Russ Ballard / At the Third Stroke (1978年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Russ Ballardの1978年のアルバム『At the Third Stroke / サード・ストローク』の紹介です。

Russ Ballard / At the Third Stroke (1978年) フロント・カヴァー

Russ Ballardはイングランド出身のシンガー・ソングライター。70年代に活躍したブリティッシュ・ロックの名グループであるArgentの中核としてリード・シンガーとギタリストを務めたあと、1974年にソロとなった。本作はBallardの3枚目のソロ・アルバムである。

Russ Ballardは優れたソングライターであり、Rainbowの「Since You Been Gone」(79年, 英6位)や「I Surrender」(81年, 英3位)、Santanaの「Winning」(81年, 米17位)、Americaの「You Can Do Magic」(82年, 米8位)、KISSの「God Gave Rock and Roll to You」(91年)など、ロック系を中心とする様々なアーティストがBallardの書いた曲を歌っている。サビがキャッチーで、覚えやすいメロディの曲が多い。

本作も全曲がRuss Ballardによる作詞・作曲。入魂のロック・チューンから優しいバラードまで、聴きやすいメロディの曲が揃っている。

LA録音なので、David FosterやTOTOを結成するDavid Paich(k)、Jeff Porcaro(ds)、David Hungate(b)、Fools GoldのTom Kelly/Denny Henson(bv)等、LAで活動する旬のミュージシャンがバックを固めているが、LA産の爽やかなAORという印象はない。Ballardの書くメロディやヴォーカル、ギターには英国らしい(あるいはBallard独特の)ウェットな質感があり、それがサウンド全体の印象を支配している。

1曲目の「Dancer」は疾走感溢れる熱いロック・チューンで、全員が一丸となった演奏は聴き応え十分。Jeff PorcaroのドラムスとBallardのギターにも熱が入っている。他には、「Cast The Spirit」と「I'm A Scorpio」も入魂の曲。

ゆったりしたナンバーでは、濃厚なバラードの「Helpless」や優しさ溢れる「Treat Her Right」、ソウル感覚の「What Does It Take」あたりが素晴らしい出来。金澤寿和さんは「Helpless」をMarty Balinの「Hearts」とクリソツと表現しているが、確かにそんな雰囲気もある。

漢字の「三」を模したようなフロント・カヴァーや "首タオル" で写るバック・カヴァーはいただけないが、内容に関してはとても味わい深いアルバムだ。

●収録曲
  1. Dancer - 4:02
  2. Helpless - 4:42
  3. Treat Her Right - 2:59
  4. Expressway To Your Heart - 2:53
  5. Cast The Spirit - 6:33
  6. Look At Her Dance - 4:07
  7. What Does It Take - 4:11
  8. I'm A Scorpio - 6:19
  9. My Judgement Day - 5:38

◆プロデュース: Keith Olsen

◆参加ミュージシャン: Russ Ballard(vo, g, b), Fred Tackett(g), David Foster/David Paich/Craig Doerge(k), David Hungate/Mike Porcaro/Lee Sklar/Dennis Bellfield(b), Jeff Porcaro/Mike Baird(ds), Tom Scott(horns), Tom Kelly/Denny Henson(bv), etc

なお、単体のCDは入手が難しくなっているが、ファースト・アルバム『Russ Ballard』(74年)、セカンド・アルバム『Winning』(76年)と本作を収めた2CDのパッケージがBGO Recordsから発売されており、デジタル・リマスタリングもされていてお薦めである。

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