Bill Wolfer / Wolf (デジタルの夜) (1982年) – アルバム・レビュー

2022年11月21日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bill Wolferの1982年のアルバム『Wolf / デジタルの夜』の紹介です。

Bill Wolfer / Wolf (デジタルの夜) (1982年) フロント・カヴァー

Bill Wolferは主に80年代に活躍したシンセサイザーのスペシャリスト。Stevie Wonderの1980年のアルバム『Hotter Than July』でシンセのプログラミングを担当したり、Michael Jacksonの82年の名作『Thriller』で「Beat It」や「Billie Jean」のシンセを担当するなど、多くのアルバムに参加している。

ソロ・アルバムも何枚か残しており、本作はファースト・アルバム。ファンク、ディスコ、ソウル、スムースジャズ、ポップといった要素を上品にミックスした曲を揃え、デジタル器材を駆使しながらも無機質にはならず、心地よい温もりのあるサウンドに仕上げている。

Temptationsのヒット曲のカヴァーが1曲(4)あるが、残りはBill Wolferのオリジナル。収録曲の半分はヴォーカル曲で、Finis Hendersonが1曲(1)、Jon Gibsonが3曲(2, 6, 7)、Crystal Blakeが1曲(8)でヴォーカルを担当している。

1曲目の「Call Me」はFinis Hendersonの憂いのある歌声が素敵なナンバー。Finis Hendersonも83年の唯一のアルバム『Finis / 真夏の蜃気楼』でこの曲を歌っている。「Why Do You Do Me」もFinisとの共作だ。

「So Why」「Why Do You Do Me」「Wake Up」を歌ったJon Gibsonというヴォーカリストは、声や歌い方がStevie Wonderにそっくり。このアルバムがシンガーとしてのデビューのようで、翌年に『Standing on the One』で本格的にアルバム・デビューした。

「Papa Was A Rollin' Stone」はTemptationsの72年のアルバム『All Directions』に収録された11分を超す曲のカヴァー。TemptationsのバージョンはBillboard Hot 100チャートの1位を獲得し、グラミー賞も受賞した。なお、クレジットを見ないと分からないし、見てから驚くが、この曲と「So Why」にはMichael Jacksonがバック・ヴォーカルで参加している。

女性ヴォーカルのCrystal Blakeが透明感のある美声で歌う「Soaring」はドリーミーな曲。この曲の美しいハーモニカはStevie Wonderだ。控えめな演奏だがとてもチャーミングで、Stevie WonderからBill Wolferへの最高のお返しになっている。

ジャケットの赤いネオン・ライトがいい雰囲気なので、邦題も『デジタルの夜』に。そのままな感じだけど、なかなか乙な邦題だ。

日本では『Solar Records Original Master Collection』と題した復刻シリーズの1枚として2019年に初CD化されている。最新のリマスタリングに加え、当時カセット・テープでのみリリースされたセカンド・アルバム『The Hard Way』がボーナス・トラックに収録されており、お勧めだ。

●収録曲
  1. Call Me - 4:02
  2. So Shy - 4:36
  3. Window on a Dream - 3:48
  4. Papa Was A Rollin' Stone - 5:17
  5. Nobody Knows - 3:41
  6. Why Do You Do Me? - 4:34
  7. Wake Up - 3:46
  8. Soaring - 3:28
  9. Camouflage - 5:41
  10. Pop Quiz - 4:36

◆プロデュース: Bill Wolfer(k, ar, programming)

◆参加ミュージシャン: Finis Henderson/Jon Gibson/Crystal Blake(vo), Stevie Wonder(harmonica), Nathan Watts(b), Michael Jackson/Waters(bv), etc

スポンサーリンク