Richard Marx / Richard Marx (1987年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Richard Marxの1987年のアルバム『Richard Marx』の紹介です。

Richard Marx / Richard Marx (1987年) フロント・カヴァー

Richard Marxはシカゴ生まれのシンガー・ソングライター。父(Dick Marx)はジャズ・ピアニスト、母(Ruth Marx)は歌手という家庭に生まれ、子供の頃にはCMのジングルを歌ったりしていたようだが、本格的に音楽活動をスタートしたのは19歳になる年の1982年。その才能に気づいたLionel Richieに誘われてロサンゼルスに移り、バック・ヴォーカリストとしてRichieのアルバム『Lionel Richie』に参加している。

その後も、David Foster, Kenny Rogers, Chicago, Madonnaなどの大物アーティストのアルバムにバック・ヴォーカルやソングライターとして次々と参加し、87年にこの『Richard Marx』でソロ・アーティストとしてデビューした。

このアルバムからは6曲がシングル・カットされ、バラードの「Hold On To The Nights」が全米チャートの1位を獲得した他、「Endless Summer Nights」が2位、「Don't Mean Nothing」と「Should've Known Better」が3位になり、4曲のトップ10ヒットが生まれている。アルバムもチャートの8位を記録し、Richardは24歳にして大きな成功を手にした。

全曲がオリジナルで、その半分は共作。共作者はBruce Gaitsch(2), Fee Waybill(4, 7), Jim Lang(8), Michael Omartian(9)という顔ぶれだ。親しみやすくてキャッチーなメロディ。ほどよくビターでほどよく甘い歌声。ヒット・ポテンシャルの高い曲を書き、自分の歌で確実にヒットさせる能力に恵まれている。

それでは、80年代らしい至福の洋楽ヒットを4曲紹介。

まずは、1曲目の「Should've Known Better」。爽やかなロック・ナンバーで、ほろ苦いメロディとMichael Landauによる乾いたギター・サウンドが気持ちいい。キーボードはTom Keane。バック・ヴォーカルをTimothy B. SchmidtとFee Waybillが担当している。

2曲目の「Don't Mean Nothing」はギタリストのBruce Gaitschとの共作。ブルージーなロック・ナンバーで、Bruce GaitschとJoe Walshがリズム・ギターを、Joe Walshがギター・ソロを弾いている。ドラムスはJohn Keaneが担当。ファースト・シングルはこの曲で、88年のグラミー賞では "Best Rock Vocal Performance - Solo" にノミネートされた。

3曲目の「Endless Summer Nights」は夏向けのスウィートなポップなナンバー。キーボードをTom Keane、ドラムスを弟のJohn Keaneが担当。この曲は4枚目のシングルだ。スムース・ジャズのサックス奏者、Dave Kozが90年のデビュー・アルバム『Dave Koz』でこの曲をカヴァーしているが、原曲で演奏しているのはDave Boruffというサックス奏者。

そして、しっとりとしたバラードの「Hold On To The Nights」。5枚目のシングルでついに全米1位をとった。Richard Marxはソングライターとして優れているだけでなく、シンガーとしての力量があり、ロック系もバラード系も器用に歌いこなす。中後半の盛り上がりでは、ギター・ソロをLandau、ドラムスをTris Imboden(後にChicagoに加入)が担当した。

Richard Marxは、この後も90年代の前半にかけてトップ10ヒットを連発。89年には女優のCynthia Rhodesと結婚し、2014年までの結婚生活で3人の子供を授かっている。

Cynthiaはダンサー役が多く、『Flashdance』(83年), 『Staying Alive』(83年), 『Dirty Dancing』(87年)などに出演している。ミュージック・ビデオにも出ていて、本作では『Don't Mean Nothing』に出演。TOTOの「Rosanna」(84年)のMVでは、TOTOのメンバーを誘惑するダンサー役を演じている。

●収録曲
  1. Should've Known Better - 4:10
  2. Don't Mean Nothing - 4:41
  3. Endless Summer Nights - 4:30
  4. Lonely Heart - 3:57
  5. Hold On To The Nights - 5:16
  6. Have Mercy - 4:32
  7. Remember Manhattan - 4:17
  8. The Flame Of Love - 3:37
  9. Rhythm Of Life - 4:45
  10. Heaven Only Knows - 5:39

◆プロデュース: Richard Marx(vo, k, ar), David Cole, Humberto Gatica

◆参加ミュージシャン: Joe Walsh/Bruce Gaitsch/Michael Landau(g), Tom Keane(k, ar), Michael Omartian(k, ar), Rhett Lawrence(k, prog), John Pierce/Nathan East/Patrick O'Hearn/Joe Chemay(b), John Keane/Prairie Prince/Tris Imborden(ds), Paulinho Da Costa(per), David Boruff(sax), Fee Waybill/Timothy B. Schmidt/Randy Meisner/Karyn White/Cynthia Rhodes(bv), etc

スポンサーリンク