Deliverance / Tightrope (1979年) – アルバム・レビュー

2024年1月7日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Deliveranceの1979年のアルバム『Tightrope』の紹介です。

Deliverance / Tightrope (1979年) フロント・カヴァー

Deliveranceは1974年にドイツで結成されたロック・バンド。コア・メンバーはカナダ生まれのDanny Janz, Ken Janz, Paul JanzのJanz兄弟で、これにドイツ人のメンバーを加えて結成された。彼らは70年代に4枚のアルバムを発表しており、この『Tightrope』は4作目。金澤寿和さんの『AOR Light Mellow』の増補改訂版(Remaster Plus)に紹介されたレア盤だが、この7月に韓国のBig Pinkというレーベルから世界初CD化された。

このアルバムでのメンバーは、Paul Janz(vo, k), Danny/Ken Janz(vo), Jacques Emanuel Belzung(g), Guy Roellinger(b), Dave McSparran(ds)の6人。収録曲はすべて彼らのオリジナルで、Paulが作曲、Kenが作詞を担当している。

ロック、ファンク、ディスコ、ソウル、メロウと、多彩な楽曲を収めており、個性的なメロディと凝ったアレンジが印象的。何よりも、随所で使われるファルセットが "まんまBee Gees" なことに驚く。まるでGibb兄弟がゲスト参加しているかのようなアルバムになっている。

1曲目の「Foolish Hearts」はタイトなロック・ナンバー。Gino Vannelliが作る曲のような熱いエモーションがあり、メンバーの演奏にも力が漲っている。続くタイトル曲の「Tightrope」も、同じエモーションを感じるロック・ナンバーだ。

「Prince Of The Galaxies」はディスコ調のエレガントなナンバー。彼らのファルセットがGibb兄弟とそっくりなこともあって、70年代後半のディスコ・ブームを牽引したBee Geesのナンバーを思わせる。

メロウな「Leaving L.A.」は、本作一押しの好ナンバー。シングル・カットされて、カナダ・チャートの57位、米チャートでも71位を記録した。柔らかいファルセットを心地よく聴いていると、Bee Geesの「How Deep Is Your Love / 愛はきらめきの中に」を思い出す。

「Face The Lady」はアヴァンギャルドなファンク・チューン。EW&F風のシャープなホーンに高音のファルセットが絡み、ノリノリで展開していく。かなり独特の雰囲気。

彼らはこのアルバムを最後にグループを解散。Janz兄弟のうち、Paul Janzは80年代中盤から90年代前半にかけてソロ活動をしており、カナダのシングル・チャートを賑わしている。80年代の王道を行くいわゆる産業ロックで、とても聴きやすい。85年のシングル「Believe in Me」は、米ACチャートでも25位をマークした。

78年に発表されたDeliveranceの3作目『Lasting Impressions』も、2018年11月にBig Pinkから世界初CD化されており、Amazonから購入可能。

●収録曲
  1. Foolish Hearts - 5:16
  2. Tightrope - 3:06
  3. Farewell (Bye, Bye, Bye) - 4:16
  4. Prince Of The Galaxies - 3:01
  5. Leaving L.A. - 2:52
  6. Back Seat Rider - 3:24
  7. Can You Survive - 7:29
  8. Face The Lady - 3:52
  9. Re-Creation - 3:51

◆プロデュース: Horst Muller, Deliverance

◆参加ミュージシャン: Paul Janz(vo, k), Danny Janz/Ken Janz(vo), Jacques Emanuel Belzung(g), Guy Roellinger(b), Dave McSparran(ds)
with Elmer Louis(per), Scott Newton/Lee Harper(tp), Bobby Stern(sax, harmonica)

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