Steve Hiett / Down On The Road By The Beach (渚にて…) (1983年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Steve Hiettの1983年のアルバム『Down On The Road By The Beach / 渚にて…』の紹介です。
Steve Hiettは1940年生まれの英国の写真家。アート・スクールを卒業後、サイケ/ポップ・バンドのメンバーだった時期もあるようだが、68年にファッション・フォトグラファーのキャリアをスタート。72年にはパリに活動の拠点を移し、Marie Claire, Vogue, Elleなどの一流誌のフォトグラファーとして活躍する。
Steve Hiettはギターを弾くことができ、唯一のギター・ソロ・アルバムを残している。それがこの『Down On The Road By The Beach / 渚にて…』。日本のみで発売された異色のアルバムだ。
"This is a Guitar Album" とバック・カヴァーに記されているとおり、全編にわたってSteve Hiettがギターを弾いている。そのふわふわした気だるい音色はかなり独特で、炎天下のビーチで撮影したと思われるフロント・カヴァーとの相乗効果もあって、夏の午後のうだるような暑さや、遠くの方に立ち上る蜃気楼を思わせる。
1曲目の「Blue Beach」からラストの「Standing There」まで、どの曲をとってもそんな感じ。環境音楽のようでもあるが、素っ気なさはない。エコーの効いた楽器の音がどこか遠くの世界から素敵に響いてくる。
本作のプロデュースを担当したのは立川直樹氏。レコーディングには、Steely Danのアルバムなどでギターを弾いているElliott Randallの他、ムーンライダーズの岡田徹(k), 武川雅寛(violin), 白井良明(g), 鈴木博文(g)が参加した。また、加藤和彦もエンディング曲「Standing There」を提供し、この曲ではギターを弾いている。
オリジナル曲は9曲で、内訳はS.Hiettが共作を含めて6曲(1, 3, 5, 6, 9, 11)、E.Randallが1曲(7)、岡田徹が1曲(8)、加藤和彦が1曲(13)を提供。カヴァー曲は4曲(2, 4, 10, 12)で、Eddie Floyd, Booker T.Jones等の書いた「Never Find A Girl」(68年)、Chuck Berryの「Roll Over, Beethoven」(56年)、Cliff Richardの「The Next Time」(62年)、Santo & Johnny Farinaの「Sleep Walk」(59年)をセレクトしている。
このアルバムは、ソニーの「AOR CITY 1000」シリーズから2017年8月に世界初CD化された。CDの解説を立川直樹氏が担当し、「本当に時代は恐ろしいほど変わってしまったが、この『渚にて』の持つ "気持ちのいい軽み" のようなものを忘れないで、僕は生きていたいと思う。」と寄せている。
フロント・カヴァーの美しい風景はHiettの撮影したもので、当時は『渚にて…』というタイトルの写真集も同時に発売された。2015年に出版されたHiettの写真集『Beyond Blonde』にも同じフォトが収められている。
- ●収録曲
- Blue Beach - Welcome To Your Beach - 4:19
- Never Find A Girl (To Love Me Like You Do) - 2:51
- By The Pool - 2:39
- Roll Over, Beethoven - 2:24
- In The Shade - 3:27
- Looking Across The Street - 5:03
- Long Distance Look - 2:24
- Hot Afternoon - 2:47
- Crying In The Sun - 3:04
- The Next Time - 2:35
- Miss B. B. Walks Away - 3:48
- Sleep Walk - 2:16
- Standing There - 3:53
◆プロデュース: 立川 直樹
◆参加ミュージシャン: Steve Hiett(vo, g, b, ds), Elliott Randall(g, ds), 岡田 徹(k), 白井 良明(g), 鈴木 博文(g), 武川 雅寛(violin), 加藤 和彦(g), etc
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