Michel Berger / Dreams In Stone (1982年) – アルバム・レビュー

2020年5月11日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Michel Bergerの1982年のアルバム『Dreams In Stone』の紹介です。

Michel Berger / Dreams In Stone (1982年) フロント・カヴァー

Michel Berger(ミッシェル・ベルジェ)は70年代から80年代にかけてのフランスのポップ・ミュージック・シーンを代表するミュージシャン。シンガー・ソングライターとしても10作以上のアルバムを残している。奥様はフレンチ・ポップスの人気歌手のFrance Gall(フランス・ギャル)。

この『Dreams In Stone』は米アトランティック・レコードから発売された作品で、Michel Bergerが初めて、そしておそらく唯一、アメリカで発表したアルバム。

内容は "アメリカ" をコンセプトにしたトータル・アルバムで、曲名にも「JFK」「American Island」「Walking Through The Big Apple」「Living Under The Gun」など、それらしいフレーズが並ぶ。中田利樹氏は日本盤のCD解説において、これを "AOR組曲" と呼んでいる。

インスト曲が4曲、ヴォーカル曲が6曲という構成もトータル・アルバムらしい。インスト曲は全てMichel Bergerの自作なのに対し、ヴォーカル曲は全て共作。次のように曲ごとに共作者とヴォーカリストを変えていて、顔ぶれがとても豪華だ。
(カッコ内は共作者 / ヴォーカリスト)


  1. American Island (David Batteau / David Palmer)
  2. Walking Through The Big Apple (Bill Champlin / Bill Champlin & Lynn Carey)
  3. Living Under The Gun (Jennifer Warnes)
  4. Apple Pie (Bill Withers)
  5. Anything Can Happen Here (Ben Sidran / Max Gronenthal)
  6. Innocent Eyes (Douglas Brayfield / Rosanne Cash)

参加ミュージシャンも実に豪華で、ギタリストにはBuzz Feiten, Robben Ford, Steve Lukather等、ドラムスにはJeff Porcaro, Carlos Vega等が参加し、ドラムスに関しては半分以上をJeff Porcaroが担当している。

序曲の「JFK」から2曲目の「American Island」へは、曲が切れ目なく続く。「American Island」はDavid Batteauらしいフレッシュなメロディの曲で、Elton Johnあたりが得意とするドラマティックな展開が魅力。変拍子を取り入れた起伏のある演奏がひとしきり続くと、ふと演奏が途切れ、David Palmerが悠々と歌いだす。このメロディがうっとりするほど美しい。

ロック・ナンバーの「Walking Through The Big Apple」を歌うBill Champlinは、Chicagoに加入する直前だ。デュエット相手のLynn Careyはモデルや女優としても活動する美人さんで、歌声にはBill Champlinに負けないパンチがある。ちなみに、"The Big Apple" はニューヨーク市のニックネーム。

バラード・タイプの「Living Under The Gun」を歌うJennifer Warnesも、映画『愛と青春の旅立ち』のテーマ曲「Up Where We Belong」が大ヒットする直前の参加。この曲では、ギターをRobben Fordが、ドラムスをCarlos Vegaが担当している。

続く「Apple Pie」は、前の年に「Just The Two Of Us」の大ヒットにより復活したBill Withersの作で、Withersには珍しいロック・ナンバー。"Apple Pie" には口語で「きわめてアメリカ的な、アメリカ伝統的な」という意味があるらしい。シャープでしなやかな演奏は、Steve Lukather(g), Jeff Porcaro(ds), David Hungate(b)等、TOTOのメンバーによるもので、後半はホーン・セクションも入って華やかになる。

「Anything Can Happen Here」は、Ben Sidranと共作した渋いナンバー。ヴォーカリストのMax GronenthalはBill Champlinタイプの実力派で、Foster & Graydonの『Airplay』(80年)にもバック・ヴォーカルで参加している。

バラード・タイプの「Innocent Eyes」を歌うRosanne Cashは、カントリー・ミュージシャンのJohnny Cashの娘。途中からはPagesの二人やMarty McCall, Bill Champlin等、豪華なバック・コーラス陣も一緒に歌いだし、スケールが大きくなる。この曲は唯一シングル・カットされ、米Adult Contemporaryチャートの23位を記録した。

Michel Bergeと奥様のFrance Gallは、92年のアルバム『Double Jeu』で初めて共演している。その直後に、才人といわれたMichel Bergerは44歳の若さで他界。この『Dreams In Stone』には、フランス人のMichel Bergerから見た80年代初めのアメリカが生き生きと描かれている。

●収録曲
  1. JFK (Overture) - 2:55
  2. American Island - 5:01
  3. Walking Through The Big Apple - 4:15
  4. Street Sonata - 0:35
  5. Living Under The Gun - 3:41
  6. Apple Pie - 4:00
  7. Rooftops - 2:50
  8. Anything Can Happen Here - 4:10
  9. Innocent Eyes - 4:55
  10. Parade - 2:37

◆プロデュース: Michel Berger(k), Philippe Rault

◆参加ミュージシャン: David Palmer/Bill Champlin/Jennifer Warnes/Bill Withers/Max Gronenthal/Rosanne Cash(vo), Buzz Feiten/Robben Ford/Steve Lukather/Richie Zito(g), David Hungate(b), Neil Larsen(k), Jeff Porcaro/Carlos Vega(ds), Tom Saviano(sax), Chuck Findley(tp), Tom Kelley/Marti McCall/Richard Page/Steve George(bv), etc

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