Rupert Holmes / Partners In Crime (1979年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Rupert Holmesの1979年のアルバム『Partners In Crime』の紹介です。
Rupert Holmesはイングランド生まれ、ニューヨーク育ちのシンガー・ソングライター。ストーリー仕立てのドラマティックな作詞に定評があり、Barbra Streisandにその才能を乞われ、Barbraの75年のアルバム『Lazy Afternoon / まどろみの昼下がり』のプロデュース、作詞・作曲、アレンジを任されたことで知られるようになった。そのアルバムには、Rupert Holmesのデビュー作『Widescreen』(74年)からタイトル曲と「Letters That Cross in the Mail」がカヴァーされている。
『Partners In Crime』は5枚目のソロ・アルバムで、Rupert Holmesのキャリア最大のヒット作。本作からは「Escape」がBillboard Hot 100チャートの1位を獲得したほか、「Him」が6位、「Answering Machine」が32位を記録。アルバムはBillboard 200チャートの33位をマークした。
"The Piña Colada Song" という副題のついた「Escape」の歌詞は、映画のようなストーリー。
妻との生活に飽きていた男がある日、新聞の投稿を見つける。"もしあなたがピナ・コラーダが好きで、雨に濡れても平気で、ヨガに夢中じゃなくて、そんなにおバカさんでもなくて、真夜中の砂丘でメイク・ラヴしたいと思っている、そんな人なら、私こそあなたの恋人候補、お手紙下さい、一緒にエスケイプしましょう" というもの。男は手紙を書き、期待に胸を膨らませてその女性と会ってみたら、なんと自分の妻だった。
男は言う。"知らなかったよ、君がピナ・コラーダや、雨に濡れるのが好きだったなんて、海での気分や、シャンペンの味が好きだったなんて、真夜中の砂丘でメイク・ラヴしたいだなんて、君こそ僕の捜し求めていた女さ、おいで、一緒にエスケイプしよう" と。
Rupert Holmesの作る歌詞はどれもこんな感じにユーモアがあり、ロマンティック。「Him」は、彼女の家で自分の吸わない銘柄のタバコの箱を見つけた男のざわつく胸中を歌った苦い歌。「Answering Machine」は、結婚への思いを留守電で伝え合う男女の歌。彼女の留守電に残そうとしたプロポーズの言葉が肝心なところで切れてしまい、それを聞いた彼女からの返事も肝心なところで切れていて、もどかしい。
歌詞を読んで楽しめるだけでなく、メロディもポップで親しみやすいし、アレンジも洒落ている。濃厚なロマンティシズムの香る前作『Pursuit of Happiness / 浪漫』(78年)もおすすめだ。
ところで、Billboard Hot 100チャートにおける70年代最後のNo.1ソングは「Escape」らしい。この曲は、80年の1月にもチャートの1位に返り咲いたので、めでたく70年代と80年代をまたぐNo.1ソングになったそうだ。
- ●収録曲
- Escape (The Piña Colada Song) - 4:34
- Partners in Crime - 5:14
- Nearsighted - 2:49
- Lunch Hour - 4:38
- Drop It - 4:10
- Him - 4:04
- Answering Machine - 3:33
- The People That You Never Get to Love - 3:46
- Get Outta Yourself - 4:43
- In You I Trust - 4:49
◆プロデュース: Rupert Holmes(vo, k, sy, sax), Jim Boyer
◆参加ミュージシャン: Dean Bailin(g), Frank Gravis(b), Leo Adamian/Steve Jordan(ds), Peter Gordon(horn), Wayne Andre/David Taylor(tb), Victoria(per), Bob Gurland(voiced trumpet), Chrissy Faith(bv), Gene Orloff Section(strings ar)
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