Bill Champlin / Single (独身貴族) (1978年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bill Champlinの1978年のアルバム『Single / 独身貴族』の紹介です。

Bill Champlin / Single (独身貴族) (1978年) フロント・カヴァー

Bill Champlinはカリフォルニア出身のミュージシャン。60年代の後半から音楽活動をしていて、ロック・バンドのSons Of Champlinのリーダーとして、またChicagoのリード・シンガーとしても活躍した。Chicagoには82年のヒット作『16 / ラヴ・ミー・トゥモロウ』から加入し、2009年に脱退するまでリード・ヴォーカルとキーボードを担当している。Chicagoのリード・ヴォーカルというとPeter Ceteraのイメージが強いが、バンドに在籍した期間はBill Champlinの方が10年も長い。

ソロ・アルバムに関しては、これまでにライヴ盤を含めて10枚ほどを制作しており、この『Single / 独身貴族』はファースト・アルバム。Sons Of Champlinを離れてからChicagoに加入するまでの間に制作されている。

プロデュースを担当したのはDavid Foster。TOTOのメンバーやJay Graydon, Michael McDonald, Ray Parker Jr., Daryl Hallなど、この後のAdult Contemporaryシーンを牽引する主だったミュージシャンが集い、活気に満ちたフレッシュなサウンドを作っている。ポジティヴなムードに溢れていて、聴くと元気をもらえるアルバム。

ここからおすすめの4曲を紹介。

まずは1曲目の「What Good Is Love」。Harry GarfieldとJay Graydonの共作したナンバーで、曲も演奏も実にフレッシュ。私はAORを聴くようになった初めの頃にこのアルバムに出会っていて、この1曲目の溌剌としたメロディとガッツのある演奏をとても気に入ったことを覚えている。

Harry Garfield - Jay Graydonのコンビは、80年のAirplayのアルバム『ロマンティック』にも「She Waits For Me」というフレッシュな曲を提供している。他にも、Jaye P. Morganの77年のアルバム『Jaye P. Morgan』の1曲目「I Fall in Love Everyday」や、Cory Wellsの78年のアルバム『Touch Me』の「You're My Day」などもこの二人の書いた曲。どちらも元気のある爽快な曲だ。

残りの曲はみなBill Champlinの作ったナンバーで、David Fosterやその奥様のB. J. Cook Fosterが共作の相手になっている。

「I Don't Want You Anymore」はBill ChamplinとDavid Fosterによる共作。ファンキーなリズムとフュージョン・タッチの洗練された演奏の両方を味わえる好ナンバーだ。勢いがあるだけでなく、曲の細部まで緻密に構成されているところが魅力。厚みのあるバック・コーラスは、Bill Champlin, Bobby Kimball, Daryl Hall, Michael McDonald等。とても豪華な顔ぶれだ。

「We Both Tried」もChamplin - Fosterによる共作。メロディにしっとりとした哀感のあるバラードで、Bill Champlinの熱を帯びた歌唱がロマンティック。優しく柔らかいバック・コーラスと美しいストリングスも絶品だ。Robbie Dupreeは80年のデビュー・アルバム『ふたりだけの夜』において、この曲を爽やかにカヴァーしている。

「Love Is Forever」も明るいナンバーで、Bill Champlinの表情豊かなヴォーカルと力強い女性コーラスの掛け合いが気持ちいい。マイナーなところでは、CCMのシンガー・ソングライターのMichael Gonzalesが80年のアルバム『Fire In My Soul』でこの曲をカヴァーしている。

81年に発表されたセカンド・アルバム『Runaway』もDavid Fosterによるプロデュース。Bill ChamplinがChicagoに加入した年のアルバムで、こちらもおすすめ。

この前後にBill Champlinはソングライターとして、グラミー賞の "Best Rhythm and Blues Song" を2度受賞している。1度目は79年にEW&Fに提供した「After The Love Has Gone」で、Foster - Graydon - Champlinの共作。全米2位のヒットを記録した名バラードだ。

2度目は83年にGeorge Bensonに提供した「Turn Your Love Around」で、こちらはChamplin - Graydon - Steve Lukatherという珍しい共作。BensonのヴォーカルをフィーチャしたR&Bナンバーで、全米5位のヒットになった。Benson, Graydon, Lukatherという3人の著名なギタリストが共演した "歌モノ" という、いかにも80年代らしい贅沢なコラボになっている。

●収録曲
  1. What Good Is Love - 3:40
  2. I Don't Want You Anymore - 3:56
  3. We Both Tried - 4:56
  4. Yo' Mama - 4:09
  5. Fly With Me - 3:59
  6. Love Is Forever - 3:59
  7. Careless - 3:53
  8. Elayne - 3:30
  9. Keys To The Kingdom - 5:08

◆プロデュース: David Foster(k)

◆参加ミュージシャン: Bill Champlin(vo, g, k), Jay Graydon(g, sy), Steve Lukather/Ray Parker, Jr.(g), David Paich(k), Steve Porcaro(sy), David Hungate/David Shields(b), Jeff Porcaro/Larry Tolbert/Duris Maxwell(ds), Jerry Hey(horn), Marty Paich(strings), Daryl Hall/Bobby Kimball/Michael McDonald(bv), etc

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