John Valenti / Anything You Want (1976年) – アルバム・レビュー

2019年11月12日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、John Valentiの1976年のアルバム『Anything You Want』の紹介です。

John Valenti / Anything You Want (1976年) フロント・カヴァー

John Valentiはシカゴ出身のミュージシャン。60年代の終わりから音楽活動をしており、70年代の前半は地元シカゴのPuzzleというポップ・ソウル・バンドに在籍して、リード・シンガーとドラマー、ソングライターを担当していた。PuzzleはChicagoのようなブラス・セクションを擁する6人組で、白人のグループにしては珍しくモータウン・レコードと契約し、2枚のアルバムを1973年と74年に残している。

本作『Anything You Want』は、Puzzleの解散後にソロとなったJohn Valentiのファースト・アルバム。アルバムを聴いてまず驚かされるのは、John Valentiの声と歌い方がStevie Wonderに瓜二つであること。似ているというレベルを超えて、「Anything You Want」「Was It Something I Said」「Why Don't We Fall In Love」などはStevieそのもの。モータウン・レコードの大先輩であるStevieへの憧れとリスペクトがストレートに伝わってきて感動的だ。

明るく爽やかで、ときに胸がキュンとするメロディやファンキーなリズムもStevie Wonderの作る曲と同じ。「I Wrote This Song For You」の間奏ではハーモニカも登場し、Stevieのような味わいがある。

収録曲のうちJohn Valentiのオリジナルは7曲(1-4, 6, 9, 11)で、そのうち5曲をPuzzle時代の仲間のJoseph Spinazolaと共作。残りはカヴァー曲で、Frank Sinatraなどが歌ったスタンダード・ナンバーの「Time After Time」や、Jackie Wilsonの67年のヒット曲「Higher And Higher」(米6位, Rita Coolidgeの77年バージョンもあり)などを歌っている。

John Valentiは西海岸に活動拠点を移してこのアルバムを制作しており、バックを固める西海岸のミュージシャンの演奏も楽しげで、とてもグルーヴィー。「Morning Song」というスウィートな曲があるが、こちらはハワイ出身のMackey Fearyも96年リリースのアルバム『Burning Bridges』でカヴァーした。

ポジティヴで幸せなムードに満ちたアルバムだが、ジャケットの瞳からは涙が流れる。バック・カヴァーには、"p.s. i still love you chicago" のメッセージがあるので、涙のわけは生まれ故郷のシカゴに対する郷愁なのかも知れない。

●収録曲
  1. Anything You Want - 3:16
  2. Was It Something I Said - 3:23
  3. I Wrote This Song For You - 3:16
  4. Morning Song - 3:10
  5. Time After Time - 3:52
  6. Why Don't We Fall In Love - 3:34
  7. Higher And Higher - 3:08
  8. Save Me - 3:05
  9. The Day After You - 3:30
  10. I Love Her Too - 3:30
  11. That's The Way Life Goes - 3:24

◆プロデュース: Bob Cullen

◆参加ミュージシャン: Jay Graydon/Dean Parks/Tom Rotella(g), Sonny Burke/Mike Melvoin(k), Jim Hughart(b), Jim Gordon/Ed Greene(ds), etc

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