Peter Allen / Bi-Coastal (1980年) – アルバム・レビュー

2023年5月4日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Peter Allenの1980年のアルバム『Bi-Coastal』の紹介です。

Peter Allen / Bi-Coastal (1980年) フロント・カヴァー

Peter Allenはオーストラリア生まれのシンガー・ソングライター。Olivia Newton-Johnの1974年のグラミー受賞曲「I Honestly Love You / 愛の告白」や、Melissa Manchesterの78年のヒット曲「あなたしか見えない」、Christopher Crossが歌った81年の映画『Author』の主題歌「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」などの共作者としても知られている。

この『Bi-Coastal』は、Peter Allenの6枚目のアルバム。David Fosterがプロデュースを手がけ、Allenの書くロマンティックなメロディを華やかにコーディネートした名作だ。Fosterがプロデュースした当時の作品の中では1番に挙げて良いくらい、曲、演奏、アレンジのクオリティが高い。

全曲がPeter Allenのオリジナルで、「Simon」以外は共作曲。Tom Keane & David Foster(1, 3)、Carole Bayer Sager & D.Foster(2, 9)、David Lasley(4, 7)、D.Foster(5, 10)、Dean Pitchford(6)と、選りすぐりの実力派が共作の相手になっている。

「One Step Over The Borderline」や「Fly Away」、「Pass This Time」は、Fosterのアレンジの手腕が光る都会的でエレガントなナンバー。メロウな「Fly Away」は、竹内まりやの同年のアルバム『Love Songs』に書き下ろした曲に、Fosterが手を加えたものらしい。

TOTOのJeff Porcaro(ds), Steve Lukather(g), Mike Porcaro(b)が熱く演奏する「Hit In The Heart」のようなロック・チューンもあるが、Allenの作る曲の魅力は、優しさ溢れるバラードで発揮される。本作では、David Lasleyと共作した2曲と「Simon」、ラストの「When This Love Affair Is Over」がバラード曲。

こうした曲は他のシンガーにも好まれ、「I Don't Go Shopping」はPatti Labelleのアルバム『Released』(80年)で、「Somebody's Angel」はDionne Warwickのアルバム『No Night So Long』(80年)で歌われた。

「Simon」も素晴らしい曲。無二の親友だったサイモンから、今日、電話があった。「初めて愛した女の子と、結婚するために駆け落ちをした」、と。自分にやさしくしてくれたサイモンを思い出し、"Simon, Simon, ..." と、万感胸に迫るように歌う。この曲は68年に書かれ、当時の夫人だったLiza Minnelliがアルバム『Come Saturday Morning』(69年)で歌った。AllenはLiza Minnelliとの結婚生活(67年~74年)の後に、自分がゲイであることをカミングアウトしている。92年、エイズによる合併症のため夭逝。

Peter Allenの作る曲はロマンティックなだけでなく、寄り添うような優しさや人間味があり、心を動かされる。また、歌声もAllenの大きな魅力。本作では特に「I Don't Go Shopping」の歌いっぷりが見事で、Lon Priceによるサックス・ソロの素晴らしさと相まって、爽やかな感動を残す。

●収録曲
  1. One Step Over The Borderline - 3:54
  2. Fly Away - 4:05
  3. Bi-Coastal - 4:22
  4. I Don't Go Shopping - 3:33
  5. Hit In The Heart - 3:24
  6. I Could Really Show You Around - 4:13
  7. Somebody's Angel - 4:17
  8. Simon - 3:25
  9. Pass This Time - 4:00
  10. When This Love Affair Is Over - 6:05

◆プロデュース: David Foster(k)

◆参加ミュージシャン: Peter Allen(vo, k), Steve Lukather/Jay Graydon/David Williams/Richie Zito(g), Tom Keane(k), Larry Williams(k, sax), Mike Porcaro(b), Jeff Porcaro/Carlos Vega/Ed Greene/Ralph Humphrey(ds), Paulinho Da Costa(per), Jerry Hey(tp), Richard Page/Steve George(bv), etc

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