Melissa Manchester / Singin’… (雨と唄えば) (1977年) – アルバム・レビュー

2020年2月8日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Melissa Manchesterの1977年のアルバム『Singin'... / 雨と唄えば』の紹介です。

Melissa Manchester / Singin'... (雨と唄えば) (1977年) フロント・カヴァー

Melissa Manchesterは、女優としても活動するニューヨーク生まれのシンガー・ソングライター。彼女の歌声には、元気をなくしている人に前を向かせるような力がある。

この『Singin'... / 雨と唄えば』は、6枚目のスタジオ・アルバム。それまでのアルバムは自作曲が中心で、ソングライターとしての彼女にフォーカスした内容だったが、本作では、自作曲は「No One's Ever Seen This Side Of Me」のみ。『Singin' ...』というタイトルが示すように、シンガーとしての彼女に光を当てた内容になっている。

プロデュースを担当したのは、前作に続いてVini Poncia。Melissaの歌の魅力を最大限に引き出すべく、幅広い方面から曲がセレクトされている。曲の作者と収録アルバムは次のとおり。


  1. Sad Eyes / 悲しい瞳 (David Spinozza):書き下ろし
  2. I Wanna Be Where You Are / いつも一緒に (Leon Ware / Arthur Ross):『Got To Be There』(Michael Jackson, 72年), 『I Want You』(Marvin Gaye, 76年)
  3. A Love Of Your Own / あなただけの愛 (Ned Doheny / Hamish Stuart):『Hard Candy』(Ned Doheny, 76年), 『Soul Searching』(Average White Band, 76年)
  4. You Make It Easy (James Taylor):『Gorilla』(James Taylor, 75年)
  5. Stand (Sylvester Stone):『Stand』(Sly & The Family Stone, 69年)
  6. My Love Is All I Know / 私のすべて (Wendy Waldman):『Gypsy Symphony』(Wendy Waldman, 74年)
  7. Time (John Miles / Bob Marshall):『Stranger in the City』(John Miles, 77年)
  8. Let Me Serenade You / 愛のセレナーデ (John Finley):『Cyan』(Three Dog Night, 73年)
  9. The Warmth Of The Sun / 太陽の下で (Brian Wilson / Mike Love):『Shut Down Volume 2』(The Beach Boys, 64年)

「Sad Eyes / 悲しい瞳」は、ギタリストのDavid Spinozzaが書き下ろした珍しい曲。

When I look up, you come down
But for a while I'll watch the sad eyes smile

私は希望を持ってるのに、あなたは沈み込んでる
でもしばらくの間は
その悲しい瞳が微笑むところを見つめていたいの

…と、包み込むように歌う声の力強さと優しさにとても感動する。彼女には「Don't Cry Out Loud / あなたしか見えない」の名唱があるけれど、それと同じくらいに好きな曲。

Leon Ware/Arthur Ross作の「I Wanna Be Where You Are / いつも一緒に」は、おしゃれなポップ・ソウル。Leon Wareらしいしなやかでエレガントなメロディと、Don Grolnick(k), David Spinozza/Jeff Mironov(g), Tony Levin(b), Steve Gadd(ds)等による美味しい演奏を楽しめる。

Ned Dohenyと、Average White BandのHamish Stuartの書いた「A Love Of Your Own / あなただけの愛」は、ブルー・アイド・ソウルの人気曲。枯れた味わいの渋いナンバーで、Melissaも抑えた感じでソフトに歌っている。ギターとベースは、Sid McGinnis(g)とWill Lee(b)。

他にも、James Taylor, Sly & The Family Stone, Three Dog Nightなどをカヴァーし、幅広い。英国ミュージシャンのJohn Milesの曲「Time」も取り上げているが、この曲を収録した77年のアルバム『Stranger in the City』をプロデュースしたのはRupert Holmesだ。

ラストの「The Warmth Of The Sun / 太陽の下で」は、The Beach BoysのBrian WilsonとMike Loveの書いた美しいバラード。これをしっとりと歌い上げ、まさに太陽の恵みを感じるような豊かな曲にしている。爽やかなサックス・ソロ(Stanley Schwartz)も印象的。

フロント・カヴァーのMelissaは、どしゃ降りの雨の中を元気に走る。ずぶ濡れでも意に介さないような爽やかさが彼女の歌の魅力。ところで、彼女は「愛の灯~Stand In The Light」という96年の曲で山下達郎と共演している。Melissa Manchesterが詞を、山下達郎が曲を書き、二人のデュエットが実現した。

●収録曲
  1. Sad Eyes / 悲しい瞳 - 4:04
  2. I Wanna Be Where You Are / いつも一緒に - 3:47
  3. A Love Of Your Own / あなただけの愛 - 3:59
  4. No One's Ever Seen This Side Of Me / 誰も知らない私の悩み - 3:13
  5. You Make It Easy - 5:05
  6. Stand - 3:55
  7. My Love Is All I Know / 私のすべて - 3:35
  8. Time - 4:14
  9. Let Me Serenade You / 愛のセレナーデ - 3:46
  10. The Warmth Of The Sun / 太陽の下で - 3:52

◆プロデュース: Vini Poncia(bv)

◆参加ミュージシャン: James Newton Howard(ar, k), David Spinozza/Jeff Mironov(g), Don Grolnick(k), Will Lee/Tony Levin(b), Steve Gadd(ds), Lenny Castro(per), Tom Saviano(sax, flute), The Faragher Bros.(bv), etc

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