Frank Weber / … As The Time Flies (1978年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Frank Weberの1978年のアルバム『... As The Time Flies』の紹介です。

Frank Weber / ... As The Time Flies (1978年) フロント・カヴァー

Frank Weberはアメリカのシンガー・ソングライター。素朴で温かいメロディや、ピアノを弾きながら自作の曲を歌うスタイル、ちょっとくぐもった歌声は、Paul Simonやメジャーになる前のBilly Joelを思わせる。

生まれはニュージャージー州だが、隣のニューヨーク派のAORアーティストとされているようだ。本作にも、David Spinozza/John Tropea(g), Richard Tee(k), Anthony Jackson(b), Steve Gadd(ds), Mike Mainieri(vib, per), Luther Vandross(bv)等、ニューヨークを中心に活動するミュージシャンが多く参加している。

ちなみに、Frank Weberの2作目『Frank Weber』(80年)には、Billy Joelを意識したような『ニューヨークのストレンジャー』という邦題が付けられた。

本作の収録曲は、「Straighten Up And Fly Right」(Nat King Cole, Irving Mills作)のカヴァーを除いて、Frank Weberのオリジナル。アレンジをFrank自身とJohn Tropea(g)が担当し、ストリングス・アレンジについてはDavid Spinozza(g)が担当している。丁寧に仕上げられた、繊細で優しい音になっている。

メロディの優しさに涙腺が緩みそうになる「'71」「Regina」「So Many Sides」の3曲。切なさが胸に沁み入るような「I Know, You Know」。ピアノの弾き語りでしっとりと歌う「Parents」など、穏やかな曲が多い。演奏とバック・ヴォーカル(David Lasley/Luther Vandross/Arnold McCuller)も、感動的なほどに優しい。

「Complicated Times」では、一流のジャズ・プレイヤーによる熟練した演奏に魅せられる。心地よい一体感のあるアンサンブルは、さながらStuffのよう。粋でエネルギッシュで、とても洗練している。

ジャケットも素敵。ベンチに隣り合う青年と老婆。老婆は新聞に目をやり、青年は前を見ている。気にかけていないようで、親密さを感じる距離感。Simon & Garfunkelの「Old Friends」の歌のように新聞紙が足元にからむし、空気は冷たそうだけど、二人の心は温かそう。そういう、さり気ない優しさと温もりのあるアルバムだ。

●収録曲
  1. '71 - 4:10
  2. Regina - 4:47^
  3. So Many Sides - 6:04
  4. As The Time Flies - 4:05
  5. Complicated Times - 6:30
  6. I Know, You Know - 4:10
  7. Straighten Up And Fly Right - 3:08
  8. Parents - 2:56
  9. Shining In You - 4:43

◆プロデュース: Ed Newmark

◆参加ミュージシャン: Frank Weber(vo, k), David Spinozza/John Tropea(g, ar), Richard Tee(k), Anthony Jackson/Will Lee(b), Steve Gadd(ds), Mike Mainieri(vib, per), Lou Marini(sax), David Lasley/Luther Vandross/Arnold McCuller(bv), etc

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