Crackin’ / Special Touch (1978年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Crackin'の1978年のアルバム『Special Touch』の紹介です。

Crackin' / Special Touch (1978年) フロント・カヴァー

Crackin'は70年代に活動した白人・黒人混成のグループ。メンバーには、後にセッション・シンガーとして活躍するLeslie Smithや、売れっ子プロデューサー・チームとしてRobbie Dupree, Smokie Robinson, The Temptations, Kenny Gなどを手がけるRick Chudacoff & Peter Bunettaが在籍している。もとはNY周辺で活動していたが、西海岸のサン・フランシスコに拠点を移してレコード契約を獲得。70年代後半に4枚のアルバムを残している。

彼らの音楽には明るく豊かなメロディがあり、サウンドはさり気なく洗練されている。ソウルフルな歌声と爽やかなハーモニー、生き生きとした演奏もいい。爽やか(breezy)、華やか、メロウ、ファンキーといった気持ちのいい要素をバランス良く備えた独自のソウル・ミュージックだ。

この『Special Touch』は4作目で、彼らのラスト・アルバムになる。前作に続いてMichael Omartianがプロデュースを担当。Michael Omartianは、2年後にChristopher Crossのグラミー受賞作『南から来た男』を手がける名匠だ。

収録曲はRobbie Dupreeの書いた「Nobody Else」と、Omartian夫妻の書いた「In Between」を除いて彼らの自作。ここから、おすすめの4曲を紹介。

まずは、1曲目の「Double Love」。元気のあるグルーヴィなナンバーで、明るいハーモニーが気持ちいい。力強いベースとドラムスはRick Chudacoff & Peter Bunettaのコンビが担当。軽快なギターはBob BordyとBrian Rayの二人。キーボードはG.T.Clinton。ヴォーカルはLeslie SmithとArno Lucasの二人だが、この曲ではArno Lucasがメイン・ヴォーカルを担当している。

「Too Young」はファンキーとメロウを巧みにブレンドしたCrackin'らしいバラード。憂いを帯びた爽やかなメロディが魅力で、サビの "Too young to care, too old to dare / Too young to share, too old no fair" の美しいハーモニーも甘酸っぱい。バラード系のヴォーカルはLeslie Smithが担当しており、この曲でも伸びやかで艶のあるテナー・ヴォイスで魅せる。

「Nobody Else」はRobbie Dupreeの書いた爽やかなAORナンバー。Robbie Dupreeも80年のデビュー・アルバム『ふたりだけの夜』においてセルフ・カヴァーしている。そのアルバムをプロデュースしたのもBunetta & Chudacoffのコンビで、Crackin'のほとんどのメンバーが参加している。

晴れ晴れとしたメロディと軽快なグルーヴを持つ「Don't Cha Love Me」は "ザ・ライト & メロウ" という感じのアッパーなナンバー。Leslie Smithの滑らかな歌声にWatersの女性二人(JuliaとMaxine)によるエレガントなバック・ヴォーカルが華を添えている。

Omartian夫妻の書いたバラードの「In Between」でも、Leslie Smithの情感豊かな歌唱をたっぷり味わえる。異国情緒のあるラストの「Kalalee」ではファルセットだけで綺麗に歌っており、素晴らしい。

そのLeslie Smithの82年のソロ・デビュー作『Heartache』も、Bunetta & Chudacoffのコンビがプロデュースしている。AOR~ブラック・コンテンポラリーの名作と言える充実した内容で、おすすめだ。

●収録曲
  1. Double Love - 3:23
  2. Too Young - 3:58
  3. Heavenly Day - 4:02
  4. Nobody Else - 3:05
  5. I Could Be Anything - 3:58
  6. I Can't Wait Forever - 4:02
  7. In Between - 3:53
  8. Don't Cha Love Me - 3:49
  9. On The Wing - 4:15
  10. Kalalee - 5:07

◆プロデュース: Michael Omartian(k, per, bv)

◆参加ミュージシャン: Leslie Smith/Arno Lucas(vo, per), Bob Bordy/Brian Ray(g), G.T.Clinton(k), Rick Chudacoff(b), Peter Bunetta(ds, per)
with Jay Graydon(sy), Ernie Watts(sax), Julia Waters/Maxine Waters(bv), etc

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