Terence Boylan / Terence Boylan (1977年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Terence Boylanの1977年のアルバム『Terence Boylan』の紹介です。

Terence Boylan / Terence Boylan (1977年) フロント・カヴァー

Terence BoylanはNY生まれのシンガー・ソングライター。大学時代のクラス・メイトには、後にSteely Danを結成するDonald FagenとWalter Beckerがいて、Boylanのファースト・アルバム『Alias Boona』(69年)にも参加している。アルバムの内容はBob Dylan風のフォーク・ロックだが、FagenとBeckerの二人にとって最初の録音となった作品らしい。

その後、BoylanはLAに移って音楽活動を続け、Asylum Recordsとの契約を獲得する。そして発表されたのが、8年ぶりとなるセカンド・アルバムの『Terence Boylan』だ。前作に続くセルフ・プロデュースのアルバムで、全曲をBoylanが書いている。

本作は、爽やかなウェスト・コースト・サウンドに包まれた美しいアルバム。1曲目の「Don't Hang Up Those Dancing Shoes」の大らかなメロディと瑞々しいサウンドを聴くと、心が洗われる思いがする。

この曲のミュージシャンのクレジットが眩しい。ドラムスはDerek & The DominoesのJim Gordon。ベースはChuck Rainey。ピアノはDonald Fagen。ギターはDean ParksとBoylan。ローズ・ピアノとパーカッションはVictor Feldman。ヴォーカル・ハーモニーはTimothy B. Schmit。何とも素敵な顔ぶれ。

続く「Shake It」も、風が穏やかにそよぐような気持ちのいい曲。オルガンを弾いているのはAl Kooperだ。この曲は、Ian Matthewsの78年のアルバム『Stealin' Home』でカバーされ、シングル・チャートの13位を記録するヒットになっている。そのアルバムでは、1曲目の「Don't Hang Up Those Dancing Shoes」もカバーされた。

ファースト・アルバムに続いてDonald Fagenが参加し、2曲(1, 5)でピアノを弾いている。確かに「Shame」のサウンドや鍵盤の音色にはSteely Dan風のクールな味わいがある。ちなみに、TOTOのSteve Lukatherも2曲(4, 6)でギターを弾いているが、これがLukatherの初レコーディングだとか。

8曲目の「Rain King」は柔らかく降る雨のような滋養と癒しのある曲。ローズ・ピアノ(Feldman)の優しい音色とテナー・サックス(John Klemmer)の凛々しい響きが織りなすサウンドは詩的でロマンティック。このアルバムの邦題は『リリシズム』だが、その意味するところの "叙情詩的な趣や味わい" にぴったりな曲だ。

Terence Boylanが翌78年にプロデュースしたDane Donohueのアルバム『Dane Donohue』も、本作の雰囲気とよく似ており、おすすめ。Donohueの歌声まで、Boylanに似ている。

兄のJohn Boylanはレコード・プロデューサーとして活躍した。前の年には、Bostonの傑作アルバム『幻想飛行』(76年)をTom Scholzと一緒にプロデュースし、大成功を収めている。

●収録曲
  1. Don't Hang Up Those Dancing Shoes - 3:30
  2. Shake It - 3:48
  3. Sundown Of Fools - 2:43
  4. The War Was Over - 4:21
  5. Shame - 4:40
  6. Hey Papa - 4:00
  7. Where Are You Hiding - 4:09
  8. Rain King - 3:38
  9. Trains - 5:20

◆プロデュース: Terence Boylan(vo, g, ds)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Dean Parks(g), Donald Fagen/Al Kooper/David Paich/Jai Winding(k), Victor Feldman(k, per), Chuck Rainey/Wilton Felder/Bob Glaub/Lee Sklar(b), Jim Gordon/Jeff Porcaro/Russ Kunkel(ds), John Klemmer(sax), Don Henley/Timothy B.Schmit/Tom Kelly(bv), etc

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