Eric Carmen / Change Of Heart (1978年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Eric Carmenの1978年のアルバム『Change Of Heart』の紹介です。

Eric Carmenは米国オハイオ州生まれのシンガー・ソングライター。70年代前半にポップ・ロック・バンドのRaspberries(ラズベリーズ)を率いて活動し、1975年にバンドを解散してソロのアーティストとなった。本作はEric Carmenの3枚目のソロ・アルバムである。
77年の『Boats Against the Current / 雄々しき翼』に続いてEricがセルフ・プロデュースをしており、Four Topsのヒット曲「Baby I Need Your Lovin' / 愛をもとめて」(64年, 米11位)を除く全曲をEricが作詞・作曲した。ちなみに、「愛をもとめて」はHolland-Dozier-Hollandの作で、Four Topsの最初のヒット曲である。
1曲目の「Desperate Fools Overture」は、流麗なストリングスが印象的なインストゥルメンタル・ナンバー。ラストの「Desperate Fools」と対になっており、タイトル名や郷愁のあるメロディがEaglesの73年の名曲『Desperado / ならず者』を思わせる。
続く「Haven't We Come a Long Way / 二人のラヴ・ウェイ」は瑞々しさ溢れるポップ・ロックで、甘酸っぱく爽やかなメロディはEricの真骨頂。グルーヴ感抜群のJeff Porcaroのドラムスも心地よい。
「Heaven Can Wait」の甘美なメロディと切なげな歌声は、Ericを代表する名バラード「All By Myself」のよう。この曲は78年の同名映画『Heaven Can Wait / 天国から来たチャンピオン』のために書かれたが、事情があって使われなかったらしい。
タイトル曲「Change Of Heart」はファースト・シングルとなり、Billboard Hot 100チャートの19位に到達。バック・ヴォーカルを担当した女性シンガーのSamantha Sangが、同年のデビュー作『Emotion』でこの曲を歌っている。本作の中で一番AORらしい爽やかなナンバーだ。
軽快な「Hey Deanie」は男性ポップ・シンガーのShaun Cassidyに贈られ、77年にCassidyの歌で全米7位のヒットを記録した(Cassidyのアルバム『Born Late』に収録)。続くビーチ・ボーイズ風の「Someday」は、Ericの77年のヒット曲「She Did It / 愛をくれたあの娘」(米23位)のB面にカップリングされていた曲である。
ラストでは、ピアノを静かに弾きながら、Ericが「Desperate Fools」を情感豊かに歌う。それを包むストリングスが美しく、スケールの大きな映画を見た後のような、しっとりした後味が残る。ヒットこそしなかったが、Eric Carmenのポップな曲作りのセンス溢れる名盤だ。
- ●収録曲
- Desperate Fools Overture - 2:05
- Haven't We Come a Long Way / 二人のラヴ・ウェイ - 3:17
- End Of the World - 3:29
- Heaven Can Wait - 3:33
- Baby I Need Your Lovin' / 愛をもとめて - 3:17
- Change Of Heart - 3:30
- Hey Deanie - 4:26
- Someday - 2:52
- Desperate Fools - 3:07
◆プロデュース: Eric Carmen(vo, ag, k, per)
◆参加ミュージシャン: Danny Kortchmar/Richie Zito(g), David Paich/Jay Winding/Craig Doerge/James Newton Howard(k), Burton Cummings(p), Mike Porcaro/Lee Sklar(b), Jeff Porcaro/Nigel Olsson/Russ Kunkel(ds), Paulinho Da Costa(per), Brian & Brenda Russell/Valerie Carter/Bruce Johnston/Curt Becher/Joe Chemay/Donny Gerrard/Samantha Sang(bv), etc
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