Nick DeCaro / Italian Graffiti (1974年) – アルバム・レビュー
おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Nick DeCaroの1974年のアルバム『Italian Graffiti』の紹介です。

AORの誕生に大きく寄与した記念碑的作品と言われる名盤だ。私が所有しているCDの中田利樹氏によるライナー・ノーツには、本作についてNick DeCaro本人が次のようなコメントを寄せている。
当時('70年代前半)流行っていたカーペンターズやビーチ・ボーイズのようなポップ・ミュージックに、もっと大人っぽいサウンド、つまりジャズやソウル・ミュージックのエッセンスを加えてみたら……というコンセプトで出来上がったのが『イタリアン・グラフィティ』なんだ
CDのライナー・ノーツより引用
AORという音楽の成り立ちを上手く表現していると思う。
本作はNick DeCaroのファースト・アルバム。Tommy LiPumaと共同でプロデュースし、Al Schmittがエンジニアを担当した。新旧織り交ぜた選曲であるが、それらを違和感なく同居させるアレンジのセンスが光る。
各曲の作者、収録アルバム、アーティスト、リリース年は次のとおり。幅広いというか、懐の深い選曲だ。
- 「Under The Jamaican Moon / ジャマイカの月の下で」(Stephen Bishop, Leah Kunkel):『Leah Kunkel / リア』(Leah Kunkel, 79年), 『Romance in Rio』(Stephen Bishop, 2007年)
- 「Happier Than The Morning Sun / 輝く太陽」(Stevie Wonder):『Music Of My Mind / 心の詩』(72年)
- 「Tea For Two / 二人でお茶を」(Irving Caesar, Vincent Youmans):スタンダード・ナンバー(25年)
- 「All I Want」(Joni Mitchell):『Blue』(71年)
- 「Wailing Wall」(Todd Rundgren):『Runt. The Ballad of Todd Rundgren』(71年)
- 「Angie Girl」(Stevie Wonder他):『My Cherie Amour』(Stevie Wonder, 69年)
- 「Getting Mighty Crowded」(Van McCoy):Betty Everettのシングル曲(64年)
- 「While The City Sleeps / 町はねむっているのに」(Randy Newman):『Wish Someone Would Care』(Irma Thomas, 64年)
- 「Canned Music」(Dan Hicks):『Original Recordings』(Dan Hicks & His Hot Licks, 69年)
- 「Tapestry」(Gunston, Dove):書き下ろし
「All I Want」では、アコースティック・ギターの弾き語りで歌われるJoni Mitchellの原曲を、シティ感覚の洒落た楽曲に変化させており、見事なマジック。
David T.Walker(g)やWilton Felder(b)、Harvey Mason(ds)ら、ジャズ/フュージョンの名手による演奏も洗練されており、とてもクール。全曲を歌うNick DeCaroの歌声も、ライト&メロウそのものだ。
Nick DeCaroは本作のあと本業のアレンジャーに専念し、AORを始めとする多くのアルバムを裏方で支えた。90年代に入り、『Love Storm』(90年)、『Private Ocean』(91年)と2作続けてアルバムをリリースするも、92年に他界。
再び、本作に寄せられたNick DeCaro本人の言葉を。
"イタリアン・グラフィティ"は僕のレコーディング・アーティストとしてのキャリアを確立させたアルバムなんだ。だから、今でもとても気に入ってるんだよ。貴方にとっても大好きな1枚になるとうれしいね。
CDのブックレット見返しより引用
- ●収録曲
- Under The Jamaican Moon / ジャマイカの月の下で - 4:41
- Happier Than The Morning Sun / 輝く太陽 - 4:17
- Tea For Two / 二人でお茶を - 3:54
- All I Want - 3:21
- Wailing Wall - 4:34
- Angie Girl - 3:48
- Getting Mighty Crowded - 2:24
- While The City Sleeps / 町はねむっているのに - 3:31
- Canned Music - 4:36
- Tapestry - 3:58
◆プロデュース: Tommy LiPuma, Nick DeCaro(vo, k, ar)
◆参加ミュージシャン: Arthur Adams/David T. Walker(g), Wilton Felder/Max Bennett(b), Paul Humphrey/Harvey Mason(ds), Plas Johnson(sax), Bud Shank(flute), etc
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