Billy Joel / Turnstiles (1976年) – アルバム・レビュー

2020年2月8日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Billy Joelの1976年のアルバム『Turnstiles / ニューヨーク物語』の紹介です。

Billy Joel / Turnstiles (1976年) フロント・カヴァー

Billy Joelはアメリカを代表するシンガー・ソングライターの一人。『Turnstiles / ニューヨーク物語』は4作目で、Billy Joel本人が "最も気に入っている" という作品。私も、Billyのアルバムから1枚を選ぶとすれば、これを選ぶかな。

Billy Joelは "自作して歌う" というシンガー・ソングライターの基本姿勢を貫いている。ほとんどのアルバムは "All tracks are written by Billy Joel." であり、カバー曲はなく、共作すらしない。全ての曲を自分一人で書き、自分で歌うという姿勢はとても爽やかで、リスペクトできる。ただし、これが貫かれるのは82年の『The Nylon Curtain』までで、83年の『An Innocent Man』あたりから怪しくなる。なので、『The Nylon Curtain』までが私の愛聴盤であり、中でもこの『ニューヨーク物語』は特別だ。

このアルバムは、邦題の通り、ニューヨークを題材にしている。Billy Joel自身もニューヨーク生まれだが、デビュー当時はロサンゼルスを活動拠点にしていて、デビュー作の『Cold Spring Harbor』(71年)から前作の『Streetlife Serenade』(74年)まではロスで録音されている。本作は、久しぶりに生まれ故郷のニューヨークに戻って制作されたアルバムであり、Billy Joelが初めてセルフ・プロデュースした作品になる。

"turnstile" とは、駅や劇場の入り口にある回転式の改札口のこと。ジャケットには、地下鉄のturnstileにアルバムの登場人物が描かれている。ヘッドフォンで音楽を楽しむ女性(「All You Wanna Do Is Dance」)、遊び興じる裕福な男女(「I've Loved These Days」)、テキストを両手に抱えた真面目な学生(「James」)などだ。

「Say Goodbye To Hollywood」はロスを離れるときの思いを歌った曲。イントロはThe Ronettesの「Be My Baby」(63年, 米2位)にインスパイアされたもので、とてもキャッチー。この曲はファースト・シングルになったがヒットせず、後のライヴ・アルバム『Songs in the Attic』(81年)に収録されたライヴ・バージョンがヒットして、全米17位を記録した。

「Summer, Highland Falls」は清楚で美しいピアノのイントロが印象的な曲。Highland Fallsはニューヨーク州にある町。美しいメロディとは裏腹に、歌詞の内容はとても思索的だ。この曲も『Songs in the Attic』にライヴ・バージョンが収録されており、オリジナルに忠実にステージで再現しているところに感動する。

「New York State Of Mind / ニューヨークの想い」はこのアルバムのハイライト。後に Barbra Streisandの『Superman』(77年)を始め、数多くのアーティストにカバーされているが、少しひしゃげた声で歌ってみせるBillyのバージョンが一番いい。Billy Joelはこの曲をRay Charlesに歌って欲しかったようだ。

もう一曲の、私にとってのハイライトが「James」。幼なじみの真面目な青年 "James" を歌った曲で、自分とは違う人生を歩む彼に「君は自分の人生を好きかい?」と問いかける。優しいメロディがとても切ない。柔らかい演奏は、Russell Javors(g), Doug Stegmeyer(b), Liberty DeVitto(ds), Richie Cannata(sax)などで、この後にBilly Joel Bandとしてレギュラーになる。

Stranger』より前の作品から選曲した名ライヴ・アルバム『Songs in the Attic』には、「I've Loved These Days」と「Miami 2017」も選ばれている。「Miami 2017」は近未来のニューヨークで起こる大破壊について歌ったSFソングだが、その2017年も過ぎてしまった。バンドの演奏と観客の熱狂が一体になるライヴ・バージョンは、鳥肌ものの格好良さだ。

●収録曲
  1. Say Goodbye To Hollywood / さよならハリウッド - 4:36
  2. Summer, Highland Falls / 夏、ハイランドフォールズにて - 3:15
  3. All You Wanna Do Is Dance / 踊りたい - 3:40
  4. New York State Of Mind / ニューヨークの想い - 5:58
  5. James - 3:53
  6. Prelude/Angry Young Man / 怒れる若者 - 5:17
  7. I've Loved These Days / 楽しかった日々 - 4:31
  8. Miami 2017 - 5:12

◆プロデュース: Billy Joel(vo, k)

◆参加ミュージシャン: Howie Emerson/Russell Javors/James Smith(g), Doug Stegmeyer(b), Liberty DeVitto(ds), Mingo Lewis(per), Richie Cannata(sax), Ken Ascher(orch ar)

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