Lee Ritenour / RIT (1981年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Lee Ritenourの1981年のアルバム『RIT』の紹介です。
Lee RitenourはLA出身の人気ギタリスト。70年代にセッション・ギタリストとして活動をスタートし、1976年に『First Course』でソロ・デビュー。90年代にはBob James(k), Nathan East(b), Harvey Mason(ds)とFourplayを結成して活動するなど、ジャズ/フュージョン・シーンを中心に活躍している。
この『RIT』は10枚目のソロ・アルバム。最初の4曲がヴォーカル曲になっており、そこでは無名の実力派だったEric Taggがヴォーカリストとしてフィーチャーされている。
Eric Taggは、今やAORやフリー・ソウルにおいて人気のあるミュージシャン。アメリカ生まれだが、20歳の時にオランダで音楽活動を始め、最初の2枚のアルバムをオランダで発表している。1作目の『Smilin' Memories』(75年)にはLee Ritenourがギタリストとして参加しており、それが『RIT』でのEric Taggの起用につながった。
Eric Taggはソングライターとしても非凡な才能を発揮している。1曲目の「Mr. Briefcase」では、作詞・作曲をEric Taggが担当。颯爽としたAORナンバーで、Eric Tagg(vo), Lee Ritenour(g), David Hungate(b), Jeff Porcaro(ds), David Foster(k)による演奏もフレッシュ。
続く「(Just) Tell Me Pretty Lies」と「No Sympathy」では、作詞をEric Tagg、作曲をLee Ritenourが担当。「Tell Me Pretty Lies」がファンキーなディスコ調なのに対し、「No Sympathy」はムードのあるスロー・ナンバー。Litenourの柔らかいギターとTaggの温かいヴォーカルが美しく響きあう。
4曲目の「Is It You?」は、AORのお手本のような洒落たナンバー。爽やかでスウィートなこの曲は、作詞をEric TaggとBill Champlin、作曲をLee Ritenourが担当し、アレンジも洗練している。Eric Taggの歌声には天性の湿度と温もりがあって、ソウル・フィーリングのある歌い方も実に気持ちいい。この曲はBillboard Hot 100チャートの15位を記録するヒットになり、Ritenourの知名度を一気に上げた。
残りはポップなギター・インスト曲になっており、「(You Caught Me) Smilin'」を除いてRitenourの作。「Smilin'」は、Sly & The Family Stoneの71年のアルバム『There's A Riot Goin' On / 暴動』からの選曲で、Louis Johnsonのベース、Litenourのギター、そしてBill Champlinのバック・ヴォーカルがファンキーなノリを見せる。
アルバムはBillboard 200チャートの26位になり、Lee Ritenourのアルバムの中では一番売れた。ポップ・オリエンテッドな本作の成功を受け、Ritenourは続編の『RIT/2』を82年に発表。ここでもEric Taggのヴォーカルがフィーチャーされ、84年の『Banded Together』まで、この路線が続く。
なお、Eric Taggの3作目は『Dreamwalkin'』というタイトル。日本のみで発売されたアルバムで、Lee Ritenourがプロデュースを担当している。アルバム・タイトルは、『RIT』5曲目の「Dreamwalk」から取ったようだ。
- ●収録曲
- Mr. Briefcase - 3:20
- (Just) Tell Me Pretty Lies - 4:13
- No Sympathy - 4:43
- Is It You? - 4:25
- Dreamwalk - 1:43
- Countdown (Captain Fingers) - 4:21
- Good Question - 3:41
- (You Caught Me) Smilin' - 4:08
- On The Slow Glide - 4:10
- No Sympathy (Reprise) - 1:56
◆プロデュース: Lee Ritenour(g), Harvey Mason(ds, per), David Foster(k)
◆参加ミュージシャン: Eric Tagg(vo), Don Grusin/Greg Phillinganes/Greg Mathieson/Richard Tee(k), Abraham Laboriel/Louis Johnson/David Hungate/John Pierce(b), Jeff Porcaro/Alex Acuna(ds), Paulinho Da Costa/Steve Forman(per), Jerry Hey(tp), Bill Champlin(bv), etc
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