Stephen Bishop / Red Cab To Manhattan (1980年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Stephen Bishopの1980年のアルバム『Red Cab To Manhattan / 哀愁マンハッタン』の紹介です。

Stephen Bishop / Red Cab To Manhattan (1980年) フロント・カヴァー

Stephen Bishopはお洒落でロマンティックな曲を作ることで定評のあるシンガー・ソングライター。ヒット曲「On and On」(米11位)と「Save It for a Rainy Day / 雨の日の恋」(同22位)を収録した1976年のデビュー・アルバム『Careless』や、自らの愛称をタイトルにした78年のセカンド・アルバム『Bish / 水色の手帖』は、いずれもAORの人気作になっている。

映画音楽も手がけていて、85年の映画『White Nights』ではStephenの書いた挿入歌の「Separate Lives」がPhil CollinsとMarilyn Martinの歌により全米1位を獲得。また、82年の映画『トッツィー』ではテーマ曲の「It Might Be You」を歌い、Adult Contemporary(AC)チャートの1位を獲得した。整った顔立ちの色男なので、役者としても70年代、80年代の映画に何本か出演している。

この『Red Cab To Manhattan / 哀愁マンハッタン』はサード・アルバム。プロデュースをMike MainieriとTommy LiPumaが手がけたことで、前2作よりもメロディやサウンドがカラフルになった印象がある。参加メンバーの顔ぶれは豪華で、その中にはEric ClaptonやPhil Collins、Chris Stainton、Procol HarumのGary Brookerといった英国ミュージシャンの名前も見られる。

収録曲は、共作も含めて全てStephenのオリジナル。ロックンロール調の「Let Her Go」や「おてんば娘」もあるが、「愛の贈りもの」や「哀愁マンハッタン」のようなしっとりした情緒のある曲での甘酸っぱいメロディが一番の魅力。「愛の贈りもの」はACチャートの31位をマーク。「哀愁マンハッタン」は、女性ジャズ・シンガーのDiane Schuurの2000年のアルバム『Friends for Schuur』でカヴァーされ、Stephen Bishopも共演している。

「ボーイ・イン・ラヴ」や「City Girl」のようなドラマティックに展開するポップ・ナンバーも素敵。「ボーイ・イン・ラヴ」では、Chris Staintonの演奏する格調高いピアノのイントロから爽やかなシティ・ポップへと変化し、フックの効いたサビのアンサンブルへと続く。「City Girl」では、甘美で繊細なイントロからポップに弾むビート・ナンバーへと曲調が変わる。Buzz Feitenの弾くギターの音色が甘い憂いを帯びていて、何ともほろ苦い。

口元を隠すミステリアスなジャケットを撮ったのは、女性写真家のLynn Goldsmith。70年代から80年代にかけて数多くのアルバムのカヴァー写真を撮っていて、彼女のサイトで見ることができる。個性強めのミュージシャンたちの中で、本作の鮮やかな黄色のカヴァーが存在感を出している。

●収録曲
  1. The Big House - 3:44
  2. Don't You Worry / くよくよしないで - 3:56
  3. Thief In The Night / 恋泥棒 - 2:25
  4. Send A Little Love My Way (Like Always) / 愛の贈りもの - 3:45
  5. Let Her Go - 3:40
  6. Little Moon - 3:10
  7. The Story Of A Boy In Love / ボーイ・イン・ラヴ - 4:58
  8. Living In The Land Of Abe Lincoln / リンカーンの祖国 - 3:00
  9. Red Cab To Manhatten / 哀愁マンハッタン - 4:36
  10. Sex Kittens Go To College / おてんば娘 - 1:30
  11. City Girl - 4:56
  12. My Clarinet / 僕のクラリネット - 3:00

◆プロデュース: Mike Mainieri(vib, sy), Tommy LiPuma

◆参加ミュージシャン: Stephen Bishop(vo, g, k, tb), Willie Weeks/John Giblin/Neil Jason(b), Andy Newmark/Phil Collins/Steve Gadd(ds), Gary Brooker/Don Gronlick/Chris Stainton(k), David Spinozza/Sid McGinnis/Jeff Mironov/Eric Clapton(g), Lenny Castro(per), David Lasley/Arnold McCuller/Phoebe Snow(bv), etc

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