Kenny Rankin / Hiding In Myself (1988年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Kenny Rankinの1988年のアルバム『Hiding In Myself』の紹介です。
Kenny Rankinはアメリカのソフト・ロック・シーンで活動したシンガー・ソングライター。60年代の終わりからアルバムを作っており、アコースティックな風合いの瑞々しい楽曲、柔らかいストリングス、ジャズやボサノヴァの要素を取り入れたセンスのいいアレンジ、硬派なヴォーカル・スタイルなどが魅力。特に70年代の諸作は、ソフト・ロックやAOR、フリー・ソウルの人気作になっている。
この『Hiding In Myself』は8枚目のアルバムで、前作の『After the Roses』(80年)から8年のブランクが空いている。80年代に作ったアルバムは、この2枚だけ。
収録曲は12曲で、奥様のAimeとの共作が7曲(1-3, 6, 8-9, 11)と多い。その他、Kenny Rankinの自作が2曲(4, 10)、Marvin Gayeのカヴァーが2曲(5, 7)、Jimmy Webb作が1曲(12)という構成になっている。Rankin夫妻はアルバムのプロデュースにも加わった。
Marvin Gayeの2曲は、72年のアルバム『Trouble Man』と73年のアルバム『Let's Get It On』の各タイトル曲。「Let's Get It On」は、アコースティック・ギターとベース、パーカッションだけで聴かせる穏やかな曲に生まれ変わっており、とても新鮮。Marvin Gayeの有名曲だということに気付かない。
Jimmy Webb作の「She Moves, Eyes Follow」は、Webb自身もアルバム『Twilight of the Renegades』(2005年)でセルフ・カヴァーした美しいナンバーで、苦みのあるメロディはWebbならでは。しっとりとした歌唱、柔らかいストリングスとハープ、David Benoitの静かなピアノなど、すべてがロマンティックな曲。
Lee Sklar(b), Vinnie Colaiuta(ds), Robben Ford(g)という組み合わせで半分の曲を演奏しており、そうした曲ではRobben Fordのギターがブルージーな味わい。また、David Crosbyの参加した「Down The Road」では、David Crosby(47歳)とKenny Rankin(48歳)の中年男二人による枯れた感じのデュエットが何とも渋い。
バック・カヴァーの女性がAimeのようで、裏には "This album is dedicated to Aime." と記されている。Rankin夫妻はDan Siegelの91年のアルバム『Going Home』にも参加しており、Aimeが2曲をDan Siegelと共作し、Kennyも3曲で歌っている。
- ●収録曲
- Lovin' Side - 4:49
- Before The Fall - 5:33
- Delila - 4:05
- Hiding In Myself - 3:48
- Trouble Man - 4:11
- Keep The Candle Burnin' - 4:00
- Let's Get It On - 4:34
- She Knows Me Well - 5:20
- Down The Road - 3:41
- Velez - 5:33
- Muddy Creek - 3:34
- She Moves, Eyes Follow - 3:59
◆プロデュース: Jeffrey Weber, Kenny Rankin(vo, k), Aime Ulrich Rankin
◆参加ミュージシャン: David Crossby(vo), Robben Ford/Steve Lukather(g), David Benoit/Randy Kerber(k), Lee Sklar(b), Vinnie Colaiuta(ds), Geraldo Velez/Chris Trujillo(per), Richard Elliot(sax), John Sebastian(banjo, harmonica), etc
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません