Kenny Loggins / Nightwatch (1978年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Kenny Logginsの1978年のアルバム『Nightwatch』の紹介です。

Kenny Loggins / Nightwatch (1978年) フロント・カヴァー

Kenny Logginsはアメリカのシンガー・ソングライター。Jim Messinaとのポップ・ロック・デュオ - Loggins and Messinaの活動(1971年~76年)を経てソロになり、アルバム制作やライヴ活動のほかに、80年代以降は映画の主題歌を手がけて多くのヒットを生んでいる。84年の映画『Footloose』の主題歌(米1位)や、86年の映画『Top Gun』の主題歌「Danger Zone」(米2位)などが有名だ。

ソロ活動の1作目は77年に発表された『Celebrate Me Home / 未来への誓い』で、フュージョン界の重鎮のBob Jamesがプロデュースを担当した。この『Nightwatch』は2作目で、前作に続いてBob Jamesがプロデュースを担当。米Billboardのアルバム・チャートでは7位を記録し、これはKenny Logginsのソロ・アルバムの中では最高位になっている。

バックを固めるミュージシャンはKenny Logginsのバンド・メンバーで、演奏の息も合っている。このうちドラムスのTris Imbodenは1990年にChicagoの正式メンバーになり、Danny Seraphineに代わる2代目のドラマーとして活躍。Seraphineよりも長く在籍し、2018年に引退している。

収録曲のうち2曲(2, 4)はカバー曲。「Easy Driver」はDavid Plehn - Jerry Riopelleの作で、Jerry Riopelleの77年のアルバム『Little Bit At A Time』の収録曲だ。また、Joe South作の「Down In The Boondocks」はBilly Joe Royalの65年のヒット曲(米9位)のカバーである。

それでは、Kenny Logginsの自作のナンバーからおすすめの4曲を紹介。

まずは、1曲目の「Nightwatch」。8分近い長さの重厚なタイトル曲だ。重たいベースとドラムス。ミステリアスなメロディ。闇の息づかいのようなワイルドでドラマティックなギター・ソロ。エコーの効いた音空間にそれらが響き合い、"夜警" というタイトルに相応しい妖しいムードを演出している。曲はMax Gronenthalと、詩は兄のDan Logginsとの共作だ。Max GronenthalはBill Champlinタイプの実力派シンガーで、Foster & Graydonの『Airplay』(80年)にもバック・ヴォーカルで参加している。後に38 Specialのメンバーになり、今やGrand Funk Railroadのリード・シンガーだ。

メロディの爽やかな「Whenever I Call You "Friend" / 二人の誓い」はMelissa Manchesterとの共作。これをMelissaとではなく、Stevie Nicksとデュエットするあたりは "モテ男" という感じ。この曲は米シングル・チャートの5位を記録し、映画の主題歌を除いてKenny Logginsの最大のヒットになっている。Melissa Manchesterも翌年のアルバム『私はメリサ』でこの曲を歌い、デュエットの相手にはArnold McCullerを選んだ。Loggins - Manchesterのデュエットが実現しなかったのは少し残念だ。

奥様のEva Einと共作した「Wait A Little While」はお洒落な洋楽シティ・ポップ。とびきり爽やかなWoodwindsを演奏しているJon Clarkeは、Loggins and Messina時代からKenny Logginsの全てのアルバムに参加している古い仲間だ。Al Jarreauが同じ年のアルバム『All Fly Home / 風のメルヘン』でこの曲をカバーしている。Al Jarreauのバージョンもよくできていて、シティ・ポップ指数はそちらの方が高いかも。

「What A Fool Believes」はMichael McDonaldと共作した有名曲。The Doobie Brothersのアルバム『Minute By Minute』に収録されたバージョンが翌年に全米チャートの1位になり、グラミー賞の "Record of the Year", "Song of the Year", "Best Arrangement Accompanying Vocals" の3冠を受賞するが、世に出したのはKenny Logginsの方が早い。Michael McDonaldの代名詞のようになったドゥービーズのバージョンとはひと味違う爽やかなアレンジが新鮮だ。

ラストの「Angelique」も奥様のEva Einとの共作。6分弱の重厚でミステリアスな曲調はオープニングの「Nightwatch」を思い出させ、コンセプト・アルバム風の作りを印象づける。

フロント・カヴァー(1枚目の画像)の薄く開いた扉に写るシルエットの正体はバック・カヴァー(下の画像)を見ると分かる。そこにいたのは若い頃の自分。『Hotel California』の写真を担当したDavid Alexanderが、このミステリアスなカヴァー・フォトを担当している。

Kenny Loggins / Nightwatch (1978年) バック・カヴァー
●収録曲
  1. Nightwatch - 7:49
  2. Easy Driver - 3:34
  3. Down 'N Dirty - 4:42
  4. Down In The Boondocks - 4:20
  5. Whenever I Call You "Friend" / 二人の誓い - 3:58
  6. Wait A Little While - 3:58
  7. What A Fool Believes - 3:39
  8. Somebody Knows - 3:36
  9. Angelique - 5:59

◆プロデュース: Bob James(strings ar)

◆参加ミュージシャン: Kenny Loggins(vo, g), Mike Hamilton(g, bv), Brian Mann(k), George Hawkins(b, bv), Tris Imboden(ds), Jon Clarke/Vince Denham(horns)
with Stevie Nicks(vo)

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