Rush / Counterparts (1993年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Rushの1993年のアルバム『Counterparts』の紹介です。

Rushはカナダを代表するロック・バンド。1968年にバンドを結成し、何回かのメンバー変更を経て、1974年にアルバム『Rush』でデビューをしている。その直後に最後のメンバー変更をし、そこからはGeddy Lee(b, vo, sy), Neil Peart(ds, per), Alex Lifeson(g)の3人で、2018年の解散まで息の長い活動をした。
発表したアルバムは、スタジオ・アルバムだけで19作品。70年代のアルバムは、Led Zeppelinのようなハード・ロック・スタイルからプログレッシヴな大作主義へと作風を変えており、いわゆる通好みの内容。80年代に入るとメロディアスでポップな作風になり、81年のヒット作『Permanent Waves』(全米4位)以降は、発表するアルバムのほとんどが全米チャートのトップ10に入っている。
メンバーの演奏技量が高く、どのアルバムもスリー・ピース・バンドとは思えないほど重厚で複雑なサウンドに構築されている。とくにドラムスのNeil Peartの技術は素晴らしく、ローリング・ストーン誌の「100 Greatest Drummers of All Time」では堂々の4位。ちなみに、1位はJohn Bonham、2位はKeith Moon、3位はGinger Bakerだ。なお、Neil PeartはRushのほとんどの曲の作詞を手がける詩人でもある。
紹介するアルバム『Counterparts』はRushのアルバムの中では最高位となる全米2位を記録した傑作。とてもメロディアスで、Rushの作品の中では一番聴きやすい。その中でも特にメロディアスな3曲を紹介。
まずは、アルバム1曲目の「Animate」。イントロからNeil Peartのダイナミックかつ繊細なドラムスが曲がリードし、すぐにGeddy Leeのベースがブンブンと鳴り始める。どこか陰のある知的な曲調で、「Polarize me / Sensitize me / Criticize me / Civilize me / Compensate me / Animate me / Complicate me / Elevate me」という歌詞も難解。詩的で抽象的過ぎて正直よく分からないが、とてもクールに聴こえる。
選んだ2曲目は「Cold Fire」。イントロのグランジ風のギターが印象的だが、流れ出すメロディはポップで爽やか。この曲は4枚目のシングルになり、アメリカのロック・チャートでは2位を記録している。
そして、ラストの「Everyday Glory」。希望に満ちた曲調が感動的で、"Rise from the ashes, a blaze of everyday glory (灰から日々の栄光の炎が立ち昇る)" という歌詞は、挫折をしても、また希望を胸に抱いて生きる力強い姿勢を歌ったものか。奥行と広がりのあるサウンドには、3人による演奏とは思えない大きなスケール感がある。
私はRushの演奏とサウンドが大好きで、4種類のBOXセット『Sector 1』『Sector 2』『Sector 3』『Studio Albums 1989-2007』を全部買って、一時期はRushばかりを聴いていた。
そして今日、ドラムスのNeil Peartが1月7日に脳腫瘍により67歳で他界したことを知り、ショック。ご冥福を心からお祈りします。また、希望の歌を残してくれたことを心から感謝します。
- ●収録曲
- Animate - 6:05
- Stick It Out - 4:30
- Cut To The Chase - 4:49
- Nobody's Hero - 4:54
- Between Sun & Moon - 4:37
- Alien Shore - 5:45
- The Speed Of Love - 5:03
- Double Agent - 4:51
- Leave That Thing Alone - 4:06
- Cold Fire - 4:27
- Everyday Glory - 5:10
◆プロデュース: Peter Collins, Rush
◆参加ミュージシャン: Geddy Lee(b, vo, sy), Neil Peart(ds, per), Alex Lifeson(g)
with John Webster(k), Michael Kamen(orch)
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