Tom Snow / Hungry Nights (1982年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Tom Snowの1982年のアルバム『Hungry Nights』の紹介です。
Tom Snowは数々のアーティストにヒット曲を提供してきたアメリカの職人ソングライター。ポップで上品で、綺麗なメロディを書く人で、代表的なところでは次のようなヒット曲がある。
- The Pointer Sisters:「He's So Shy / 内気なボーイ」(80年, 米3位)
- Olivia Newton-John:「Make a Move on Me」(82年, 米5位)
- Melissa Manchester:「You Should Hear How She Talks About You / 気になるふたり」(82年, 米5位)
- Deniece Williams:「Let's Hear It for the Boy」(84年, 米1位)
- Cher & Peter Cetera:「After All」(89年, 米6位)
- Linda Ronstadt feat. Aaron Neville:「Don't Know Much」(89年, 米2位)
ソロ・アルバムは1975年と76年、82年に1枚ずつを出しており、この『Hungry Nights』は3作目。ギタリストのDean Parksがプロデュースを手がけた珍しいアルバムだ。
「Somewhere Down The Road」と「Don't Call It Love」の2曲以外は全て、このアルバムのための書き下ろし。ほとんどが共作になっており、それぞれの曲の作者は次のとおり。優れたソングライターだけに、良質なメロディの曲が揃っている。
- Tom Snow / Cynthia Weil:4曲(1, 2, 5, 6)
- Tom Snow / Eric Kaz:2曲(3, 4)
- Tom Snow / Dean Pitchford:1曲(7)
- Tom Snow / Richard Wolf:1曲(8)
- Tom Snow / John Farrar:1曲(9)
- Tom Snow自作:1曲(10)
ここから、おすすめの3曲を紹介。
まずは、「Somewhere Down The Road / きっと、どこかで」。"今は離れても、この道のどこかで僕らはきっとまた出会う / それがいつになるかは大した問題じゃないんだ" と歌う清々しいバラードで、Tom Snowの作るメロディの美しさが際立つ曲。ビブラートを細やかに効かせた丁寧な歌声にも感動する。この曲は、Barry Manilowの81年のアルバム『If I Should Love Again』に収録され、Barry ManilowのシングルはBillboard Hot 100チャートの21位をマークした。
おすすめ2曲目は「Don't Call It Love」。Kim Carnesの81年のアルバム『Mistaken Identity』に提供したポップなナンバー。グラミーを受賞した「ベティ・デイヴィスの瞳」を収めたアルバムだ。Tom SnowとDean Pitchfordのコンビでは、Deniece Williamsの「Let's Hear It for the Boy」(84年)とCher & Peter Ceteraの「After All」(89年)のヒットも生んでいる。
最後は「I Almost Let You Go」。AORタイプの洗練されたナンバーで、情感のあるメロディが印象的。透き通ったバック・ヴォーカルはRichard Pageと思われる。共作者のRichard Wolfは、Sheena EastonのアルバムやMadonna主演の87年の映画『Who's That Girl』などにも曲を提供している。
オリジナルのジャケットでは、Tom Snowが葉巻をくわえてポーズを決める渋い写真が使われているが、日本盤では真っ赤な夕焼けをデザインしたものに差し替えられた。2013年に再発された紙ジャケ仕様のCDではオリジナルのジャケットが、ソニーの「AOR CITY 1000」シリーズから2016年に再発されたCDでは日本盤のジャケットが使われている。
- ●収録曲
- Hungry Nights - 3:38
- Straight For The Heart - 3:21
- Love Hangs By A Thread / 愛はひとすじの糸に似て - 4:11
- Our Song / アワ・ソング・ワンスモア - 3:37
- Somewhere Down The Road / きっと、どこかで - 3:48
- Soon - 3:57
- Don't Call It Love - 3:01
- I Almost Let You Go / ふりむけば愛 - 3:49
- I Think I Know Too Much / アイ・ノウ・トゥー・マッチ - 4:00
- Time Of Our Lives - 3:36
◆プロデュース: Dean Parks(g, b, sy, sax, strings ar)
◆参加ミュージシャン: Tom Snow(vo, k, strings ar), Lee Sklar/Abraham LaBoriel/Hadley Hockensmith(b), Jeff Porcaro/Ed Greene/Tris Imboden/Mike Baird(ds), Lenny Castro(per), Richard Page/Tom Kelly(bv), etc
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