Bill Withers / Watching You Watching Me (1985年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bill Withersの1985年のアルバム『Watching You Watching Me / 愛の情景』の紹介です。

Bill Withers / Watching You Watching Me (1985年) フロント・カヴァー

Bill Withersは70年代のソウル、R&Bシーンで活躍したシンガー・ソングライター。デビューしたのは32歳なので遅いスタートだが、デビュー曲の「Ain't No Sunshine / 消えゆく太陽」(71年)が全米3位を記録するヒットになり、グラミー賞の "Best R&B Song" を受賞。その後も、「Lean on Me」(72年, 米1位), 「Use Me」(72年, 米2位)と立て続けにヒットを飛ばしている。この頃のBill Withersには、知的で内省的なシンガー・ソングライターのイメージがある。

その後しばらくヒットから遠ざかるが、1981年にサックス奏者のGrover Washington, Jr.のヒット曲「Just The Two Of Us / クリスタルの恋人たち」(米2位)のヴォーカルに抜擢され、グラミーの "Best R&B Song" を再び受賞。この時には、大人の色香を漂わせるスタイリッシュなコンテンポラリー・シンガーに成熟していた。

この『Watching You Watching Me / 愛の情景』はその流れを汲むアルバムで、優雅なサウンドと上品で落ち着いた情緒のあるアルバム。

全曲がBill Withersの自作で、そのうちの4曲(1, 3, 9, 10)は共作。「Oh Year!」ではDavid Foster - Larry Carltonと、「Don't Make Me Wait」ではDon Freemanと、「Whatever Happens」では再びCarltonと、「You Try To Find A Love」ではMichael Colombierと共作している。

ここから、おすすめの4曲を紹介。

まずは、Bill Withers - David Foster - Larry Carltonという素敵な共作が実現した「Oh Year!」。明るく爽やかなナンバーで、サウンドもエレガント。David Fosterはキーボードを演奏しているが、Larry Carltonは曲作りにのみ参加している。この曲はファースト・シングルになり、R&Bチャートの22位をマークした。ミュージック・ビデオもあって、80年代らしいスウィートな映像が魅力。Billを始めとする登場人物がみな優しさと愛に溢れていて、観れば幸せな気分になること間違いなし。

続く「Something That Turns You On」は心地よいメロウネスを漂わせるミディアム・テンポのR&Bナンバー。Bill Withersの歌い回しには独特の抑揚と生きたエモーションがあって、それが淡々とした印象のサウンドやクールな女性コーラスと対比される。この曲はセカンド・シングルになり、R&Bチャートの46位を記録。

タイトル曲の「Watching You Watching Me / 愛の情景」は、「クリスタルの恋人たち」を彷彿とさせるディープなメロディで、Bill Withersのヴォーカルにもしっとりとした憂いがある。Richard Tee(Fender Rhodes)を始め、Marcus Miller(b), Ralph MacDonald(per), Yvonne Lewis(bv)など、「クリスタルの恋人たち」をサポートしたミュージシャンが多く参加した。

「You Just Can't Smile It Away / 愛しき人よ」は、鍵盤によるシンプルな演奏でBill Withersの深みのあるヴォーカルをじっくり聴かせるバラード。幼少期に吃音だったというエピソードが俄かには信じられないほど、Bill Withersの歌声は雄弁だ。「Whatever Happens / 織りなす願い」も同じ路線の素晴らしいバラード。

72年のヒット曲「Lean On Me」は、R&BグループのClub Nouveauによって88年にカバーされ、2度目の全米1位を獲得している。この時、Bill Withersはソングライターとして3度目のグラミーとなる "Best R&B Song" を受賞した。"私を頼って" という意味のこの歌は、大災害の時にたびたび歌われてきたようだ。

3月30日にBill Withersの訃報を聴いて、とてもショック。悲しいですが、素晴らしい歌をたくさん残してくれました。

●収録曲
  1. Oh Yeah! - 4:01
  2. Something That Turns You On - 4:23
  3. Don't Make Me Wait - 3:59
  4. Heart In Your Life - 4:13
  5. Watchng You Watching Me / 愛の情景 - 5:47
  6. We Could Be Sweet Lovers - 3:26
  7. You Just Can't Smile It Away / 愛しき人よ - 4:41
  8. Steppin' Right Along - 5:43
  9. Whatever Happens / 織りなす願い - 3:14
  10. You Try To Find A Love / 愛の光芒 - 5:17

◆プロデュース: Larry Carlton, Don Freeman(k, linn-drum), Denny Diante, Ralph MacDonald(per), Michael Colombier(k, ar), Bill Withers(vo, k, simmons)

◆参加ミュージシャン: Paul Jackson Jr./Dann Huff(g), David Foster/Don Freeman(k, ar), Robbie Buchanan/Richard Tee/Greg Phillinganes(k), Marcus Miller(b, k), Nathan East/ Robert Popwell(b), John Robinson/Buddy Williams(ds), Paulinho Da Costa(per), Phil Perry/Marty McCall/Alex Brown(bv), etc

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