Chicago / Hot Streets (1978年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Chicagoの1978年のアルバム『Hot Streets』の紹介です。

Chicagoは60年代後半から息の長い活動を続けるアメリカのロック・バンド。70年代前半までのChicagoには "社会派のブラス・ロック・バンド" というイメージがあるけれど、David Fosterとコラボレートした80年代には、"ブラス・セクションを有する洗練されたAORバンド" に装いを変えている。この『Hot Streets』は、バンドの転換期ともいえる時期の作品。
この年の1月に、バンドの創設メンバーで、ギターとヴォーカルを担当していたTerry Kathが不慮の事故で亡くなった。このアルバムはKathの没後にレコーディングされているが、不思議と暗い曲がなく、穏やかで明るい内容になっている。
メンバーは、Peter Cetera(b, vo), Robert Lamm(k, vo), Donnie Dacus(g, vo), Laudir de Oliveira(per), Danny Seraphine(ds)に、ブラス・セクション担当のLee Loughnane(tp), James Pankow(tb), Walter Parazaider(woodwinds)を加えた8名。Kathの後任ギタリストのDonnie Dacusは、躍動感のあるジャケットの左端でジャンプしている若者で、このとき27歳。Dacusは「Take A Chance」と「Ain't It Time」のリード・ヴォーカルも担当している。
その「Take A Chance」は、本作一押しの名曲。Dacusの爽やかな歌声はほのかに甘くて、後半からエンディングにかけてのギター・ソロも、甘酸っぱい哀愁のある素敵な音を出している。ちなみに、Billy Joelの同年のヒット曲「My Life」(米3位)で聴くことのできるフレッシュなバック・ヴォーカルは、DacusとPeter Ceteraだ。
本作からは、「Alive Again」「No Tell Lover」「Gone Long Gone」の3曲がシングル・カットされ、最初の2曲は全米14位のヒットを記録した。「No Tell Lover」はメロウで爽やかなバラード。ヴォーカルは "Cetera, with Dacus" となっていて、Ceteraの声が前面に出ている。
「Little Miss Lovin'」にはBee Geesがバック・ヴォーカルで参加した。Gibb兄弟のハイ・トーン・ヴォイスの存在感が強くて、Ceteraの歌声もいつもよりは印象が薄い感じ。また、Robert Lammがリード・ヴォーカルをとった「Love Was New」にはDacusの歌う別バージョンがあって、CDのボーナス・トラックになっている。大人っぽいLammに対して、Dacusの歌声はスウィート。
Dacusは次のアルバム『Chicago 13』(79年)までバンドに在籍した。この頃のChicagoはセールス面ではふるわなかったが、David Fosterをプロデューサーに迎えた『16 / ラヴ・ミー・トゥモロウ』で完全復活する。Donnie Dacusには、バンドの低迷期をしっかり支えて爽やかに去っていったナイス・ガイの印象がある。
- ●収録曲
- Alive Again - 4:17
- The Greatest Love On Earth - 3:13
- Little Miss Lovin' - 4:32
- Hot Streets - 5:12
- Take A Chance - 4:35
- Gone Long Gone - 3:55
- Ain't It Time - 4:08
- Love Was New - 3:32
- No Tell Lover - 4:15
- Show Me The Way - 3:18
◆プロデュース: Phil Ramone, Chicago
◆参加ミュージシャン: David "Hawk" Wolinski(k), Blue Weaver(k), Barry, Robin & Maurice Gibb(bv)
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