Finis Henderson / Finis (真夏の蜃気楼) (1983年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Finis Hendersonの1983年のアルバム『Finis / 真夏の蜃気楼』の紹介です。

Finis Henderson / Finis (真夏の蜃気楼) (1983年) フロント・カヴァー

Finis Hendersonはアメリカのショー・ビジネス界を中心に活動するステージ・シンガー~エンターテイナー。父親がSammy Davis Jr.のもとでシンガーやダンサーとして働いていた縁で、自分もSammy Davis Jr.に憧れてこの世界に入ったらしい。その後、Stevie Wonderのバック・アップを得てモータウン・レコードと契約を結び、1枚だけ残した傑作ソロ・アルバムがこの『Finis / 真夏の蜃気楼』だ。

元EW&FのギタリストのAl McKayがプロデュースを担当し、曲作りにおいても4曲(2, 4, 7, 10)を手がけている。NiteflyteのSandy Torano(5)やStevie Wonder(8)なども楽曲を提供し、参加ミュージシャンにはTOTOのメンバーやPagesを始めとする当時の実力派が勢ぞろいしている。

日本盤には "真夏の蜃気楼" という素敵なタイトルがつき、人影のないビーチの向こうにエメラルド・グリーンの海が広がる美しい差し込みジャケットが使われた。曲名には「真夏」「海」「地平線」「夜」「恋」というフレーズがちりばめられ、夏のAOR/ブラック・コンテンポラリーの定盤になっている。

1曲目の「Skip To My Lou / サマー・スキップ」は、ビターなメロディを爽やかなビートに乗せた素敵なダンス・チューン。ファルセットを巧みに織り交ぜるFinisの歌声もしなやかでセクシー。とてもキャッチ-な曲なのに、アメリカではR&Bチャートの48位どまりということが意外。

アメリカでは「Lovers」もシングル・カットされている。シャッフルするビート(Jeff Porcaroかな?)が心地よく、愁いのある美しいメロディと日本盤のジャケットの相性もバッチリで、リピートで聴きたくなる。

「Blame It On The Night / 夜を彩る地平線」は、Sandy Toranoらしいエレガントなダンス・チューン。サンバのリズムを思わせるパーカッションのイントロに続く「Call Me / 海を翔ける恋」もクールなダンス・ナンバーで、こちらはFinisとBill Wolferの共作。原曲は、Bill Wolferの82年のアルバム『Wolf / デジタルの夜』に収録されており、そこでもFinisが歌っている。

バラードの「Crush on You」はStevie Wonderの提供曲で、Stevieらしいふくよかなメロディが魅力。「I'd Rather Be Gone / 色褪せた想い」は、Playerの82年のアルバム『Spies Of Life』の収録曲のカバー。「Baby Come Back」の作者でもあるJ.C. Crowley等の作で、ミディアム・テンポのAORナンバーになっている。

83年といえば、前年末に発売されたMichael Jacksonの『Thriller』が売れまくった年。そのフロント・カヴァーのMichaelのポーズからヒントを得たのか、オリジナルのジャケットでは、Finis Hendersonも横たわってポーズをとっている。

●収録曲
  1. Skip to My Lou / サマー・スキップ - 5:01
  2. Making Love - 3:46
  3. Lovers - 4:46
  4. You Owe It All to Love / 真夏のイマージュ - 3:29
  5. Blame It on the Night / 夜を彩る地平線 - 3:41
  6. a.Percussion Intro - 1:40
  7. b.Call Me / 海を翔ける恋 - 4:44
  8. Viña del Mar / 海辺の葡萄園 - 0:48
  9. Crush on You - 4:03
  10. I'd Rather Be Gone / 色褪せた想い - 3:40
  11. School Girl - 5:20

◆プロデュース: Al McKay(g, ar)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Michael Landau/Paul Jackson Jr.(g), Erich Bulling(k, ar), Randy Kerber/Tom Keane/Michael Boddicker(k), Abraham Laboriel/Neil Stubenhaus/Nathan East(b), Jeff Porcaro/Carlos Vega/John Robinson(ds), Philip Bailey/Ralph Johnson/Paulinho Da Costa(per), Jerry Hey(tp), Bill Champlin/Richard Page/Steve George/Garry Glenn(bv), etc

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