Ben Sidran / The Cat And The Hat (1979年) – アルバム・レビュー

2019年11月22日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Ben Sidranの1979年のアルバム『The Cat And The Hat』の紹介です。

Ben Sidran / The Cat And The Hat (1979年) フロント・カヴァー

Ben Sidranはイングランドのサセックス大学の博士号をもち、音楽や特にジャズに対する造詣が深いことから "ドクター・ジャズ" の異名をもつミュージシャン。Steve Miller Bandのメンバーでもあり、1969年~70年、87年~91年にキーボード奏者を務めている。ソロ・アルバムは71年から出しており、この『The Cat And The Hat』は9作目。

本作は、ジャズ・スタンダードに歌詞をつけ、スタイリッシュなポップ・ナンバーに再生した素敵なアルバム。ジャズに対するBen Sidranの愛とリスペクトが溢れている。

プロデュースをBen SidranがMike Mainieriと共同で実施。二人は「Give It To The Kids」も書き下ろしている。John Coltrane作の「Like Sonny」を除く全曲に歌詞がついているが、その多くはジャズ・スタンダードにBen Sidranが新しい歌詞を書いたもの。

例えば「Ask Me Now」はThelonious Monk、「Minority」はG. G. Gryce、「Blue Daniel」はFrank Rosolinoの曲。また、ラストの「Seven Steps To Heaven」はMiles DavisとVictor Feldmanの共作だ。

どの曲も洒落たアレンジで新しい命を吹き込まれており、古さを感じさせない。Ben Sidran曰く、「ビバップ・スタンダードとダンス・グルーヴを組み合わせる、という私の夢を実現させたもの」とのこと。Ben Sidranの歌い口も軽妙で、インテリジェンスに溢れている。

参加ミュージシャンの顔ぶれは華やか。ギタリストにはLee RitenourとBuzzy Feiten、ドラムスにSteve Gadd、サックス奏者にMichael Brecker, Tom Scott, Joe Henderson等が揃い、バック・ヴォーカルにはLuther VandrossやMike Finniganがいる。

ハイライトはラストの「Seven Steps To Heaven」。Steely Danの「Aja」に匹敵するSteve Gaddの名演を聴くことができ、それを目当てにアルバムを手にする人も多いとか。

77年のアルバム『The Doctor Is In』も、おすすめ。上質な "ジャズっぽいポップ・アルバム" で、本作の布石になっている。

●収録曲
  1. Hi-Fly - 4:57
  2. Ask Me Now - 4:08
  3. Like Sonny - 4:38
  4. Give It To The Kids - 4:24
  5. Minority - 3:24
  6. Blue Daniel - 3:52
  7. Ballin' The Jack - 4:26
  8. Girl Talk - 3:11
  9. Seven Steps To Heaven / 天国への7つの階段 - 4:10

◆プロデュース: Mike Mainieri(vib, k), Ben Sidran(vo, k)

◆参加ミュージシャン: Lee Ritenour/Buzzy Feiten(g), Don Grolnick(k), Abraham Laboriel(b), Steve Gadd(ds), Paulinho Da Costa(per), Michael Brecker/Tom Scott/Joe Henderson/Jim Horn(sax), Jerry Hey(tp), Luther Vandross/Mike Finnigan/Max Gronanthal(bv), etc

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