Eric Tagg / Dreamwalkin’ (1982年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Eric Taggの1982年のアルバム『Dreamwalkin'』の紹介です。

Eric Tagg / Dreamwalkin' (1982年) フロント・カヴァー

Eric Taggは、AORやフリー・ソウル・シーンで人気のあるミュージシャン。アメリカ生まれだが、20歳の時にオランダで音楽活動を始め、最初の2枚のアルバムをオランダで発表している。1作目の『Smilin' Memories』にはフュージョン・ギタリストのLee Ritenourが参加しており、その縁で、EricはRitenourの出世作『RIT』(81年)のリード・ヴォーカルに抜擢される。そこから、シングルの「Is It You?」がヒット(米15位)したことで、アメリカだけでなく日本でもEric Taggの名が知られるようになった。

この『Dreamwalkin'』はEric Taggの3作目で、日本のみで発売された作品。『RIT』のヒットに対するお返しとして、Lee Ritenourがプロデュースを担当し、参加ミュージシャンの多くも『RIT』と同じ顔ぶれだ。なお、Ritenourも、『RIT』の続編となる『RIT/2』を同じ年に発表し、Ericを再びヴォーカリストに招いている。

収録曲は、Ivan Lins作の「Mãos De Afeto」を除いてEricのオリジナル。この曲は、Ivan Linsの77年のアルバム『今宵楽しく』からの選曲。また共作が2曲あり、「Promises Promises」はBill ChamplinとRitenour、「Dreamwalkin'」はKelly McNultyとの共作である。

「Is It You?」と同じ顔ぶれで作られた「Promises Promises」は、軽やかなシティ・ポップ。Eric Taggの歌声には独特の温もりと湿度があって、それが曲を優しくメロウな印象にしている。また、ほどよい甘さと爽やかさがあるところもEricの声の魅力。

「Dreamwalkin'」はタイトルどおりのドリーミーなバラードで、アレンジも美しく洗練されている。この「Promises Promises」と「Dreamwalkin'」の2曲は『RIT/2』にも収録されているが、歌詞の異なる別バージョンになっている。

Lee Ritenourのギターはアルバム全体を通してあまり目立たないが、「Marzipan」と「Mãos De Afeto」では、柔らかくて官能的なギターの音色がしっかり表に出ている。特に「Mãos De Afeto」(暖かな手)は、Ivan Linsの原曲のムードを見事にカヴァー。Eric Taggの歌声にはしっとりとしたサウダージ(郷愁)があって、聴き入ってしまう。

Lee Ritenourは、3年後のアルバム『Harlequin』(85年)で、実際にIvan Linsと3曲を共演しているが、そのインスピレーションになったのは、Eric Taggとカヴァーしたこの曲なのかも知れない。

●収録曲
  1. No One There - 3:33
  2. Marianne (I Was Only Joking) - 4:10
  3. Promises Promises - 4:33
  4. Dreamwalkin' - 4:26
  5. In The Way - 3:21
  6. A Bigger Love - 4:30
  7. Crybaby - 4:19
  8. Just Another Dream - 3:54
  9. Marzipan - 4:07
  10. Mãos De Afeto - 4:18

◆プロデュース: Lee Ritenour(g)

◆参加ミュージシャン: David Foster/Don Grusin/Greg Mathieson(k), David Hungate/Nathan East/Abraham Laboriel(b), John Robinson(ds), Alex Acuna(ds, per), Tom Scott(sax), Jerry Hey/Gary Herbig/Chuck Findley(horn), etc

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