Tender Leaf / Tender Leaf (1982年) – アルバム・レビュー

2020年8月4日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Tender Leafの1982年のアルバム『Tender Leaf』の紹介です。

Tender Leafはハワイのグループ。プロのミュージシャンというよりは、友人や家族の前で趣味として音楽を演奏することを楽しんでいた人たちのようで、6人いるメンバーの本業はホノルル市を走る公営バス "TheBus" の運転手らしい。

この『Tender Leaf』は彼らの唯一のアルバム。しかも自主制作に近いものだが、90年代の日本でフリー・ソウルの人気盤になった。きっかけは、橋本徹氏の主宰するサバービア誌において "アコースティックなロコAORの最高峰" と紹介されたこと。ジャンルとしては、KalapanaのようなContemporary Hawaiianになるだろう。

ハワイの自主制作盤というレア・アイテムだけに相当な高値で取り引きされたようだが、2000年にCool Soundの「クール・ハワイ」から初CD化され、私もそれを手にしている。

メンバーは、Patrick Caraulia(congas, bv), Murray Compoc(g, vo), John Franklin(g), Bob Hernandez(b), Vince Ostertag(ds), Darryl Valdez(g, vo)の6人。中心はギターのDarryl ValdezとヴォーカルのMurray Compocで、ほとんどの曲をこの二人で書いている。

プロデュースを手がけたKit Ebersbachはキーボードも担当。同じハワイ生まれのLemuriaというグループの78年のアルバム『Lemuria』にもキーボードで参加している。

それでは、気温も湿度も幾分やわらぐ4曲を紹介。

まずは、1曲目の「Beautiful Hawaii Kai」。Kaiとは、ハワイ語で海を意味する。アコースティックでフォーキーなサウンドと爽やかな男性コーラスの組み合わせは初期のAmericaのようだが、ナチュラルなグルーヴは "ハワイ産" という感じ。この曲は、リード・ヴォーカルのMurray（マレイ）の作だ。

2曲目の「Countrieside Beauty」はギターのDarryl（ダリル）の作。 "アコースティックなロコAORの最高峰" というほめ言葉に相応しい極上のメロウ・グルーヴで、サウンド全体にさわやかな空気が流れている。日本では2016年に、この曲をA面、「Beautiful Hawaii Kai」をB面とする7インチ・シングルも発売された。

3曲目はバラード・タイプの「You Are My Love」。優しいメロディと甘い歌声だが、大甘にならずに涼やかに聴かせてしまうところが彼らのサウンドの魅力。この曲ではマレイとダリルが共作している。

この後も気持ちのいい曲ばかりだが、あと1曲はハワイらしいタイトルの「Shores Of Makapuu」をセレクト。Makapuu（マカプウ）はオアフ島の東の端に位置する岬の名前。彼らの歌には "beauty" や "beautiful" というフレーズが溢れていて、ハワイを愛する気持ちが真っすぐに表れている。とてもポジティヴ。

2000年に発売されたCDの解説ではTender Leafというバンド名の由来について、プロデューサーのKit Ebersbachが語っている。Kitさん曰く、「この名前は、マリファナのことでもあるんです。」と。そうなんですか…。

Kitさんはメンバーのその後についても語っていて、ギターのダリルは2000年当時、まだTheBusの運転手をしているが、ほかのメンバーについては半ば消息不明だとか。

ちなみに、リード・ヴォーカルのマレイ（Murray Compoc）はfacebookのアカウントを持っている。今はテネシー州に在住のようだ。

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◆プロデュース： Kit Ebersbach(k)

◆参加ミュージシャン： Patrick Caraulia(congas, bv), Murray Compoc(g, vo), John Franklin(g), Bob Hernandez(b), Vince Ostertag(ds), Darryl Valdez(g, vo)