Paul Anka / Walk A Fine Line (1983年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Paul Ankaの1983年のアルバム『Walk A Fine Line / マイ・ソングス~朝のとばりの中で』の紹介です。
Paul Ankaはカナダ出身のシンガー・ソングライター。「Diana」(57年, 米2位), 「Lonely Boy」(59年, 米1位), 「Put Your Head On My Shoulder」(59年, 米2位), 「(You're) Having My Baby」(74年, 米1位)などのヒット曲で知られ、Frank Sinatraの代表曲である「My Way」の英詩を担当したことでも有名だ。
Paul Ankaには50年代後半から60年代前半にかけてヒットを量産したクラブ歌手的なイメージがあるが、その後も途切れることなくアルバム制作を続け、70年代中盤には再びチャートに復帰している。その頃から同じカナダ出身のDavid Fosterと親交を深め、Fosterの全面的な協力を得て制作したのが、この『Walk A Fine Line』だ。
Paul Ankaはラストの「Golden Boy」を除く全曲を書いている。David Fosterはそのうちの5曲を共作。また、Michael McDonaldが3曲の共作者になっている。アレンジにおいても、David Fosterが7曲(1-3, 6-9)を、Michael McDonaldが2曲(4, 5)を担当し、Anka - Foster - McDonaldのタッグが生んだ素晴らしいAOR作品になっている。
ここから、おすすめのナンバーを4曲紹介。
まずは、Anka - Foster - McDonaldの3人が共作した「Second Chance」。アルバムの成り立ちを象徴するような一曲で、颯爽とした曲調とMichael McDonaldの爽やかなバック・ヴォーカルが気持ちいい。この曲はセカンド・シングルになり、米Adult Contemporary (AC)チャートの14位をマークした。
「Hold Me 'Til The Mornin' Comes / 朝のとばりの中で」はDavid Fosterと共作した美しいバラード。バック・ヴォーカルに参加したPeter Ceteraの存在感があり過ぎて、どちらがメイン・ヴォーカルか分からないほど。Billboard Hot 100チャートの40位、ACチャートでは2位を記録し、アルバムの邦題にはこの曲が採用された。
Michael McDonaldと共作した「No Way Out」はとびきりメロウな曲。Paul Ankaの歌声は哀愁をたっぷり含んでいて、Ernie Wattsのサックスと相まってとても切ない。曲の後半に流れる清涼感のある美声は、Michael McDonaldの妹のMaureen。Maureenは、兄の前年のヒット曲「I Keep Forgettin'」でもバック・ヴォーカルを担当している。
センチメンタルなバラード「This Is The First Time」はPeter McCannとの共作。Peter McCannは、Jennifer Warnesの「星影の散歩道」(76年, 米6位)やWhitney Houstonの「やさしくマイ・ハート」(85年)を書いたメロディ・メイカーだ。Jay Graydonのギター・ソロもいいが、何よりもPagesのバック・コーラスの美しさに聴き入ってしまう。
他にも、Kenny Logginsがバック・ヴォーカルに参加した「Darlin' Darlin'」(Anka - Foster - Graydonの共作)や、Michael McDonald作法の洒落たリズムが心地よい「Walk A Fine Line」(McDonaldとの共作)、Steve Lukatherの野性的なギターと聖歌隊のようなPagesのコーラスを味わえる「Take Me In Your Arms」(Fosterとの共作)など、優れた曲を揃えている。
CDは長らく入手困難だったが、ソニーの「AOR CITY 1000」シリーズから2016年に再発。2017年のシリーズでは78年の『愛の旋律(しらべ)』が世界初CD化。79年の『Headlines』も再発されている。
- ●収録曲
- Second Chance - 3:54
- Hold Me 'Til The Mornin' Comes / 朝のとばりの中で - 4:30
- Darlin', Darlin' - 4:44
- No Way Out - 4:26
- Walk A Fine Line - 4:48
- Take Me In Your Arms - 3:31
- This Is The First Time - 4:22
- Gimme The Word - 4:00
- Golden Boy - 4:15
◆プロデュース: Denny Diante(ar)
◆参加ミュージシャン: Karla DeVito(vo), Jay Graydon(g, ar), Steve Lukather/Marty Walsh(g), David Foster/Bill Cuomo(k, ar), Michael McDonald(k, bv, ar), Michael Colombier(k), Nathan East/Lee Sklar(b), Jeff Porcaro/John Robinson/Mike Baird/Vinnie Colaiuta(ds), Paulinho Da Costa(per), Ernie Watts(sax), Peter Cetera/Kenny Loggins/Richard Page/Steve George/Steve Kipner(bv), etc
追記(2024/9/29)
「No Way Out」は、1987年のアメリカ映画『No Way Out / 追いつめられて』(ケビン・コスナー主演)のタイトルにもなった。そのサントラ盤『No Way Out: Original Motion Picture Soundtrack』には、Paul Ankaがソプラノ歌手のJulia Migenesと歌う別バージョンの「No Way Out」が収録されている。
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