Paul Simon / Still Crazy After All These Years (時の流れに) (1975年) – アルバム・レビュー

2023年5月5日

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Paul Simonの1975年のアルバム『Still Crazy After All These Years / 時の流れに』の紹介です。

Paul Simon / Still Crazy After All These Years (時の流れに) (1975年) フロント・カヴァー

Paul Simonはアメリカを代表するシンガー・ソングライター。Art Garfunkelとフォーク・ロック・デュオのSimon & Garfunkelを組んで60年代後半のヒット・チャートを席巻し、ソロになってからは、ラテン、レゲエ、アフリカンなどの多様な音楽を取り入れたアルバム制作で高い評価を得ている。

『時の流れに』はPaul Simonの4枚目のソロ・アルバム。最初のソロ・アルバムはSimon & Garfunkelの活動中(65年)に制作されているので、S&G解散後のアルバムとしては3作目になる。

本作はPaul Simonの代表作といってよいだろう。アルバムはBillboard 200チャートの1位を獲得し、シングルでは、「恋人と別れる50の方法」がBillboard Hot 100チャートの1位になったほか、「My Little Town」が9位、「哀しみにさようなら」が23位、「時の流れに」が40位をマークした。76年のグラミー賞では "Album of the Year" と "Best Male Pop Vocal Performance" の2冠を受賞している。

タイトル曲は、昔の恋人に再開した心境を "Still Crazy" という素敵なフレーズで表した名曲。Barry Beckettの美しいエレピにリードされて、穏やかなメロディが邦題の "時の流れ" のように淡々と流れていく。控えめな印象の曲だが、とても豊かな余韻を残す。

爽やかな「My Little Town」はArt Garfunkelと久しぶりにデュエットした曲で、ヴォーカルのクレジットは "Simon and Garfunkel" になっている。Art Garfunkelも同じ年のソロ・アルバム『Breakaway / 愛への旅立ち』でこの曲を歌った。

続く「I'd Do It For Your Love / きみの愛のために」は穏やかなバラード。叙情的なメロディとKen Asherの優しいエレピが感動を誘う。

一転して、「50 Ways To Leave Your Lover / 恋人と別れる50の方法」はとてもシリアス。正確でクールなドラムスはSteve Gadd、粋な女性バック・コーラスはPhoebe Snow, Valerie Simpson, Patti Austinだ。

"すいすいと人生をわたっていく者がいる一方で、全くそうでない者もいる" と歌う「Some Folks' Lives Roll Easy / ある人の人生」。メロディは切ないし歌詞も苦いのに、ストリングスと演奏がとても優しくて、泣けてくる。

ラストでは、Paul Simonが「Silent Eyes / もの言わぬ目」をしっとりと歌い、アルバムの幕を閉じる。この曲は、Paulが音楽を担当した75年の映画『Shampoo』で使われた。

深い味わいのある作詞と熟したメロディ。幅広く活動するPaul Simonも、その本質はシンガー・ソングライターだ。淡い色彩の本作には、優れたシンガー・ソングライターとしてのPaul Simonの魅力が溢れている。

●収録曲
  1. Still Crazy After All These Years / 時の流れに - 3:26
  2. My Little Town - 3:51
  3. I'd Do It For Your Love / きみの愛のために - 3:35
  4. 50 Ways To Leave Your Lover / 恋人と別れる50の方法 - 3:37
  5. Night Game - 2:58
  6. Gone At Last / 哀しみにさようなら - 3:40
  7. Some Folks' Lives Roll Easy / ある人の人生 - 3:14
  8. Have A Good Time / 楽しくやろう - 3:26
  9. You're Kind / 優しいあなた - 3:20
  10. Silent Eyes / もの言わぬ目 - 4:12

◆プロデュース: Paul Simon(vo, ag, ar)

◆参加ミュージシャン: Phil Ramone/Art Garfunkel(vo), Bob James(k, ar), Joe Beck/Pete Carr/Hugh McCracken/John Tropea(g), Richard Tee/Barry Beckett(k), Tony Levin/Gordon Edwards/David Hood(b), Steve Gadd/Grady Tate/Roger Hawkins(ds), Ralph MacDonald(per), Sivuca(accordion, vo), Michael Brecker/David Sanborn(sax), Toots Thielmans(harmonica), Valerie Simpson/Patti Austin/Phoebe Snow(bv), etc

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