Leslie Smith / Heartache (1982年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Leslie Smithの1982年のアルバム『Heartache』の紹介です。

Leslie Smith / Heartache (1982年) フロント・カヴァー

Leslie SmithはLAを拠点に活動するソウル/R&Bシンガー。70年代には白人・黒人混成の大型グループであるCrackin'のリード・シンガーとして活躍し、Crackin'の解散後は売れっ子のセッション・シンガーとして様々なアーティストの活動をサポートしている。ソロ・アルバムは1982年と92年に1枚ずつあり、特に82年の『Heartache』はAOR/ブラック・コンテンポラリーの名作と言える素晴らしい内容。

本作をプロデュースしたPeter BunettaとRick ChudacoffもCrackin'の元メンバー。二人はCrackin'のリズム・セクションを担当し、グループの解散後はBunetta & Chudacoffのプロデューサー・チームとして活躍している。本作でも二人がドラムとベースを担当。他の参加ミュージシャンのうち、Lester Abrams(sy), Arno Lucas(per, bv), Brian Ray(g)もCrackin'の仲間だ。

収録曲のほとんどはカヴァー曲や他作の曲になっていて、Leslie Smithが書いたのは、Lester Abramsと共作した「Don't Shut The Door (On My Love)」の1曲のみ。ここから、おすすめのナンバーを4曲紹介。

まずは1曲目の「It's Something」。Brenda RussellとDavid Fosterの共作した爽やかなナンバーで、Brenda Russellも83年のアルバム『Two Eyes / 出逢いのときめき』でセルフ・カヴァーしている。綺麗に整ったサウンドとLeslie Smithの伸びやかな歌声がとても気持ちいい。

2曲目はポップ&メロウな「Before The Night Is Over / 夜の終わりに」。Merry Claytonとのデュエット曲で、R&Bチャートでは71位まで到達した。Merry Craytonは、Little Featのパーカッション奏者であるSam Craytonの姉。The Rolling Stonesの「Gimmie Shelter」(69年)におけるMick Jaggerとのパワフルなデュエットが有名だ。素敵な雰囲気のハーモニカを吹いているのは、Steve Miller BandのNorton Buffalo。

華やかな「Nothin' You Can Do About It」は、David Foster, Jay Graydon, Steve Kipnerによる共作。Airplayの80年のアルバム『ロマンティック』の収録曲で、AirplayではTommy Funderburkがロック・シンガーらしいハイ・トーンで歌っているが、Leslie Smithは滑らかなテナー・ヴォイス。

「Love's A Heartache / 愛の傷跡」はNed Doheny作のお馴染みの曲。渋く枯れた味わいが魅力だが、Leslie Smithが歌うと艶やかになる。人気のある曲で、同じ年のAverage White Bandのアルバム『Cupid's In Fashion』に収録されたほか、ギタリストのRobben Fordも83年のアルバム『Love's A Heartache / ホイールズ・オブ・ラブ』でカヴァー。また、Ned Doheny自身は88年のアルバム『Life After Romance』でセルフ・カヴァーしている。

この他にもPiecesのリーダー格であるGeoffrey Lieb等が書いた「Dream On」や、Brock Walsh等の書いた「Do You Still Remember Me」など、AORのコアなファンには名の知れたソングライターの曲を歌っている。

AORのアルバムにはよくあるように、このアルバムのジャケットも国内盤では差し替えられた(下の画像)。決して悪くないがどこか寒々しくて、本作の爽やかなサウンドやLeslie Smithの温かい歌声にマッチしない。オリジナルのジャケットに写るLeslie Smithは熱い眼差し。ピンクのセーターにパープルのシャツの襟を立てていて、お洒落です。

Leslie Smith / Heartache (1982年) 日本盤フロント・カヴァー
●収録曲
  1. It's Something - 3:48
  2. I'm On The Outside Looking In / アウトサイド・ルッキング・イン - 3:21
  3. Before The Night Is Over / 夜の終わりに - 3:35
  4. Don't Shut The Door (On My Love) - 4:03
  5. Dream On - 4:13
  6. Nothin' You Can Do About It - 4:25
  7. Love's A Heartache / 愛の傷跡 - 4:46
  8. Do You Still Remember Me - 4:00
  9. If You're In Love - 4:14

◆プロデュース: Peter Bunetta(ds, per), Rick Chudacoff(b, k)

◆参加ミュージシャン: Ned Doheny/Brian Ray/Dennis Herring(g), Bill Elliot(k), Arno Lucas(per, bv), Joe Lala(per), Norton Buffalo(harmonica), Kal David(sitar, bv), Lester Abrams(sy), Merry Clayton(vo), Arnold McCuller/Matthew Wiener(bv), etc

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