Steely Dan作品集
Steely Danは、Donald Fagen(vo, k)とWalter Becker(g)の2人を中心とするロック・バンド。1972年の結成時には6人のメンバーがいましたが、次第にグループの輪郭は曖昧になり、FagenとBeckerの周りに優秀なセッション・プレイヤーを集めて活動するスタイルへと移行していきます。
そうして生まれた1977年の『Aja / 彩(エイジャ)』は傑作アルバムで、二人が納得するまで一流のミュージシャンに何テイクも演奏させるという徹底ぶりが身を結んだ名演集。続く『Gaucho』も、こだわり抜かれて制作された名作です。一方で、デビューから70年代中期にかけてのアルバムは、穏やかなアメリカン・ポップスと呼べる作風になっています。
Steely Danのアルバム、Donald FagenとWalter Beckerのソロ・アルバム、二人が参加した他のアーティストの作品をそれぞれ紹介しましょう。
このページでは、Steely Danのアルバムを年代順に紹介します。
- 1. ポップで穏やかな作風の初期4作品
- 2. AORサウンドの洗練を極めた3作品
- 3. 90年代以降の作品
- 4. Donald FagenとWalter Beckerのソロ・アルバム
- 5. Steely Danの関連作品
- 5.1. 『Boylan / Alias Boona』(1969年)
- 5.2. 『Barbra Streisand / Barbra Joan Streisand』(1971年)
- 5.3. 『FM (Soundtrack)』(1978年)
- 5.4. 『Fay Cry / The More Things Change ... (ファー・クライ)』(1980年)
- 5.5. 『Eye To Eye / Eye To Eye』(1982年)
- 5.6. 『Diana Ross / Ross』(1983年)
- 5.7. 『China Crisis / Flaunt the Imperfection』(1985年)
- 5.8. 『Rosie Vela / Zazu』(1986年)
- 5.9. 『Rickie Lee Jones / Flying Cowboys』(1989年)
ポップで穏やかな作風の初期4作品
1972年のデビュー作『Can't Buy a Thrill』から、1975年の『Katy Lied / うそつきケイティ』までの4作品の紹介です。穏やかなアメリカン・ポップスと呼べる作風になっています。
『Can't Buy a Thrill』(1972年, 米17位)
Steely Danのデビュー・アルバムです。1曲目の「Do It Again」が全米6位となるヒットを記録し、「Reelin' In The Years」も11位をマークします。この時のメンバーは、Donald Fagen(vo, k), Walter Becker(b), Denny Dias(g), Jeff Baxter(g), Jim Hodder(ds), David Palmer(vo)の6人。David Palmer(vo)は本作のみでグループを脱退し、以降のアルバムではDonald Fagenがすべての曲のリード・ヴォーカルを担当します。
- ●収録曲
- Do It Again
- Dirty Work
- Kings
- Midnite Cruiser
- Only A Fool Would Say That
- Reelin' In The Years
- Fire In The Hole
- Brooklyn
- Change Of The Guard
- Turn That Heartbeat Over Again
『Countdown To Ecstasy / エクスタシー』(1973年, 米35位)
シングル・ヒットこそ生まれませんでしたが、Donald Fagenが "Steely Danのアルバムの中で最も気に入っている" と言ったという作品です。「Bodhisattva / 菩薩」や「My Old School」はライヴでの定番曲です。
- ●収録曲
- Bodhisattva / 菩薩
- Razor Boy
- The Boston Rag
- Your Gold Teeth
- Show Biz Kids
- My Old School
- Pearl Of The Quarter
- King Of The World
『Pretzel Logic / さわやか革命』(1974年, 米8位)
「Rikki Don't Lose That Number / リキの電話番号」が全米4位のヒットを記録しました。Jeff Porcaro(ds), Dean Parks(g), Michael Omartian(k)等、外部のスタジオ・ミュージシャンを起用するようになったのはこのアルバムからです。本作を最後にJeff Baxter(g)とJim Hodder(ds)はグループを脱退し、以降、ライヴ活動を行わなくなります。
- ●収録曲
- Rikki Don't Lose That Number / リキの電話番号
- Night By Night / ナイト・バイ・ナイト (夜ごと歩きまわるのさ)
- Any Major Dude Will Tell You / 気どりや
- Barrytown / バリータウンから来た男
- East St. Louis Toodle-Oo
- Parker's Band
- Through With Buzz / いけ好かない奴
- Pretzel Logic
- With A Gun / 銃さえあればね
- Charlie Freak
- Monkey In Your Soul / 君のいたずら
『Katy Lied / うそつきケイティ』(1975年, 米13位)
本作から、スタジオ・ミュージシャンを多用する制作スタイルになります。特に、10曲中の9曲でドラムスを担当したJeff Porcaroのキレのあるプレイを随所で聴くことができます。「Doctor Wu」ではPhil Woodsが、Billy Joelの「素顔のままで」の名演に匹敵する素晴らしいサックス・ソロを披露。「Bad Sneakers」で聴けるWalter Beckerのギター・ソロも気持ちよく、この曲名を由来とする「Sneaker」というAORのバンドも生まれました。
- ●収録曲
- Black Friday
- Bad Sneakers
- Rose Darling / 可愛いローズ
- Daddy Don't Live In That New York City No More / 親父の嫌いなニューヨーク・シティ
- Doctor Wu
- Everyone's Gone To The Movies
- Your Gold Teeth II
- Chain Lightning
- Any World (That I'm Welcome To)
- Throw Back The Little Ones
AORサウンドの洗練を極めた3作品
AORサウンドの洗練を極めた名作として知られる『Aja / 彩(エイジャ)』『Gaucho』と、その助走となった『Royal Scam / 幻想の摩天楼』を紹介します。
『Royal Scam / 幻想の摩天楼』(1976年, 米15位)
"猛獣と化した摩天楼が不吉な空の下で牙を剥く" というジャケットに象徴されるように、前作までにあった穏やかさは無くなり、クールで緊張感のある曲が多くなります。前作のJeff Porcaroに代わり、本作ではBernard Purdieがほとんどの曲のドラムスを担当し、Chuck Rainey(b)とのコンビで重たくも躍動感のあるビートを生みだしています。また、Larry Carlton, Dean Parks, Elliott Randall等、ギタリストの顔ぶれが多彩で、曲によってソロイストを変えているのも本作の魅力です。
- ●収録曲
- Kid Charlemagne / 滅びゆく英雄
- The Caves Of Altamira / アルタミラの洞窟の警告
- Don't Take Me Alive / 最後の無法者
- Sign In Stranger / 狂った町
- The Fez / トルコ帽もないのに
- Green Earrings / 緑のイヤリング
- Haitian Divorce / ハイチ式離婚
- Everything You Did / 裏切りの売女
- The Royal Scam / 幻想の摩天楼
『Aja / 彩(エイジャ)』(1977年, 米3位)
全米アルバム・チャートの3位を記録した彼らの代表作です。一流のスタジオ・ミュージシャンを贅沢に起用し、二人が納得するまで何テイクも演奏させるという徹底ぶりが身を結んだ名演集になっており、「Peg」のJay Graydon(g), 「Aja」のSteve Gadd(ds), 「Home At Last」のBernard Purdie(ds)などの "語り継がれる名演" が生まれました。サウンドも洗練されており、グラミー賞の最優秀録音賞を受賞。また2003年には、本作がグラミー賞殿堂入りを果たします。シングル「Peg」は全米11位、「Deacon Blues」は19位のヒットを記録しました。
- ●収録曲
- Black Cow
- Aja / 彩(エイジャ)
- Deacon Blues
- Peg
- Home At Last / 安らぎの家
- I Got The News
- Josie
『Gaucho』(1980年, 米9位)
"スタジオの同じ部屋を1年以上も押さえた" というエピソードがあるくらい、前作『Aja / 彩(エイジャ)』以上にお金とこだわりが投じられたアルバムです。しかし、華美でリッチな音にはならず、「不要な音を入念に取り除き、残された必要な音を丁寧に磨き上げた」という印象の美しいサウンドです。音数の少ない曲が多いですが、スカスカな印象になるどころか、実に贅沢な聴き心地。「Hey Nineteen」は全米10位のシングル・ヒットとなり、アルバムも前作に匹敵するヒットを記録しました。創作意欲が尽きるほどにこだわり抜いたのか、Steely Danは翌年に活動を停止し、長い休止期間に入ります。
- ●収録曲
- Babylon Sisters
- Hey Nineteen
- Glamour Profession
- Gaucho
- Time Out Of Mind
- My Rival
- Third World Man
90年代以降の作品
1995年のライヴ・アルバム『Alive In America』、2000年のグラミー受賞作『Two Against Nature』、そしてラスト・アルバムとなった2003年の『Everything Must Go』を紹介します。
『Alive In America』(1995年, 米40位)
1993年にDonald Fagenのソロ・アルバム『KAMAKIRIAD』をWalter Beckerがプロデュースしたことをきっかけに、二人での活動を再開します。本作は、その年に開始した "Steely Dan feat. Walter Becker & Donald Fagen" 名義のライブ・ツアーの模様を収めたライブ盤です。
- ●収録曲
- Babylon Sisters
- Green Earrings
- Bodhisattva
- Reelin' In The Years
- Josie
- Book Of Liars
- Peg
- Third World Man
- Kid Charlemagne
- Sign In Stranger
- Aja
『Two Against Nature』(2000年, 米6位)
スタジオ・アルバムとしては、前作『Gaucho』から20年ぶりとなるアルバムです。前作同様に洗練されたサウンドで、グラミー賞の最優秀アルバム賞、最優秀録音賞、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞、最優秀ポップ・デュオ/グループ賞の4部門を受賞しました。翌2001年にはロックの殿堂入りを果たします。
- ●収録曲
- Gaslighting Abbie
- What A Shame About Me
- Two Against Nature
- Janie Runaway
- most Gothic
- Jack Of Speed
- Cousin Dupree
- Negative Girl
- West Of Hollywood
『Everything Must Go』(2003年, 米9位)
2017年にWalter Beckerが他界したことにより、本作がSteely Danのラスト・アルバムになりました。ライヴ形式で録音されており、演奏の一体感や臨場感は残しつつ、彼らの持ち味である磨かれたされたサウンドになっています。Walter Beckerが全曲でベースを弾いており、「Slang Of Ages」ではリード・ヴォーカルも担当しています。
- ●収録曲
- The Last Mall
- Things I Miss The Most
- Blues Beach
- Godwhacker
- Slang Of Ages
- Green Book
- Pixeleen
- Lunch With Gina
- Everything Must Go
次のページでは、Donald FagenとWalter Beckerのソロ・アルバムを紹介します。
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