Kenny Rankin / Hiding In Myself (1988年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Kenny Rankinの1988年のアルバム『Hiding In Myself』の紹介です。

Kenny Rankin / Hiding In Myself (1988年) フロント・カヴァー

Kenny Rankinはアメリカのソフト・ロック・シーンで活動したシンガー・ソングライター。60年代の終わりからアルバムを作っており、アコースティックな風合いの瑞々しい楽曲、柔らかいストリングス、ジャズやボサノヴァの要素を取り入れたセンスのいいアレンジ、硬派なヴォーカル・スタイルなどが魅力。特に70年代の諸作は、ソフト・ロックやAOR、フリー・ソウルの人気作になっている。

この『Hiding In Myself』は8枚目のアルバムで、前作の『After the Roses』(80年)から8年のブランクが空いている。80年代に作ったアルバムは、この2枚だけ。

収録曲は12曲で、奥様のAimeとの共作が7曲(1-3, 6, 8-9, 11)と多い。その他、Kenny Rankinの自作が2曲(4, 10)、Marvin Gayeのカヴァーが2曲(5, 7)、Jimmy Webb作が1曲(12)という構成になっている。Rankin夫妻はアルバムのプロデュースにも加わった。

Marvin Gayeの2曲は、72年のアルバム『Trouble Man』と73年のアルバム『Let's Get It On』の各タイトル曲。「Let's Get It On」は、アコースティック・ギターとベース、パーカッションだけで聴かせる穏やかな曲に生まれ変わっており、とても新鮮。Marvin Gayeの有名曲だということに気付かない。

Jimmy Webb作の「She Moves, Eyes Follow」は、Webb自身もアルバム『Twilight of the Renegades』(2005年)でセルフ・カヴァーした美しいナンバーで、苦みのあるメロディはWebbならでは。しっとりとした歌唱、柔らかいストリングスとハープ、David Benoitの静かなピアノなど、すべてがロマンティックな曲。

Lee Sklar(b), Vinnie Colaiuta(ds), Robben Ford(g)という組み合わせで半分の曲を演奏しており、そうした曲ではRobben Fordのギターがブルージーな味わい。また、David Crosbyの参加した「Down The Road」では、David Crosby(47歳)とKenny Rankin(48歳)の中年男二人による枯れた感じのデュエットが何とも渋い。

バック・カヴァーの女性がAimeのようで、裏には "This album is dedicated to Aime." と記されている。Rankin夫妻はDan Siegelの91年のアルバム『Going Home』にも参加しており、Aimeが2曲をDan Siegelと共作し、Kennyも3曲で歌っている。

Kenny Rankin / Hiding In Myself (1988年) バック・カヴァー
●収録曲
  1. Lovin' Side - 4:49
  2. Before The Fall - 5:33
  3. Delila - 4:05
  4. Hiding In Myself - 3:48
  5. Trouble Man - 4:11
  6. Keep The Candle Burnin' - 4:00
  7. Let's Get It On - 4:34
  8. She Knows Me Well - 5:20
  9. Down The Road - 3:41
  10. Velez - 5:33
  11. Muddy Creek - 3:34
  12. She Moves, Eyes Follow - 3:59

◆プロデュース: Jeffrey Weber, Kenny Rankin(vo, k), Aime Ulrich Rankin

◆参加ミュージシャン: David Crossby(vo), Robben Ford/Steve Lukather(g), David Benoit/Randy Kerber(k), Lee Sklar(b), Vinnie Colaiuta(ds), Geraldo Velez/Chris Trujillo(per), Richard Elliot(sax), John Sebastian(banjo, harmonica), etc

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