Diana Ross / ROSS (1983年) – アルバム・レビュー

2020年9月7日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Diana Rossの1983年のアルバム『Ross』の紹介です。

Diana Ross / ROSS (1983年) フロント・カヴァー

Diana Rossは、60年代から70年代にかけてのモータウン・レコードを代表するトップ・スターの一人。60年代には女性3人のヴォーカル・グループであるThe Supremesのリード・シンガーとして、70年代にはソロ歌手として華々しく活動した。モータウンの看板シンガーとしての最後の全米No.1ヒットはLionel Richieとデュエットした1981年の『Endless Love』で、この後にレコード会社をRCAに移籍している。

この『Ross』は、RCAに移籍後の3作目。最初の2枚のアルバムはセルフ・プロデュースだが、本作では再び外部の旬のプロデューサーを起用しており、前半の5曲をGary Katzが、後半の3曲をRay Parker Jr.が担当している。

Gary KatzはSteely Danのプロデューサーとして有名。Steely Danの80年の名作『Gaucho』や、Donald Fagenの82年の傑作ソロ・アルバム『The Nightfly』をプロデュースし、一息ついたところだ。一方のRay Parker Jr.は、81年にRay Parker Jr. & Radio名義の『A Woman Needs Love』を、82年にはソロ1作目の『The Other Woman』を成功させて、波にのっている。

Gary Katzプロデュースの5曲はいずれも洗練されたAORナンバー。Jeff Porcaro(ds), Jimmy Haslip(b), Domenic Troiano(g), Greg Phillinganes(k)を中心に、ゲスト・ミュージシャンを招いて録音されている。

「That's How You Start Over / スタート・オーヴァー」はEd SanfordとMichael McDonaldの共作したシャープなAORナンバーで、Michael McDonaldもバック・ヴォーカルで参加した。Michael McDonaldの82年のソロ・アルバム『思慕(ワン・ウェイ・ハート)』では、この2人の書いた「I Keep Forgettin'」が全米4位のヒットを記録している。

「Love Will Make It Right」はDonald Fagenの書いたスローなナンバーで、曲の後半ではDonald Fagen本人によるシンセのソロが披露される。さながら『Nightfly』の収録曲のようなクールな味わい。

「You Do It」は、Sheena Eastonの前年のアルバム『Madness, Money & Music』の収録曲のカバーになる。ポップでとても洗練された曲だが、シングル・カットはされていない。ファースト・シングルは次の「Pieces Of Ice」で、US R&Bチャートの15位を記録。Marc Jordan等が曲を書き、Larry CarltonとJoe Walshがギターを弾いている。

「Let's Go Up」はSteely Danの『Gaucho』あたりの雰囲気をもった曲。女性シンガー・ソングライターのFranne Golde等の作で、Jeff Porcaroの上品で軽やかなシャッフルが気持ちいい。この曲はサード・シングルになり、R&Bチャートの52位をマークした。

アルバムの後半は、Ray Parker Jr.の書いた2曲(6, 7)と、Marc Jordan等とDiana Rossの共作「Girls」を収録している。

「Love or Loneliness」は軽やかなミディアム・テンポのナンバーで、メロディには「A Woman Needs Love」のような爽やかな甘さがある。この曲ではRay Parker Jr.がほとんどの楽器を演奏した。

続く「Up Front」は「The Other Woman」のようなディスコ・ロック調のナンバーで、ここでもRay Parker Jr.がほとんどの楽器を演奏。最後の「Girls」もディスコ・ロック調だが、こちらは前作『Silk Electric』と同じミュージシャンが参加しているので、その頃に録音された素材だろう。

Ray Parker Jr.の勢いは止まらず、翌84年には映画『Ghostbusters』のテーマ・ソングを歌って遂に全米1位を獲得。Diana Rossの方も、84年のアルバム『Swept Away』では、Julio Iglesiasとデュエットした「All of You」(全米19位)や、Daryl Hall等の書いた「Swept Away」(19位)、Lionel Richieの作で84年に他界したMarvin Gayeに捧げられた「Missing You」(10位)をヒットさせている。

●収録曲 (括弧内は作者)
  1. That's How You Start Over (Ed Sanford, Michael McDonald) - 4:10
  2. Love Will Make It Right (Donald Fagen) - 4:44
  3. You Do It (Deborah Allen, Eddie Struzick, Rafe Van Hoy) - 4:31
  4. Pieces of Ice (John Capek, Marc Jordan) - 4:55
  5. Let's Go Up (Franne Golde, Peters Ivers) - 4:02
  6. Love or Loneliness (Ray Parker Jr.) - 4:16
  7. Up Front (Ray Parker Jr.) - 3:57
  8. Girls (Bill Wray, Marc Jordan, Diana Ross) - 3:58

◆プロデュース: Gary Katz, Ray Parker Jr.(g, b, k, sy, ds, bv)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Larry Carlton/Joe Walsh/Jimmy Haslip(g), Greg Phillinganes/Michael McDonald(k), Neil Jason(b), Jeff Porcaro/Yogi Horton(ds), Donald Fagen/David Paich/Steve Porcaro(sy), etc

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