Donald Fagen / The Nightfly (1982年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Donald Fagenの1982年のアルバム『The Nightfly』の紹介です。

Donald Fagen / The Nightfly (1982年) フロント・カヴァー

ポップス史に惚れ惚れするような足跡を残したSteely Dan。Donald Fagenはその創設メンバーであり、中心となってグループを率いた。ずっと相方だったWalter Beckerは2017年9月に他界してしまったが、Fagenは唯一の公式メンバーとして今もSteely Danに在籍している。

Donald Fagenはこれまでに4枚のソロ・アルバムを残しており、本作『The Nightfly』は最初のソロ・アルバム。Steely Danの後期の名作である『Aja / 彩(エイジャ)』(77年)や『Gaucho』(80年)と同じように、当時を代表するスタジオ・ミュージシャンを贅沢に起用して制作されたアルバムだ。また、ポピュラー・ミュージックにおいてフル・デジタル・レコーディングされた最初のアルバムの一つとされている。

The Driftersの1956年の曲をカヴァーした「Ruby Baby」を除く全曲がFagenのオリジナルであり、どの曲もポップで知的。演奏は上質で、磨き抜かれたサウンドには隙がない。雰囲気のあるアート・ワークもかっこいいし、これほどにクールで上品な味わいのアルバムはなかなかない。

強いていうと、Donald Fagenの本作以降のソロ・アルバムが同じ味わいだが、この1作目を超えるクオリティのものはないように思う。

ファースト・シングルとなり、Billboard Hot 100チャートの26位をマークした「I.G.Y.」は、International Geophysical Year (国際地球観測年)の略。1957年から58年まで続いた国際的な科学研究プロジェクトの名称らしく、"未来は明るい / 海底電車でニューヨークからパリまで90分" といった無邪気な歌詞に込められたシニカルなニュアンスがFagenらしい。それにしても、この曲のホーンはかっこいい。

ジャケットでクールにポーズを決める本物っぽいDJは、実はFagen本人。Donald Fagenは今年70歳になる。私は2000年5月15日の東京国際フォーラムでのSteely Danのコンサートを観たが、その時のコンサート・パンフは今でも宝物です。

●収録曲
  1. I.G.Y. (What a Beautiful World) - 6:03
  2. Green Flower Street - 3:42
  3. Ruby Baby - 5:39
  4. Maxine / 愛しのマキシン - 3:49
  5. New Frontier - 6:21
  6. The Nightfly - 5:46
  7. The Goodbye Look - 4:50
  8. Walk Between Raindrops / 雨に歩けば - 2:38

◆プロデュース: Gary Katz

◆参加ミュージシャン: Donald Fagen(vo, k), Larry Carlton/Rick Derringer/Hugh McCracken/Dean Parks(g), Steve Khan(ag), Greg Phillinganes/Michael Omartian/Rob Mounsey(k), Anthony Jackson/Chuck Rainey/Marcus Miller/Will Lee/Abraham Laboriel(b), Jeff Porcaro/James Gadson/Steve Jordan/Ed Greene(ds), Randy Brecker(tp), Michael Brecker(sax), Valerie Simpson(bv), etc

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