Ned Doheny / Hard Candy (1976年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Ned Dohenyの1976年のアルバム『Hard Candy』の紹介です。
Ned Dohenyは70年代のウェストコースト音楽シーンで活動したシンガー・ソングライター。Jackson BrowneやJ.D. Southerと同じ時期にアサイラム・レコードからデビューし、1973年に爽やかなファースト・アルバムの『Ned Doheny First』を、76年にAOR屈指の人気作となるこの『Hard Candy』を発表している。
海辺でシャワーのしぶきを浴びるジャケットからは "真夏のぎらつく太陽" のようなサウンドを想像するが、聴こえてくるのは滑らかなソウル・ミュージックと洗練されたシティ・ポップがクロスオーバーした上品な音楽。アコースティックを基調とするサウンドには、「夏の終わり、陽の傾いた海岸で、穏やかな風に吹かれて涼む」といった雰囲気の心地よさがある。
全曲がNed Dohenyの作で、「A Love of Your Own」のみAverage White BandのHamish Stuartとの共作。プロデュースを担当したSteve Cropperは、ソウル・インスト・バンドのBooker T. & the M.G.'sのギタリストで、Otis Reddingの「The Dock of the Bay」の共作者でもある。
渋み切ったナンバーの「Get It Up for Love / 恋は幻」は多くのカヴァーが存在する名曲。David Cassidyの75年のアルバム『The Higher They Climb - The Harder They Fall』や、Nigel Olssonの『Nigel Olsson』(75年)、The Mobの『The Mob』(75年)、Maxine Nightingaleの『Night Life』(77年)、Táta Vegaの『Try My Love』(78年)などのアルバムで歌われている。
「If You Should Fall / 恋におちたら」は爽やかなシティ・ソウル。The EaglesのDon HenleyとGlenn Freyが参加し、Dohenyと一緒に柔らかいバック・コーラスを添えている。軽やかにキーボードを弾いているのはDavid Foster。Ned Dohenyのギターもいい音を出している。続く「Each Time You Pray / 愛を求めて」も、滑らかなリズムを心地よく刻む極上のシティ・ソウルだ。
「A Love of Your Own」はたそがれた味わいの渋いナンバーで、バック・ヴォーカルには共作者のHamish Stuartが参加した。この曲は、Average White Bandの同じ年のアルバム『Soul Searching』に収録されたほか、Melissa Manchesterの『雨と唄えば』(77年)や、Leslie Smithの『Les Is More』(92年)などでカヴァーされている。
Ned Dohenyの歌声は甘さと憂いの両方を備えたハイトーン。アルバムのラストを飾る「Valentine」はしっとりとしたジャジーなナンバーで、Dohenyの歌声の魅力をたっぷり堪能できる。David Fosterの美しいピアノとバックの上品な演奏もロマンティックだ。
フロント・カヴァーを撮影したのはMoshe Brakha (モシャ・ブラカ)。Boz Scaggsの『Silk Degrees』の艶っぽいジャケットを撮った写真家だ。バック・カヴァーでは水を豪快に浴びており、2014年に発売されたベスト盤『Separate Oceans』のフロント・カヴァーには、こちらが採用されている。
- ●収録曲
- Get It Up for Love / 恋は幻 - 4:45
- If You Should Fall / 恋におちたら - 3:36
- Each Time You Pray / 愛を求めて - 3:40
- When Love Hangs in the Balance / 傷心の恋 - 5:12
- A Love Of Your Own - 3:46
- I've Got Your Number - 3:15
- On The Swingshift - 3:03
- Sing To Me / 歌っておくれ - 3:37
- Valentine (I Was Wrong About You) - 5:06
◆プロデュース: Steve Cropper(g)
◆参加ミュージシャン: Ned Doheny(vo, g), David Foster/Craig Dorege(k), Brian Garofalo(b), Gary Mallaber(ds), Tower Of Power(horn), Glenn Frey/Don Henley/J.D. Souther/Linda Ronstadt/Hamish Stuart/Rosemary Butler(bv), etc
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません