The Manhattan Transfer / Mecca for Moderns (1981年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、The Manhattan Transferの1981年のアルバム『Mecca for Moderns / モダン・パラダイス』の紹介です。

The Manhattan Transfer / Mecca for Moderns (1981年) フロント・カヴァー

The Manhattan Transferは、男女4人のジャズ・コーラス・グループ。1969年にグループを結成し、メンバー交代はあるものの現在も男女2人ずつの構成で活動を続けている。この『Mecca for Moderns』は6作目のスタジオ・アルバム。この時のメンバーは、男性がAlan PaulとTim Hauser、女性がCheryl BentyneとJanis Siegelだ。

79年の前作『Extensions』に続いて、プロデュースをJay Graydonが担当した。両アルバムともシングル・ヒットに恵まれ、アルバム・チャートでも上位をマークしている。

収録曲は9曲。AOR的には、「On The Boulevard」(Marc Jordan作詞、Jay Graydon - Richard Page作曲)、「Spies In The Night」(Alan Paul作詞、Alan - David Foster - Graydon作曲)、「Smile Again」(Alan作詞、Bill Champlin - Foster - Graydon作曲)、「Kafka」(Bernard Kafka作詞、Graydon作曲) に目が行く。

作詞・作曲のクレジットがとても豪華な「On The Boulevard」は、期待を裏切らないクール & エレガントなナンバー。Steve Gaddの細やかなドラムスにGraydonのギター・ソロがセクシーに絡むあたりは、AOR好きのツボ。

「Spies In The Night」は、「ジェームス・ボンドのテーマ」を取り入れた異色の曲。前作にもテレビ番組『The Twilight Zone』のテーマ曲をアレンジした「Twilight Zone / Twilight Tone」という曲があったが、それと同じ路線。

甘美なバラード「Smile Again」を作曲したChamplin - Foster - Graydonは、EW&Fの79年のヒット・バラード「After the Love Has Gone」を書いた黄金トリオ。ロマンティックな曲調やアレンジは、まさに「After the Love Has Gone」を思わせる。

「Kafka」は、複雑で高度なヴォーカリーズにSteve Gaddの手数の多いドラムスがスリリングに絡む圧巻のナンバー。後に続くしっとりしたアカペラ・ナンバー「A Nightingale Sang In Berkeley Square」との動と静のコントラストが効いている。

本作からはドゥーワップ調の「The Boy from New York City」がBillboard Hot 100チャートの7位となるヒットを記録し、彼ら唯一のTop 10ヒットとなっている。また、アルバムもBillboard 200チャートの22位を記録し、彼らのアルバムの中で最高位となった。

Jay Graydonのプロデュースする諸作のサウンドは高度に洗練されているので、その美しさにアーティストの個性が見劣りするように感じることもあるが、このアルバムではヴォーカルの技量と個性が際立っていて、全く見劣りしない。プロデューサーとアーティスト双方の力量が見事な相乗効果を生んでいる。

●収録曲
  1. On The Boulevard - 4:09
  2. Boy From New York City - 3:40
  3. (Wanted) Dead Or Alive / おたずね者 - 3:26
  4. Spies In The Night - 3:59
  5. Smile Again - 4:34
  6. Until I Met You (Corner Pocket) - 5:18
  7. (The Word Of) Confirmation - 3:15
  8. Kafka - 4:08
  9. A Nightingale Sang In Berkeley Square - 3:48

◆プロデュース: Jay Graydon(ar, g, k)

◆参加ミュージシャン: Steve Lukather/Dean Parks(g), David Foster/Victor Feldman/Steve George/Greg Mathieson(k), Abraham Laboriel(b), Steve Gadd/Mike Baird(ds), Andy Narell(per), Richie Cole/Tom Scott(sax), Jon Hendricks(scat), etc

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