Al Jarreau / Breakin’ Away (1981年) – アルバム・レビュー

2020年2月9日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Al Jarreauの1981年のアルバム『Breakin' Away』の紹介です。

Al Jarreau / Breakin' Away (1981年) フロント・カヴァー

Al Jarreauは、卓越したヴォーカル・テクニックを持つアメリカのジャズ・シンガー。ソフトで軽やかな歌声と、高度なスキャットやヴォーカル・パーカッションを自在に繰り出すスタイルで人気を集め、ジャズとポップの両方のジャンルをまたいで活躍した。

この『Breakin' Away』は5枚目のスタジオ・アルバム。80年代に入ってから発表された『This Time』(80年), 本作(81年), 『Jarreau』(83年), 『High Crime』(84年)の4枚はJay Graydonのプロデュース作品であり、Graydonの緻密な仕事によって美しく磨かれたサウンドになっている。

本作の収録曲は9曲で、オリジナルが7曲(1-7)、カヴァーが2曲(8, 9)という構成。オリジナル曲については、Tom Canning - Jay Graydon - Al Jarreauの共作が5曲(1, 4, 5-7)、Pagesの書いたナンバーが1曲(2)、Roger Murrah - Keith Stegalの共作が1曲(3)となっている。

カヴァー曲はいずれもジャズ・スタンダード。「Blue Rondo à la Turk」はDave Brubeckの作品で、Dave Brubeck Quartetの59年のアルバム『Time Out』の収録曲。もう1曲の「Teach Me Tonight」はSammy Cahn - Gene De Paulの共作で、多くのシンガーに歌われたポピュラー・ソングだ。こちらは、今年(2020年)2月に発売されるJames Taylorの最新作『American Standard』にも収録されている。

ここから、おすすめの4曲を紹介。

1曲目の「Closer to Your Love」は、軽快に刻まれるビートに乗ってAl Jarreauが滑らかに歌う気持ちのいいナンバー。堅実な演奏のバック・ミュージシャンは、Steve Gadd(ds), Abraham Laboriel(b), Jay Graydon(g), Tom Canning(k)という顔ぶれで、Tom Scottのホーンもご機嫌だ。

「We're in This Love Together / 奏でる愛」は本作からのファースト・シングル。Billboard Hot 100チャートの15位を記録し、Al Jarreauのキャリア最大のヒットになった。ポップなメロディと軽やかに弾むリズムは後のヒット曲の「Mornin'」を思わせる。作者の一人のKeith Stegallによると、この曲はもともとLarsen-Feiten Bandの80年のアルバム『Larsen-Feiten Band』のために書かれたものらしい。

タイトル曲の「Breakin' Away」は、Jeff Porcaroらしい繊細なシャッフルを聴けるナンバー。バック・ミュージシャンは、Jeff Porcaro(ds), Neil Stubenhaus(b), Jay Graydon(g), David Foster(k), Jerry Hey(horns)というお馴染みの顔ぶれ。Jeff Porcaroはこの1曲のみの参加で、他の曲ではSteve Gaddがドラムスを担当している。

他にも、Pagesの二人とAl Jarreauのハーモニーが美しい「My Old Friend / 心の友へ」や、甘美なバラードの「Our Love」など、AORタイプの洗練されたナンバーを揃えている。

また、「Easy」「Roof Garden」「Blue Rondo à la Turk」の3曲では、Al Jarreauの得意とするスキャットやヴォーカル・パーカッションが披露される。特に「Blue Rondo à la Turk」での見事なテクニックは、82年のグラミー賞において「Best Jazz Vocal Performance, Male」を受賞したほど。アルバム自体も「Best Pop Vocal Performance, Male」に輝いた。

Jay Graydonのプロデュース作品に外れはないが、このアルバムはその中でも最高レベル。プロデューサーとアーティスト、そして参加ミュージシャンの技量が相乗効果を生んだ快作になっている。

●収録曲
  1. Closer to Your Love - 3:54
  2. My Old Friend / 心の友へ - 4:26
  3. We're in This Love Together / 奏でる愛 - 3:44
  4. Easy / 愛は世界をめぐり - 5:23
  5. Our Love / 明日に漂う - 3:53
  6. Breakin' Away - 4:12
  7. Roof Garden - 6:19
  8. (Round, Round, Round) Blue Rondo à la Turk / トルコ風ブルー・ロンド - 4:44
  9. Teach Me Tonight / 今夜教えて - 4:13

◆プロデュース: Jay Graydon(g, sy)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Dean Parks(g), David Foster/Michael Omartian/George Duke/Tom Canning/Larry Williams/(k), Michael Boddicker/Peter Robinson(sy), Abraham Laboriel/Neil Stubenhaus(b), Steve Gadd/Jeff Porcaro(ds), Tom Scott/Lon Price(sax), Jerry Hey(tp), Richard Page/Steve George/Bill Champlin(bv), etc

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