Full Moon / Full Moon (1972年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Full Moonの1972年のアルバム『Full Moon』の紹介です。

Full Moonは1970年にニューヨークで結成された5人組。Paul Butterfield Blues Bandに在籍したFred Beckmeier(b), Buzz Feiten(g), Brother Gene Dinwiddie(sax)に、セッション・キーボード奏者のNeil Larsenとセッション・ドラマーのPhillip Wilsonが加わる形で結成された。このメンバーによるFull Moonは、"オリジナルFull Moon" と呼ばれていて、本作はその唯一のアルバム。
後に、Neil LarsenとBuzz FeitenはL.A.でLarsen-Feiten Bandを結成し、80年にファースト・アルバムの『Larsen-Feiten Band』を、82年に『Full Moon』というタイトルの2作目を発表する。この2作目は、名義も "Full Moon feat. Neil Larsen & Buzz Feiten" なので、まるでオリジナルFull Moonの2作目みたいに思えるが、残り3人のメンバーが異なることから、Larsen-Feiten Bandのアルバムと考えた方がいい。


さて、本作の収録曲は7曲で、インスト曲が2曲(3, 5)、残りはヴォーカル曲という構成。ブルースやロックを基調にしながら、ジャズやソウル、ポップといった要素を取り入れており、熟した味わいの曲が多い。

ヴォーカル曲のうち、ブルージーなセッション・ナンバーの「The Heavy Scuffle's On」は全員による共作。肩肘張らない感じの演奏がとてもクール。続く「To Know」は、ソウル・フィーリング溢れるポップなナンバーで、Buzz Feitenが書き、Phillip Wilsonが歌っている。スピリチュアルなムードで始まる爽やかなソウル・ナンバーの「Need Your Love」も、Feitenの作。リード・ヴォーカルもFeitenが担当した。
南部的な香りのするブルース・ロックの「Take This Winter Out Of My Mind」はBrother Gene Dinwiddieの作&リード・ヴォーカル。ミステリアスな即興演奏に始まり、ブルージーな曲調へと展開していくラストの「Selfish People」はWilsonとFeitenの共作で、リード・ヴォーカルをWilsonが担当している。
インストの2曲はNeil Larsenの作。どちらも軽快なナンバーだが、リラックスした雰囲気の「Malibu」とジャジーで洒落た感じの「Midnight Pass」ではテイストが異なっている。
本作は、2000年にドリームズヴィル・レコードから世界初CD化され、その際にボーナス・トラックの「Three Step Dance」が追加された。2016年にはTower Recordsから最新リマスタリングによるCDとレコードも再発され、CDにはボーナス・トラックがもう1曲追加されている。
なお、2002年にはBuzz Feiten & The New Full Moon名義の『フル・ムーン・セカンド』が発表されているが、こちらにはNeil Larsenは参加していない。
- ●収録曲
- The Heavy Scuffle's On
- To Know
- Malibu
- Take This Winter Out Of My Mind
- Midnight Pass
- Need Your Love
- Selfish People
- Three Step Dance (ボーナス・トラック)
- Jam (ボーナス・トラック)
◆プロデュース: Alan Douglas
◆参加ミュージシャン: Fred Beckmeier(b), Phillip Wilson(ds, per, vo), Neil Larsen(k), Buzz Feiten(g, vo), Brother Gene Dinwiddie(sax, flute, mandolin, vo)
with Randy Brecker(tp), Airto Moreira/Ray Barretto(per), Dave Holland(b), Robin Clark/Tasha Thomas(bv), etc
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