Steve Kipner / Knock The Walls Down (1979年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Steve Kipnerの1979年のアルバム『Knock The Walls Down』の紹介です。
Steve KipnerはOlivia Newton-Johnの81年の大ヒット曲「Physical」の作者として知られるソングライター。他にも、Oliviaの「Heart Attack」(82年, 米3位)や「Twist of Fate」(83年, 米5位)、Chicagoの「Hard Habit to Break」(84年, 米3位)、Wilson Phillipsの「Impulsive」(90年, 米4位)、Christina Aguileraの「Genie in a Bottle」(99年, 米1位)などのヒット曲を書いている。60年代から活動しており、キャリアは長い。
本作はSteve Kipnerの唯一のソロ・アルバム。Jay Graydonの初プロデュース作品でもあるらしい。Graydonはこの年に、The Manhattan Transferの『Extensions』、Marc Jordanの『Blue Desert』、Alan Sorrentiの『L.A. & N.Y.』などのAORの人気作を次々とプロデュースしている。
曲は共作も含めて全てSteve Kipnerのオリジナルで、メロディのきれいな曲が揃っている。このうち3曲(1, 4, 10)はJay Graydonとの共作。バック・ミュージシャンが豪華で、曲・演奏・アレンジのどれをとってもクオリティが高く、またバランスが良い。
特に演奏面では、「I've Got To Stop This Hurting You」を除く全曲でJeff Porcaro(ds)とDavid Hungate(b)がボトムを支え、その生き生きとしたグルーヴの上をJay Graydonの華のあるギターが伸びやかに舞うという、AOR好きには垂涎のサウンドが展開される。
内容は「The Beginning」に始まり、「The Ending」で終わるコンセプト・アルバム風の作りになっており、カヴァー・アートもストーリー仕立て。フロント・カヴァーではSteveが花束を手にドアの前で襟元を整え、意中の女性を誘うべく意気揚々としている(トップの画像)。バック・カヴァーでは、女性がドアを開ける横の壁を破って花束を差し出す。
そしてジャケットのインナーでは、女性とめでたく親密になっているという落ち。手にした花束はボロボロだけど。「Knock The Walls Down」というタイトルどおりのデザインが微笑ましい。
ラストの「The Ending」で聴くことのできるJay Graydonの長く優美なギター・ソロは、胸のすくようなカッコよさ。Graydonの3大ギター・ソロの一つとされており、他の2つはMarc Jordanの「I'm A Camera」とAlan Sorrentiの「Beside You」。私は「The Ending」のソロが一番気に入っている。
- ●収録曲
- The Beginning - 2:30
- Knock The Walls Down - 4:11
- Lovemaker - 3:12
- School Of Broken Hearts / 失恋教室 - 3:58
- War Games - 3:48
- I've Got To Stop This Hurting You - 3:29
- Love Is Its Own Reward / 愛の報酬 - 3:25
- Cryin's Out For Love - 3:32
- Guilty - 3:29
- The Ending - 3:23
◆プロデュース: Jay Graydon(g, k, ar), Tom Seufert(g), Steve Kipner(vo, ag, ar)
◆参加ミュージシャン: Larry Carlton/Steve Lukather/Dean Parks(g), David Foster/Michael Omartian/Greg Mathieson/Geoffrey Leib(k), David Hungate(b), Jeff Porcaro(ds), Victor Feldman(per), Jerry Hey(tp), Bill Champlin/Bobby Kimball/Tom Kelly/Peter Beckett/J.C. Crowley(bv), etc
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