Nick DeCaro / Italian Graffiti (1974年) – アルバム・レビュー

おすすめのアルバムをショート・レビューで紹介する「アルバム・レビュー」。今日は、Nick DeCaroの1974年のアルバム『Italian Graffiti』の紹介です。

Nick DeCaro / Italian Graffiti (1974年) フロント・カヴァー

AORの誕生に大きく寄与した記念碑的作品と言われる名盤だ。私が所有しているCDの中田利樹氏によるライナー・ノーツには、本作についてNick DeCaro本人が次のようなコメントを寄せている。

当時('70年代前半)流行っていたカーペンターズやビーチ・ボーイズのようなポップ・ミュージックに、もっと大人っぽいサウンド、つまりジャズやソウル・ミュージックのエッセンスを加えてみたら……というコンセプトで出来上がったのが『イタリアン・グラフィティ』なんだ

CDのライナー・ノーツより引用

AORという音楽の成り立ちを上手く表現していると思う。

本作はNick DeCaroのファースト・アルバム。Tommy LiPumaと共同でプロデュースし、Al Schmittがエンジニアを担当した。新旧織り交ぜた選曲であるが、それらを違和感なく同居させるアレンジのセンスが光る。

各曲の作者、収録アルバム、アーティスト、リリース年は次のとおり。幅広いというか、懐の深い選曲だ。



「All I Want」では、アコースティック・ギターの弾き語りで歌われるJoni Mitchellの原曲を、シティ感覚の洒落た楽曲に変化させており、見事なマジック。

David T.Walker(g)やWilton Felder(b)、Harvey Mason(ds)ら、ジャズ/フュージョンの名手による演奏も洗練されており、とてもクール。全曲を歌うNick DeCaroの歌声も、ライト&メロウそのものだ。

Nick DeCaroは本作のあと本業のアレンジャーに専念し、AORを始めとする多くのアルバムを裏方で支えた。90年代に入り、『Love Storm』(90年)、『Private Ocean』(91年)と2作続けてアルバムをリリースするも、92年に他界。

再び、本作に寄せられたNick DeCaro本人の言葉を。

"イタリアン・グラフィティ"は僕のレコーディング・アーティストとしてのキャリアを確立させたアルバムなんだ。だから、今でもとても気に入ってるんだよ。貴方にとっても大好きな1枚になるとうれしいね。

CDのブックレット見返しより引用
●収録曲
  1. Under The Jamaican Moon / ジャマイカの月の下で - 4:41
  2. Happier Than The Morning Sun / 輝く太陽 - 4:17
  3. Tea For Two / 二人でお茶を - 3:54
  4. All I Want - 3:21
  5. Wailing Wall - 4:34
  6. Angie Girl - 3:48
  7. Getting Mighty Crowded - 2:24
  8. While The City Sleeps / 町はねむっているのに - 3:31
  9. Canned Music - 4:36
  10. Tapestry - 3:58

◆プロデュース: Tommy LiPuma, Nick DeCaro(vo, k, ar)

◆参加ミュージシャン: Arthur Adams/David T. Walker(g), Wilton Felder/Max Bennett(b), Paul Humphrey/Harvey Mason(ds), Plas Johnson(sax), Bud Shank(flute), etc

スポンサーリンク