Billy Joel / Stranger (1977年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Billy Joelの1977年のアルバム『Stranger』の紹介です。

Billy Joel / Stranger (1977年) フロント・カヴァー

ニューヨーク生まれのBilly Joelはアメリカを代表するシンガー・ソングライター。1971年のソロ・デビュー作『Cold Spring Harbor / ピアノの詩人』以来、カヴァー曲も共作曲もない生粋のシンガー・ソングライター路線を歩み、5作目となる本作『The Stranger』で世界的な成功を掴んだ。

この時、28歳。16歳からミュージシャンをしているので、まだ若いとはいえ10年以上のキャリアがある。「Movin' Out」や「Vienna」では苦い人生訓を歌い、「Just The Way You Are / 素顔のままで」や「She's Always A Woman」では最高にロマンティックな愛情表現をする。酸いも甘いも噛み分ける28歳だ。

76年の前作『Turnstiles / ニューヨーク物語』と比べてサウンドのクオリティが向上しているのは、プロデューサーであるPhil Ramoneの手腕。Phil Ramoneは86年の『The Bridge』まで、6枚のスタジオ・アルバムと1枚のライヴ・アルバムをプロデュースし、Billyの黄金期を支えた。

本作からは「素顔のままで」がBillboard Hot 100チャートの3位をマークしたほか、「Movin' Out」(17位)、「Only The Good Die Young」(24位)、「She's Always a Woman」(17位)がヒット。アルバムはBillboard 200チャートの2位を記録し、初のTop 10入りを果たした。また、78年のグラミー賞では「素顔のままで」が "Record of the Year" と "Song of the Year" を受賞。「Movin' Out」は後にブロードウェイ・ミュージカルになり、2002年から2006年まで上演されている。

寂しげな口笛が印象的な「The Stranger」は内なる他人(見知らぬ自分)を歌った曲。鋭く優しい人間観察眼をもつBillyがそれを自分の内面に向けることで生まれた名曲だ。Billboardではチャート・インしていないが、日本で大ヒットし、オリコン・チャートでは2位になっている。

私は「素顔のままで」のサックス・ソロが大好き。この曲の歌詞のようにロマンティックで、空に舞い上るように自由。BillyのバンドにはRichie Cannataという素晴らしいサックス奏者がいるが、この曲ではジャズ・サックスの名手Phil Woodsがソロを担当した。Woodsの生涯の名演の一つとされている。

Phil Woodsは2015年9月29日に83歳で他界。このアルバムがアメリカでリリースされたのも9月29日なので、偶然とはいえ不思議な巡り合わせを感じる。

●収録曲
  1. Movin' Out (Anthony's Song) - 3:30
  2. The Stranger - 5:10
  3. Just The Way You Are / 素顔のままで - 4:52
  4. Scenes From An Italian Restaurant / イタリアン・レストランにて - 7:37
  5. Vienna / ウィーン - 3:34
  6. Only The Good Die Young / 若死にするのは善人だけ - 3:55
  7. She's Always A Woman - 3:21
  8. Get It Right The First Time / 最初が肝心 - 3:57
  9. Everybody Has A Dream - 6:38

◆プロデュース: Phil Ramone

◆参加ミュージシャン: Billy Joel(vo, k), Steve Khan/Hiram Bullock/Steve Burgh(g), Hugh McCracken(ag), Richard Tee(k), Doug Stegmeyer(b), Liberty DeVitto(ds), Ralph MacDonald(per), Richie Cannata(sax, flute, clarinet, k), Phil Woods(sax), Phoebe Snow/Patti Austin/Gwen Guthrie(bv), Patrick Williams(orch), etc

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