Bobby Caldwell / Bobby Caldwell (1978年) – アルバム・レビュー

2023年5月4日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Bobby Caldwellの1978年のアルバム『Bobby Caldwell / イヴニング・スキャンダル』の紹介です。

Bobby Caldwell / Bobby Caldwell (1978年) フロント・カヴァー

Bobby CaldwellはNYのマンハッタン生まれ、マイアミ育ちのシンガー・ソングライター。トレードマークのソフト帽姿で、哀愁のメロディをソウルフルかつエモーショナルに歌う姿は大人の魅力に溢れており、日本では "ミスターAOR" と呼ばれて、Boz Scaggsと並ぶ高い人気を誇る。また、複数の楽器を使いこなすマルチ・プレイヤーでもある。

本作はBobby Caldwellのデビュー・アルバム。収録曲は、共作も含めて全てBobby Caldwellのオリジナルで、R&B/ソウルをベースとする洗練した曲を揃えている。ロマンティックなアート・ワークも含めて、トータルにスタイリッシュなアルバムだ。

特に、「What You Won't Do For Love / 風のシルエット」は素晴らしい。甘い憂いのあるメロディ・ラインは極上のもので、後半からエンディングにかけて、このメロディを波のように延々と(実際は2分ほど)繰り返す。穏やかなグルーヴも心地よく、いつまでも聴いていたくなる中毒性のある曲だ。この曲はシングル・カットされ、Billboard Hot 100チャートの9位を記録。Bobby Caldwellのキャリアを代表する1曲になった。

この曲の詞も魅力。"What You Won't Do For Love" という謎めいたタイトルは、実際には "What you won't do, (I) do for love" と歌われている。「君がしないようなことも、(僕は)愛のためにするよ」という意味か。また、"In my world, only you / Make me do for love what I would not do" とも歌う。「君だけだよ、僕が決してしないようなことを、愛のために僕にさせてしまうのは」と。奥ゆかしく、とても情熱的。

PVでは、Bobbyが去った後のベンチに鳥かごの鳥が寂しく残される。ところが、しばらくすると戻ってきて、ソフト帽をそっとかごに乗せて、また去っていく。さり気ない優しさがかっこいい。

「風のシルエット」という邦題も洒落ている。ジャケットは "黄昏のシルエット" の趣きだが、"風の" とした。

バラード系では、セカンド・シングルとなった「My Frame」や、日本ではタバコのCMに使われた「Come To Me」も良い。「Come To Me」の歌声や歌い方を聴くと、Bobby CaldwellがStevie Wonderをリスペクトしていることが分かる。

●収録曲
  1. Special To Me - 4:00
  2. My Flame - 4:12
  3. Love Won't Wait - 4:00
  4. Can't Say Goodbye - 5:20
  5. Come To Me - 2:52
  6. What You Won't Do For Love / 風のシルエット - 4:45
  7. Kalimba Song - 2:00
  8. Take Me Back To Then - 3:30
  9. Down For The Third Time - 3:30

◆プロデュース: Ann Holloway, Marsha Radcliffe, George "Chocolate" Perry(b)

◆参加ミュージシャン: Bobby Caldwell(vo, g, k, b), Alfons Kettner/Steve Mealy(g), Benny Lattimore(k), Ed Greene/Joe Galdo(ds), etc

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