

繊細な心情を穏やかなメロディと柔らかいアコースティック・サウンドに乗せて歌う曲が多く、その優しい歌声にはロマンティックな響きがある。背が高くて顔立ちもハンサム。同業のCarly Simon(72年~83年)や女優のKathryn Walker(85年~95年)など、私生活では3度の結婚を経験している。

2015年の最新作『Before This World』は、初めて全米チャートの1位を獲得した。グラミー賞の受賞歴があって、ロックの殿堂入りもしているのに、全米チャートの1位になったのはこれが初めてという話も何だか感動的で、いろいろと魅力の多いミュージシャンだ。

この『Walking Man』は、5枚目のアルバム。NYで活動するセッション・ギタリストのDavid Spinozzaがプロデュースを担当し、バック・ミュージシャンにはNYの腕利きが集められている。収録曲は、Spinozza等の書いた「Ain't No Song」とChuck Berryの「The Promised Land」のカヴァーを除いて、James Taylorのオリジナル。「Ain't No Song」にしても、タイトル曲の「Walking Man」にしても、素材は素朴なのに、聴き心地がとても瑞々しい。

「Rock 'N' Roll Is Music Now」と「Let It All Fall Down」の2曲には、目立たないけれど、Paul McCartney夫妻がバック・ヴォーカルで参加した。David SpinozzaはJohnやPaulのソロ・アルバムにも参加しているので、そのつながりだろう。

James TaylorとCarly Simon夫妻が子守唄のように優しく歌う「Daddy's Baby」は、第一子のSallyに捧げた歌。Sally Taylorはこの年の1月に生まれていて、後に両親と同じくシンガー・ソングライターになっている。矢野顕子さんの95年のアルバム『Piano Nightly』では、この曲がピアノの弾き語りでカヴァーされた。

"Walking Man" という気取りのないタイトルには、信じてこの道を歩むみたいな清々しさがあるし、落ち着いた楽曲を一つ一つ聴いていくと、とても寛いだ気分になる。シングル・ヒットがないので地味な印象だけれど、滋養豊かなアルバム

●収録曲
  1. Walking Man - 3:30
  2. Rock 'N' Roll Is Music Now - 3:25
  3. Let It All Fall Down - 3:30
  4. Me And My Guitar - 3:30
  5. Daddy's Baby - 2:37
  6. Ain't No Song - 3:28
  7. Hello Old Friend - 2:45
  8. Migration - 3:14
  9. The Promised Land / 約束の地 - 4:03
  10. Fading Away - 3:32

◆プロデュース: David Spinozza(ar, g)

◆参加ミュージシャン: Hugh McCracken(g, harmonica), Kenny Ascher/Don Grolnick/Ralph Schukett(k), Andy Muson(b), Rick Marotta(ds), Ralph MacDonald(per), Carly Simon/Paul & Linda McCartney/Peter Asher(bv), etc

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